推しが死んだ。
それも本当に死んだわけではない。命が尽きたわけではなく人格の話だ。
そのジャンルは未だに更新のある生きたジャンルで、リリースからしばらく経つが人気も高い。
私がそのジャンルに落ちたのは1年ほど前のことでまだまだ新参者の類だ。
でも落ちてからは早かった。
推しに出会い、自分でも驚くほどそのジャンルにのめり込んで何度も同じストーリーを繰り返し読んでは公式最高!推し最高!と萌え狂っていた。
わたしは二次創作も嗜むオタクだったので自分でも推しを書き他人が書いた推しの話も支部の古いものから順にほぼ全てに目を通した。
先に書いた通り人気のあるジャンルだったため公式・二次創作ともに頻繁に供給があって本当に毎日が楽しくて仕方なかった。
推しの変化だ。
二次元のキャラクターは目まぐるしい速度で成長していく。アクション・SF・学園モノ…カテゴリーは様々だが、連載が長引くにつれキャラクターは必ず内心面や身体的に成長していく。
良い成長だけではなく時には悪い方向に向かってしまうこともあるが、不変ほどつまらないものは無いのでそれは話の展開に必要なものだ。そうした成長を見守ることが楽しく胸を熱くさせるからオタクはついつい同じジャンルに長居してしまうのだ。
そしてその日は訪れた。
更新されたストーリー内で、推しが絶対に言うはずのない台詞を口に出したのだ。
絶望だった。
ストーリーが突然グチャグチャになって、推しが支離滅裂なことを言い出したわけではない。あくまでも自然に徐々に推しの中身が異質なものになっていって、私が変化を強く感じたのがそのストーリーのその台詞だったというだけだ。
なんで?どうして?何故そんなことを言うの?
全く理解が出来なかった。変わってしまったと感じた部分は、私が推しに落ちた理由でありその推しの"核"だったのだ。
私はうまく回らない頭でTwitterを開いた。同じように戸惑っている人を探そうとしたのだ。
でも目に入ってきたタイムラインには、
「このページの推しの顔可愛くなかった?」
「今回のストーリーすごく泣けた…。」
といったいつもと何ら変わらない公式への称賛の声ばかりが広がっていた。
どうして誰も推しの変化に気付かないの?自分の好きなキャラクターなのに分からないの?
私が推しの"核"だと思っていた性格は、公式にとっても他のオタクにとっても重要なものじゃなかったの?
私が推しの解釈を拗らせて自分の中に空想上の性格の推しを作り出してしまったの?
推しは絶対にそんな考え方はしないしそんなことは言わない。いつそんな変革があったんだ。
ストーリー初期の推しであれば最新話の推しが言った言葉を絶対に否定すると思う。最新話の推しの性格が初期の推しに反映された場合にこの物語全体が破綻するくらいにはこの固定観念は変わってはいけないものだったはずなのに。作品のテーマだったはずなのに。
そんなことを一人でグルグルと考えて苦しくなって、わけも分からずずっと泣いていた。
例えば、
才能があって乱暴で自分勝手で、だけどたまにぶっきらぼうな優しさを見せるキャラがいるとする。(※これは上で語った推しのことではない)
そうした時に、このキャラを好きになる大抵の人が"ぶっきらぼうな優しさ"に惹かれるとする。ならばこの場合の私は"才能があることを自負している強さ"に惹かれるのだ。だから二次創作で原作の描写以上に終始優しい姿を見せるこのキャラを見ると「解釈違いです!」とそっとページを閉じる。でもどちらの性質もそのキャラが有しているものであってどこを好きになっても間違いではないはずなのだ。
感覚というかそのキャラの重視するポイントみたいなものが他人と違う。
つまり何って私とTLの感想が一致しないのはわりと頻繁にあるということ。
話を戻すと、
そんなことある?
否、そんなことは絶対にあってはいけないし、その場合は解釈違いを起こした私がおかしいのだ!いつだって公式が正しい。だって推しの在り方の正解を知っているのは生みの親である公式だけなのだ。
私の好きな二次創作も公式の原作あってこそのものだから、私はストーリーが更新されるたびに各キャラクターの変化を自分の解釈に反映させてきたし、それはきっとどのオタクだってそうだと思う。
供給をもらうたびに考察して、うまく飲み込めない時には他人の考察を見たりして、自分の中に落とし込んで、その都度自分の中の「好き」をアップデートさせていると思う。
でも私は今回それが出来なかった。
公式が間違っている!なんて独りよがりの最低なことを思ってしまうくらいには納得がいかなかった。
毎日楽しく漁っていたTwitterも支部も、二次創作すべてが見れなくなった。最新話に関係のない時間軸の推しを描いたものでさえ、「でも結局この推しは最新話のような思考に陥るんだ」という負の感情が邪魔して見れなくなった。
疲れているからマイナスな発想にしかならないんだ、時間を置いてもう一回最初から読み返そう。
そう思ってインプットもアウトプットも止めて、身体を動かして美味しいものを沢山食べてどこか退屈なだけど気楽な日々を過ごした。(その間も推しが恋しくなったが私生活に支障があっては困るのでなんとかして推しを脳裏から抹消した。)
そうして約一ヶ月後、もう一度推しと向き合った。が、ダメだった。
離れている間の他人の感想も検索して私と似た人も見つけた。推しと作品の傾向の変化について考察をまとめている人もいた。でもその考察がどんなに納得できる内容でも私はダメだった。
ジャンルを離れてもダメで、新しく何かにハマろうという気も湧かない。
死んだ推しの亡霊を追い求めているのだ。
もちろん前のような気持ちで見ることはできないし、私の許容範囲外なだけでもしかしたら他のキャラクターもおかしな変化をしているんじゃないか?と疑うくらいには公式に対する信頼も無い。今はまだそうはなっていないがもし今後すすんで粗探しするようになってしまったら本当にオタクとして終わりだと思う。
でも、「もしかしたら推しのあの台詞に対する言及が来るかもしれない!」サ終していないから、更新があるからこそ、私はそういった希望を捨てられないでいるのだ。
公式を信頼していないと言いつつ自分に都合の良いどんでん返しがきたらあっさりそれを受け入れられるよう準備をしているのだ。ボロボロになりながら呪詛を吐きながらそれでも追い縋ってみっともない。
だけどSNSで表立って愚痴を言っているわけでもない、公式をsageるようなことも言っていない。このヘドロのような感情を自分の中で室内飼いしているだけなのだ。
耐えきれなくなって開いた穴から毒が漏れ、ついにはこうしてはてなに書き込んでしまったわけだがどうか許してほしい。
恐らく私は公式にどうにかしてほしいわけでもジャンルの人間によしよししてほしいわけでも無いんだと思う。
許してほしい。
死んだ推しの亡霊が見えなくなるまで
その界隈の住人でいることを
どうか許してください。
響鬼を思い出しちゃったじゃないか…
響鬼もトラウマものだが、この際、話に上げているジャンルも制作陣を一新しましたと言われた方が割り切れるくらいには展開に破綻しかないんだ・・・
名推理したかったけど割り出せなかった あんさんぶるスターズ?