「男性にお願いだけど頑張って女の子誘って遊ぼ?」と発言した甲府市の幹部が「不適切発言」として叩かれた。ニュースはすぐリンク切れするだろうから下にコピーを載せておく(魚拓は取得禁止にだった。不適切なら削除する)。
個人の領域に関することを公の立場にある人が言及したというのがマズい、という趣旨は確かにそうだが、下記のようなデータを見て、そもそもこれは決して「個人」に帰着すべき問題ではないという認識もできれば増田諸氏と共有したいと思う。下記にあげるのは、国立社会保障・人口問題研究所(http://www.ipss.go.jp/)掲載の資料から作成した、「生涯未婚率」の推移の表である。
年 | 男性 | 女性 |
1960 | 1.26 | 1.88 |
1970 | 1.70 | 3.34 |
1980 | 2.60 | 4.45 |
1990 | 5.57 | 4.33 |
2000 | 12.57 | 5.82 |
2010 | 20.14 | 10.61 |
今日、ちょうどKKO議論の行く末も地獄、という論考もブクマに上がっていた(https://b.hatena.ne.jp/entry/s/gendai.ismedia.jp/articles/-/81804)けれど、それらの問題は全て上の表に集約されているのではないか。つまり*失われた20年で最も失われたのは男性の結婚機会であったという単純な事実だ。生涯結婚できない男性の数は50年で実に20倍に増えた。これは、2010年の若年男性が、50年前の若年男性に比べて20倍も努力していないことを意味するのだろうか? そんなわけがない。
やれ「草食化」だの「非婚化」だの、いい加減、若者自身に責任があるような議論を止めて、国はまともにこの数字と向き合うべきだ。「(さまざまな事情で未婚に追い込まれている)若年者に手厚い政治」をしてこなかったことが、ヒステリックにも見える今日の社会問題の根源となっている。仮に1990年を参考に、経済的な問題がなければ未婚を選ぶ率は人口の5%程度、と仮定するなら、2010年時点で実に男性人口の15%、女性人口の5%、つまり均して人口の10%が「金がないから非婚(KNH)」民だということになる。はっきり言って立憲民主党の支持者より多い。現在、陰謀論、狂ったミソジニーやミサンドリー、過激な排外主義的主張、根拠のない伝統主義、ネットイナゴ…………などに食い荒らされているこのKNH民を、正しく政治的に救いとる方法が求められているのではないか。
山梨県甲府市で行われた中小企業の合同入社式の中で、甲府市の産業部長が「なるべく異性と遊んでほしい。そうすれば少子化は少しでも解消する」などと発言しました。
合同入社式に来賓として出席した甲府市産業部の志村一彦部長は、仕事だけでなくプライベートも充実させてほしいという趣旨のあいさつの中で「なるべく遊んでいただきたい。遊ぶのも男性同士、女性同士じゃなくて、楽なんですけどね、気持ちとしてはなるべく異性と遊んでいただければと思います。そうすることで少子化が少しでも解消されると思いますので」と発言しました。さらに「男性のほうにはお願いなんですけど、ジェンダーフリーとか、男女共同参画とか言われていますけど、遊びに行くときには男性のほうから誘っていただければと思いますので」と続けました。
個人の自由である交友関係や出産、それにジェンダーへの理解を欠いた発言ともとれます。
志村部長は式の後、UTYの取材に対し「結婚を意識してほしいという趣旨だったが、不適切だった。
不快に思われた方にはお詫びし、発言については撤回したい」としています。
この発言について山梨英和大学の近藤弘教授は「交友関係や出産などは、個人の領域に関するもので、公の場で言及することは適切とは言えない。
固定的な男女観にとらわれず、多様性に配慮して発言することが重要」と話していて、男女共同参画やジェンダーについて正しく理解してほしいとしています。
[UTYテレビ山梨]https://news.yahoo.co.jp/articles/9138c85984db13fe89923800938e6e4417b61c3f より引用
*……女性の生涯未婚率が6倍以上上昇していることも、決してなおざりにはできない問題ではある。だが、50年前の数字は女性の社会進出がそれほど進んでおらず、今ほど選択の自由がなかった時代のものである(つまり結婚「したくない」のに「させられて」いた女性も多い)ということも踏まえれば、男性とは事情が異なるだろう。思うに、男女ともそこのバランスがとれていたのが「生涯未婚率5%前後」の1990年頃であって、まさにバブル崩壊によってそれがガタガタになって回復できない状況に突入していったのではないだろうか。