はてなキーワード: アメリカバクとは
(追記)
全然突っ込んでもらえないからネタバラシするけどイマジナリー息子とイマジナリー私のお話です
(追記終わり)
写真を整理していたら色々思い出したので、今更ながら日記に残したいと思う。
何を隠そう、私は動物園が大好きだ。
小さい頃は、休みのたびに両親にせがんで動物園や水族館に連れて行ってもらったものだ。特にアメリカバクやオタリアなど大きくて柔らかそうでヌメッとしていそうな動物たちの不思議な造形と質感が大好きだった。
本当は息子ももっと早く動物園に連れていきたいと思っていたのだが、このご時世おいそれと遊びに行けるわけでもなく、調整に調整を重ねてついに実現できた、満を持しての動物園デビューだ。
私の英才教育のおかげですっかり動物に興味を持って育った息子はもちろん、久々に動物に触れられると思うと私も楽しみで仕方がなかった。カメラに双眼鏡、スケッチブック、前日夜から念入りに準備をした。当日は動物園の近くのコッペパン屋さんに寄ってお昼ごはんを調達し、開園時間と同時に動物園に飛び込んだ。
ちなみに入園は時間予約制となっているので、これから行こうと思っている人は気をつけよう。
予習バッチリな息子はまずオカピを見たいとリクエストしてきた。良いチョイスだ。
知らない人もいるかもしれないので解説するが、オカピは茶色いわがままボディにしましまの手足とお尻がキュートなキリンの仲間だ。
いわゆる珍獣として話題になり、私も子供時代にたいそうおもしろく観察したものだが、今も変わらず珍獣のようだ。オカピの魅力を一発で見抜くとはさすが我が息子。
どちらかと言うと人間に興味がなさそうなイメージのあるオカピだったが、この日は草を喰みながらじっと息子を見下し…見つめてきた。ああ、ちょこんとした角がかわいい。息子も一生懸命見つめ返して、スケッチを取る手が完全に止まっていた。
ちなみに私はオカピの近くにいるハシビロコウがお目当てのひとつだった。ハシビロコウは鋭い眼光と巨大くちばしが特徴的な大きな鳥だ。一時期「動かない鳥」として話題になったこともあったが、少なくとも動物園で見ているぶんには結構動く。大きく形の良い羽がふわりと膨らみ、瞬きするたびに淡く澄んだ灰色の瞳がキラリと輝いて、実はとてもきれいな鳥だと思う。私が見たときはオスとメスが一羽ずつ、一つの大きなケージに入っていた。繁殖にチャレンジしているのだろう。ちょっとオスが奥手なのかな?メスの気が強いのかな?人間目線ではあまり上手くいっていないように見えた。頑張れオス。
この調子で一つ一つの動物を語っていくと永遠に終わらないので一気に端折るが、結果として息子は大変満喫したようだった。
おみやげコーナーで新しい図鑑を買ってあげたら、今日に至るまで毎日飽きずに読みふけっている。ちなみになぜかイルカのぬいぐるみも欲しがったが、動物園にイルカはいなかったので許可しなかった。見ていない動物を実際に見た動物より優先させるのは私の教育方針に反する。ニシキヘビなら買ってあげるよと言ったら、少し迷ってから「いらない」と言われた。それから更に色々迷って、結局ホッキョクグマのリアルな模型を買ってあげた。
そういえばコッペパンも美味しかった。私はやはりベーシックなポテサラが好きだ。息子はいちごホイップが気に入ったらしい。
動物園から帰った日の夜、息子がしみじみと「ぼく、あんなにたくさんの動物に会えたなんていまだに信じられないよ。動物園って天国だね」と言った。
妙にませた口ぶりにちょっと笑いながら、私は「そうだね、でも昔は『狭い檻に動物を閉じ込めるなんて動物がかわいそうだ!』って動物園のことを嫌う人もいたんだよ」と教えてみた。
息子はかなり驚いたようだった。そりゃそうだ。いわゆる「野生動物」が自然界から消えて久しいのだから。
野生動物は絶滅した。動物園でその名残をかろうじて確認できる今の世界しかしらない息子には、自然が溢れ、野生動物が溢れていた時代など信じられないだろう。息子より先に生まれた私でも実際に見たことはなく、最初は理解できなかったのだから。
一部の愛護団体から動物虐待だのなんだのと批判されていた動物園が、動物たちの最後の砦となり、今では動物を愛するものは皆動物園にすがっている。皮肉なようにも見えるが、まあ動物園はもともと博物館の一種であり、動物や自然の保護や研究、教育普及を目的とする施設である。当然の結果とも言えるだろう。
ともあれ、息子の動物園デビューは大成功だった。また近いうちに、息子と一緒に動物園に行こうと思う。コビトカバと息子のツーショット写真撮り損なっていたし。