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2020-10-08

で、シリコンバレーいくら稼げるのか(Part 5)

承前 : Part-4 https://anond.hatelabo.jp/20201006121559

次回 : Part-6 https://anond.hatelabo.jp/20201011065246

前提

前回、交渉すればL4になれたのに交渉しなかった学生の例を紹介した。あまりのnaiveさに周りのgrown upは頭を抱えたが、ある意味で微笑ましい事例とも言える。

今回紹介するのはその逆で、ダメ交渉をしてしまい彼自身を含め関係者に苦々しい思いを残した。この例は今でも自分に怒りと後悔を覚えさせる。

増田にこのシリーズを書いた動機にも関わる。長くなるが、事の始まりから書いていく。

導入

ある時、自分はある会社のある部署で働いていた。高ランク技術者ばかりがいる部署で、非常に刺激的、かつ全員がいい人であった。

自由雰囲気で、ランクや年齢に関わりなく皆が家族のように親しんでいた。その時の同僚とは今でもつながっている。COVIDが来てもZoom乾杯をする仲だ。

ある年、その部署新人が来た。仮に彼をペーターと呼ぼう。ペーターの雇い方は稀とは言わないが少し特殊であった。

ペーターは、やたら押しの強い人が多い気がするある国の出身で、やたら社交的な気がするある国の有名工科大でポスドクをしていた。

そして、その部署のあるmanagerがあるプロジェクト必要技術下調べをしているとき、彼の論文が目に留まった。

その論文を皆で議論しているうちに、著者のホームページを見てみるとポスドクであることが判明した。ということは求職中の可能性がある。専門家がいるならその人にそのまま実装してもらえばいいし、その後も戦力になるだろう。

そのmanager、のちにペーター上司となる、が早速彼と連絡を取り、面接をすることに。自分面接に加わった。高ランク技術者たちとの質疑でも物怖じせず、専門分野でもかなりいい線を行っているという感触を得た。

ほかの社員も同様だ。すぐさまL4オファーが出され、彼は渡米することになる。

我々はペーターを温かく迎え入れた。家族の一員であるビザGCのことでいろいろと相談にも乗ってあげた。

彼の専門分野は自分も興味を持っていたところなので議論も多くした。彼から学ぶことも多く、利発で高生産性という印象を強めた。春秋に富む若者だ。

ペーター、残される

さて、そうこうしているうちに彼とは無関係にその部署であることが起き始めた。人が辞め始めたのだ。

その部署は非常に心地よいところだったが、高騰を続けるシリコンバレー給与水準(と家の価格)についていけていなかった。

ある程度の期間であれば仕方がないが、長期間続けばやりがい搾取である暖かい家族のような、アットホーム職場、日々新しいことを学べますしか給与は奮わない、ブラックフラグ満貫である

最初に辞めたのはアメリカ人であった。彼は利に聡く、情勢に通じ、交渉も上手であった。多くのオファーを得て、その中からさらに値を吊り上げ、TCを大幅に上げて出て行った。

そして我々は家族なので、そういった情報が共有された。なんというoutside world! 一人、また一人と彼に続いた。みなL7付近オファーを大量に得、上手な交渉をしていった。

彼らの情報手法は我ら家族に惜しみなく共有され、非常に学ぶところが多かった。交渉成功例として次回以降にいくつか取り扱いたい。

また、彼らがうまく各企業に散らばってくれたおかげで、自分はいろいろな企業情報を得ることができている。

そして自分も辞めた。しばらくしてペーター上司も辞めた。

ペーターは、一人残された。

ひどいな、と思ったが新しい職場で忙しく、どうすることもできない。ただ、機会があれば何かしてあげたいとは思っていた。

アルムさんとの邂逅

さて、自分は次の会社で忙しく働いていたのだが、他部署のある技術者と知り合いになった。仮に彼をアルムさんと呼ぼう。

アルムさんは年季の入った技術者で、ちょっと頑固なところはあるが自分コードに誇りと情熱もつ好漢だ。

自分が長年L6であることに不満は覚えつつも、金は求めない自分プロジェクト成功させたい、と邁進していた。肩書上managerではあるが、軸足は今もコードに置かれている。

自分はそういう人が好きであるので、すぐに仲良くなった。

そんなアルムさんが自分プロジェクトを加速させたいと願い出、無事に追加のheadcountが付与された。そして、いい人いないか、と自分に尋ねてきた。彼のプロジェクトペーターの専門分野と少々重なりがあったので、自分はすぐにペーターのことを思い浮かべ、彼に連絡した。彼は他に行きたがっていた。渡りに船だ。

この時、自分ペーターのreferを正式にはしなかった。大抵の会社ではreferral bonusがあるが、自分はそんなことよりペーター

助けになりたかったのだ。単に知り合いの中継ということにしてペーターアルムに引き合わせ、自分はそ知らぬふりでアルムからどんな面接を予定しているかどんな素養を見ているか聞き出し、秘密裏ペーター面接対策を施した。もちろん面接者は何人もいるが、最も重要なのはアルムさんの心象だ。

それがどれぐらい奏功したかからないが、無事にアルムさんはペーターを気に入った。彼がペーターのことを褒め称えているのを聞いて、自分の責務を果たした気がした。

オファーが出され、1週間ほどたった。さてどうなったかアルムさんに聞いてみた。

彼は苦虫を噛み潰したような表情で言った。

「なんなんだあいつは。自分VPだとでも思っているのか」

一週間前とは真逆の反応である。何があったのだ?詳しい話を聞き、自分は非常に混乱した。

アルムさんが出したL4オファーを、ペーター報酬が低すぎるといって、最低でもRSUがこれだけなければ、という数字を出してきたのだ。

その数字というのがL7に相当するものであった。なんだそれは。

経験のない人によくある、4年分のRSUと1年分のRSUを取り違えたのでは?自分若いころ勘違いして舞い上がり、その後でがっかりしたことがある。恥ずかしい。アルムさんに質したが、ペーターは確かにこの数字を出したという。

ペーターの誤解

訳が分からないのですぐにペーターを捕まえ、なぜそんなことをしたのか聞いた。自分は聞き役に徹した。

「あのオファーは安すぎるよ」

そうは思わなかったが・・。彼はL5を希望していたのか?交渉次第ではありえなくもない。転職ランク上げの好機である

「...だってRSUから収入サラリーよりも低いじゃないか

聞き役に徹するまでもなく、この時点で自分は声を失った。

TCの大部分はRSUになるんだろ?Xさんはサラリーなんてpeanutだって言ってたよ」

XはL7Amazonに行ったんだ。Amazonサラリーが早々に頭打ちするためにRSU-heavyの特殊場所だ。大体お前はL4じゃないか

この時点で全容が大体見えてきた。彼は高ランク技術者に囲まれ、彼らの武勇伝を、分け隔てない風潮の中で

聞いているうちに、とんでもない期待を持ち始めたのだ。以前の回で書いたようにランクが上がれば確かにTCの大部分がRSUになる。しかL4やL5の段階ではまだまだそんなことはない。そもそも彼はL4などという用語さえ知らなかった。

「わかってるよ、交渉大事なんだろ?discountしたオファー最初に出すのは交渉なんだ。」

そんなことはない。アルムさんがdiscountをする動機が全くない。彼は小さなチームのmanagerであってRSU depletionを心配するのはもっとずっと上の人々である。彼はheadcountを埋めてさっさと仕事に戻りたいだけだ。大体今回の件はrecruiterの関与が最小限の、ほぼ直接hiringである。お前はそもそもrecruiterとhiring managerの違いが分かっているのか。

交渉の仕方はわかっているよ。買う方が$10っていったら、売るほうが$100って言って、買う方が$20って言って・・・徐々に双方の提示を近づけていくんだろ。常識だよ」

どこの常識だ。

大阪のおばちゃんの値切り方か。お前の国は確かに南のほうだが、ミナミ次元トンネルでつながってるのか。いつからだ。

「値切り交渉になるだろうから少し高めの額を言っておいたよ。返事を待ってるんだけどなかなかこないんだよね、せかしてくれない?」

もう二度とアルムさんはお前と連絡を取らないよ。

彼は自分が忙しい中でお前のために面接をこしらえて、上司交渉して迅速にオファーを作ってきたんだ。

オファーの作り直しにどれだけ手間がかかるのかわかってるのか。なぜ交渉の向うに自分と同じ、忙しい一人の人間がいることに気付けない。

自分のfair valueを事前に調査しておくことすらしなかったひよっこ技術者になんでほかの人間が汗をかかなければならない。

交渉をするにしても相手迷惑をかけないやりようがいくらでもあっただろうが。大体お前competing offerもないのに交渉することの意味理解しているのか。

自分は怒りと絶望で頭がおかしくなりそうだった。なんなんだこいつは。自分を何だと思っているんだ。

Naive greedy ignorant selfish tard. Do ur f-ing DD or never leave your mom's basement!!!

そして、自分やほかのgrown upどもが転職経験の彼に不完全な形で吹き込んでしまった情報が遠因であると知り、なんてやつを紹介してしまったんだ、自分が関わっていることを知られるとまずい、と思い始めた。

まず、アルムさんにはペーターと連絡を取っていることは以降も完全に秘密とした。馬鹿げたやつもいるもんだ、彼のことはよく知らないけどびっくりだね、と同調に回った。

アルムさんはペーターからメールは全部無視するよ、と言っていたので多分ばれてはいない。

そして、ペーターには、以降連絡を取らなかった。残念だったね、どうしてだろうね、とだけ言っておいた。

その後、ペーターがある会社L4で移ったのを知った。いい会社だし失敗しなければ彼ならL6まではいけるだろう。

今回L5になる可能性もあったのをふいにしたが、長い目で見れば大した影響はないのかもしれない。ただ、自分は彼と金輪際関わり合いになりたくない。

教訓

ペーターへの怒りは絶えないが、時間をおいて何が悪かったのか冷静に分析してみた。

  • 彼がnaive greedy tardであったのは確かだ。しかし、それがすべての原因だったか?誰しも最初世間を知らないし、馬鹿な期待を抱いたりすることってないか
  • 彼はselfishであった。しかし、経験のないことをする際に、その周囲の人々の事情をすっぽり見過ごしてしまうことはないだろうか?

自分にはあった。では違いは何だ。due diligenceだというのが私の結論だ。

からないなら調べろ。levels.fyiでもTeamblindの糞に塗れた情報でもいいからとにかく集めて分析しろ

どこで情報を集めるのかわからないなら人脈・Google何でもいいから駆使して聞きまわれ。

人生重要な転機なんだから当然する。ペーターはしなかった。そしてそれがほかの要素と相まってこんな結果となったのだ。

こういったことに強いのはいつもアメリカ人だ。日本人やそのほか外国人は開始地点からして遅れている。悲しい。どうすればせめて開始地点を近づけられるか。

情報だ。自分はそれを伝えたかった。できれば不完全でない形で。相場機微常識も、USに行く前に最低限抑えておいて欲しい。

TCの大部分がRSUになるのか、ふむふむ」とだけ受け取る人を少なくしたい。これが増田投稿した理由の一つである

もう一つの理由は、誰にも言えない怒りを周囲の誰も見ないところに便所の落書きとして吐き出したかったのだ。すっきり快感である

次回は株価上下による収入への影響について。

 
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