2020-07-07

文アニが地獄より地獄的だった

DMMゲームズ(現:合同会社EXNOA)で配信されている「文豪アルケミスト」というゲームアニメ化された(通称文アニ)。

元のゲームは本を侵蝕し消そうとする侵蝕者という敵に対抗する為、アルケミストである特務司書文豪を転生させて戦わせるという、艦これとうらぶの本・文豪バージョンみたいなものだ。基本システムクリックゲー)なのも大体同じである

ただ転生した文豪は本人という訳ではなく、本人の逸話や後の評価、あるいは著作といったものから出来上がったイメージが元となっている。例えば前者なら芥川龍之介ヘビースモーカーであること、後者ならば江戸川乱歩奇術師のような格好・振る舞いをしていることなどが挙げられる。

年末アニメ化が発表されたのだが、当初の評判は芳しくなかった。

なんといってもキャラクター立ち絵だ。中嶋敦子氏の絵は華麗ではあるが癖が強すぎる。服飾の柄がかなり省略されていたことなどもあり、「大丈夫か?」という不安の声があちこちで聞こえてきた。また、他のゲームほどの知名度もないのも相まって「本当にアニメ化するのか?」と考える人もいたくらいであった。

ところでゲームアニメ化は「新規ユーザー獲得の為」と「既存ユーザーへのサービス」という二つの観点があると思う。

そう、このアニメは完全に後者に振り切っているのだ。

まずOP神風動画担当しているのだが、あまりにも小ネタが多すぎて一話にして考察タグが作られた。

https://togetter.com/li/1490059

冒頭に作成スタッフツイートも纏まっているが、現段階でまだ見つかっていない要素が三分の一あるという。

本編のストーリーに関わる箇所もあったことが判明しているので仕方がないとはいえ、まだあるだと……?!とゲームから司書(特務司書という役職からユーザーのことを『司書』と呼ぶ。提督審神者同意)に驚かれたものだ。

なお本当にやばいのはOPのものではなく、アニメ化以前からOPムービーを作らせて欲しいとゲーム制作再度へ主張し、いざ依頼してみると曲が決まる前に絵コンテが届いたということだろう。こちらはサウンドトラックCDブックレットで明かされている。

キャラクターの造形に関しても「キャラを動かす為の省略である」「立ち絵が一番アレ」と一掃された。特に戦闘シーンはキャラがよく動く。柄なんて描いていたらアニメーターが過労で倒れてしまう。

以下からネタバレを含みつつになるので、何も知らないまま見たいという人はアニメを見てから読んでいただきたい。

第一話のモチーフは「走れメロス」だ。恐らく多くの人が教科書などで読んだことがあり、また読んだことがなくとも大まかなストーリーを知っているだろう物語で、アニメで初めて文豪アルケミストを知った視聴者には良い取っ掛かりだ。

けれどストーリーの中で「当然知ってますよね」といった態で織り込まれたのが「パビナール中毒入院」と「四メートル手紙」という太宰治エピソードだ。

「パビナール中毒入院」というのは鎮静剤パビナールの中毒になった太宰が師である佐藤春夫の紹介で彼の弟が勤務する病院入院したものであるいくら深夜アニメとはいえまさか初回でそれを持ち出すとは、とあまりにもチャレンジャーな内容に驚いたものだ(しかしこれはほんのジャブであることを話数が進むにつれ思い知らされる)。

「四メートル手紙」というのは芥川賞選考委員でもあった佐藤春夫芥川賞を嘆願する手紙のことで、近年発見された書簡は何度か展示もされている。芥川賞を熱望した太宰は他にも佐藤へ色々やらかしているし、ついでに太宰が受賞することに反対した川端康成宛へ誌上で「刺す」と書いたり、嘆願の手紙を出したりもしている。

これらのエピソード司書達は共通認識として知っていることであり、改めて説明不要な内容であった。それらを深い説明もなくさらりと盛り込んだのは「司書たちならわかりますよね」といった制作者の意図が透けて見えるようだ。

そう、あくまさらなのだOP考察タグからもわかるように司書たちは元ネタ探しを厭わないし、それを共有する下地がある。知らない人が「ふーん」と流すことも「これこれこういうエピ-ソードがあるから……」と今までの知識から察し、あるいは知見ある人のツイートを共有して考察していくのだ。

それらが決定的になったのが最新話の第八話である

ただでさえ前話で人気キャラ燃えた上にコロナの影響で一ヶ月休止があったのに、更に重くなっていくストーリー、に上乗せしていくエピソード考察、そしてOPの新発見

しかしここで公式アカウント制作から衝撃的なツイートが。

クライマックスに向けて物語は加速していきます」「次回は控えめに言って凄い」「アニメチーム渾身の9話」「お覚悟を」

まさに地獄より地獄的……!

なお「地獄よりも地獄的」というのは芥川龍之介が「侏儒の言葉」という作品の中で述べているものである

https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/158_15132.html

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