2021-04-26

AirTagへの見解畏敬の念bingキャッシュ版)

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どうも。Appleが新しく発表したAirTag、すでにお買い求めになった方も多いのではないでしょうか?

私はそのAirTagと目下同じ領域製品となるMAMORIOという紛失防止タグを開発・販売する日本スタートアップをしています

AirTagが発表され、様々なことがわかってきましたので現在のところの見解をまとめておきたいと思っております。今後変わる可能性はありますが。

現時点のAirTagへの見解は?

Appleにとっても相当危険な賭けだろうなという認識です。ニッチ領域としてスタートアップがやるのと、世界一企業がやるのとではユーザーから求められる水準や期待値がかなり違うはずです。現在の紛失防止タグという製品が抱えるそういった課題点をどれくらいクリアできているのか、あるいは今後向き合うつもりなのかが問われていると思います

現在の多くの紛失防止タグが抱える課題点は大きく分けて3つあります

探知精度、プライバシー利用者情報リテラシーです。それぞれについて解説します。

1.探知精度の問題

電波距離数十メートルBluetoothを用いて追跡を行う場合BT範囲外においては第三者スマートフォン端末の位置情報活用してトラッキングを行う仕組み(弊社ではクラウドトラッキングと呼んでいる)があります

MAMORIOではMAMORIOアプリDLして登録しているiPhoneAndroidユーザーネットワークを通じてトラッキングを行っています。AirTagではこれをOSレベル実装世界中の全iOS端末で匿名トラッキング実施する仕組みだと説明されていますAppleではこれを何億人のユーザーが探してくれると表現していますが 、では果たしてこれは具体的に何%の確率で見つかるのでしょうか? 今現在アクティブな端末数は?見つかっている数は?  ユーザーにとってはそれが真っ先に知りたいはずです。しかし、AppleはAirTagを探す手伝いをしたデバイスが誰のものか、Appleですらも知ることはできないと言っています。つまり見つかるかどうかはわからないし統計も取れないということです。あくまで探してくれる「かも」、見つかる「かも」、という仕組みの話を言っているだけになります。 Apple製品であれば利用者も圧倒的に多いはずですが、それでも仕組み上 、人が訪れないエリア電波遮断された状況などでは見つけることは不可能です。つまるところAppleのいう「探す」ネットワーク果たして本当にどれくらい有効機能しているのかは誰にもわかりません。あなた想像の中にだけあります

 MAMORIOでは日々ユーザー間のすれ違いの数をアプリで誰にでも見れるように公開し改善をおこなっています。また端末間のすれ違いだけではなく、より確実に忘れ物や落とし物が見つかるよう全国鉄会社700路線の遺失物センターに専用の受信機を設置し、設置場所ウェブサイト上に公開、地点名での位置情報登録し落とし物が届けられたら見つかる仕組み構築しています。当然、AirTagの仕組みに比べたら遥かにユーザー数は少ないですし、100%落とし物忘れ物が見つかるわけではありません。だからこそ可能な限り真摯事実を伝えることが大事だと思ってやっています

 Appleのやり方はこうした製品の前提となる説明飛ばし、非常に作為的で不誠実な伝え方ではないかと思います

 また、位置情報の誤差の問題もあります。「探す」アプリ自分iPhoneの端末の位置情報を見てもらえばわかると思いますが、自ら通信するiPhoneですら誤差が生じていてずれているのがわかると思います。屋内ではGPSの精度はかなり落ちるのです。ましてやAirTagは第三者とのすれ違いを活用する以上どうしても誤差が発生するはずです。また拾った人がAirTagの電池を抜いてしまった以降は当然追跡はできません。最後にあったはずの場所をここだと思って探していたら、とっくに持ち去られてしまっていて見つからない、という可能性は大いにあります

また、GPSを組み合わせて位置情報特定する以上、数メートル〜数十メートルの誤差は発生します。住宅密度の高い場所であれば実際の場所とは異なる隣りの家やビルを指し示す可能性はかなりあります。AirTagが入った自分の盗まれた財布がここにあると思い怒鳴り込んで入っていったら実は違っていてトラブルになった、ということが起こりうる可能性は非常に高いです。日本ではすいませんでした!の笑い話ですむかもしれませんが、海外であればそのまま不法侵入で射殺されてもおかしくありません。このようなリスクについてAppleはきちんと利用者説明を行っているのでしょうか?

この問題MAMORIOももちろんついてまわりますが、事前に仕組みや機能についてある程度理解をしていただいた上で購入する層を対象としているMAMORIOと違い、AppleブランドであるAirTagではユーザー層も多岐に渡るはずです。 当然利用者が多くなればなるほど、見つからなかった、そんなことは知らなかったという声や事例も多いはずです。その際のネガティブな声でAppleブランド毀損してしま可能性はあります。そういったリスクを背負ってなおAirTagを出したという判断に対してただただ感服です。

また同じ問題UWBを用いたトラッキング機能もついてまわりますUWBの特徴は数センチ単位での位置特定可能指向性ではありますが、電波である以上遮蔽物や環境の影響は大きく受けます。どれくらいの近さだと見つかるのか、遮蔽物の影響はどれくらいか、利用する環境によって異なるため、実際にユーザー期待値を下回る可能性も高いです。

 それでも世界最高の企業であるApple社が手掛ける以上、既存の紛失防止タグよりも素晴らしいユーザー体験であることは間違いありません。見違えるような体験になるはずです。しかし大多数のユーザーにとって紛失防止タグというのは未だ未知の存在であることも事実で、はたしてAirTagを初めて触ったユーザーがそのユーザー体験を許容するか、紛失防止タグのものへのネガティブ評価になりかねないか非常に懸念しています

2.プライバシー問題

2つ目はプライバシー問題です。物の場所を探せるということは、当然ストーキング行為などに使われるというリスクがあります。紛失防止タグ以外のGPSラッカーにもこの問題はありましたが、GPSラッカーがそこそこの大きさ(スマホサイズ)、短い電池寿命(3日程度)、通信回線契約の有無(通信キャリアへの契約必要)といった形で、利用条件が限定されるのに対し、紛失防止タグは極小(小銭サイズ)、長寿命(1年程度)、通信契約不要匿名利用可)といった特徴があります

 しかしながら、前述の通り紛失防止タグBluetoothを用いている仕組みゆえ、第三者スマートフォンとのすれ違いによってしか位置情報特定することしかできません。そのためストーキングのために悪用するには対象が偶然タイミングよく他のユーザーの近くを通らなければ位置情報特定はできません。今までの紛失防止タグは精度とプライバシー絶妙バランスがこうした問題の発生を防いでいたとも言えます

しかし、Airtagは違いますiPhoneの普及率を考えると通信精度はGPSラッカーを上回り、屋内でもかなりの精度がでる可能性が高く、小さく、長寿命で、匿名性の高い追跡デバイスとして猛威を振るう可能性があります。(またその普及度と知名度ゆえにそういった悪意を誘発してしま可能性もあります

もちろん、Appleはこの問題に対して様々な対処を行っていると述べています

 例えば、近くに第三者のAirTagがあれば手元のスマートフォンに通知を行う、また近くのAirTagを鳴らして探せるというものです。ストーカー目的第三者のAirTagが近くにあれば、スマホがお知らせてしてくれる、探せるから安心といえば聞こえはいいですが、あくまでこれはiPhoneを持っているユーザーに限っての話しです。Androidユーザーは当然この恩恵には預かれません。つまるところAndroidユーザーは誰でもAirTagによって追跡されてしま可能性があるということです。Apple企業としてプライバシーを大切にする姿勢は称賛に値します。が、だからといってそれはiPhone製品を使っていなければ誰でも位置情報を追跡されるリスクを背負わされるということにはならないはずです。

まりAppleのやっていることはこうです。

Androidをお使いのあなたはAirTagでストーキングされても気が付かない可能性があります。でもストーキングされてもすぐにわかから安心そう、iPhoneならね」。

このようなやり方には非常に狡猾な悪意を感じます

 またApple第三者のAirTagが近くにあるとき以外にも、登録者のスマートフォンからAirTagが一定期間(3日程度)離れた場合、音が鳴って周囲に存在を伝えると言っていますAndroidであっても、NFCをかざせば音の止め方や詳細がわかるといいます。これでAndroidユーザーなら安心、、、となるのでしょうか?

 今この時点でAirTagを知っているような情報感度の高い熱心なAppleファンにとってはAirTagやその仕様常識かもしれませんが、Androidユーザーや多くの人にとってAirTagはまだまだ未知のプロダクトです。ましてやシニア層が多い日本ならなおさら。どこからもなくタグから音がなったときにそれに対して誰しもが第三者のAirTagと気づいて適切に対処することはできるのでしょうか? またそういったことへの啓蒙Appleは行うのでしょうか? またAppleは「探す」ネットワークサードパーティーに向けて開放しており、今後様々な形状や特徴を持ったデバイスが登場する可能性があります。AirTagであれば象徴的なデザインなので、すぐにそれと認識することができるかもしれませんが、それ以外のサードパーティーデバイスを逐一見分けることは一般ユーザーには不可能です。なんだか見たことのないデバイスから音が鳴ってなにかの故障電池切れかなと思っていたら、実はトラッキングされていた、という可能性が誰にでも起こりうる可能性があります。そのリスクAndroidユーザーさらされているのです。

また鳴るタイミングが周囲の人間にはコントロールできない以上様々な状況で鳴ることがありえます大事センター試験中になり始めたら? 車の運転中にAirtagがいきなりなり始めたら? 静粛なコンサート中になり始めたら?

また、深夜の暗い家や屋外であればなり始めても見つけられないことも想定されます。深夜にゴキブリの影を見つけてそのまま見つけられなかったことを考えて見てください。ぞっとしますよね。

女性ならストーカーに使われる可能性もあるAirtagの音が自分の部屋で鳴るだけでそれを見つけるまでは恐怖でいっぱいになるはずです。あるいは誰かが嫌がらせでその音を鳴らすだけで相手を追い込むことも可能です。

そういった状況でも落ち着いて誰しもが適切に対応ができるようApple信者以外の全ユーザーにも啓蒙をご丁寧に行ってくれるのでしょうか? 本当にありがたい話ですね。

さらAppleは「探す」ネットワークについては、匿名化を行いAppleでさえも一切のデータを持ち得ないとしています

電気通信事業法では、公共電波通信を扱う事業者責任として利用者通信の秘密の保護は厳重に定められておりますが、一方で裁判官の令状による通信履歴等の 取得・提供児童ポルノの閲覧に対するブロッキングなどの緊急避難通信の秘密の侵害に当たらず状況に応じて適切な対応を行うことが求められます

Appleはこういった犯罪悪用リスク可能性についても、仕組み上自分たちはデータを一切保有しておらずわからいか責任はないといっているのです。各種電気通信事業法を遵守し事業を展開している通信キャリアが構築した通信インフラ網やそれを利用する人々のスマートフォンネットワークフリーライドし、悪用にもされうる可能性のある新たな通信サービスを構築・提供しその責任放棄しています。これは非常に危険なことだと思います

 もちろん当然、MAMORIOでも同じ問題は発生しえます。そのためMAMORIOでは製品の利用にあたっては各種法令を参照して運営するとともにサービス登録にあたっては利用規約プライバシーポリシーを明示し、データも厳重かつ適切に管理を行い取り扱っています。今後も必要認証制度を適切に取得していくつもりです。また関係当局より打診があった際はそれが規約合致する適切なものである限り、事業運営者として対応真摯におこなっていくつもりです(現在のところそういった事例はおきていませんが)

 こうした事業運営責任所在を明らかにせず、匿名化し、運営者自らがそれを知りえないからといってその責任は許されるものではないのではないでしょうか? 

文字数制限のためhttps://anond.hatelabo.jp/20210426022649に続きます

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