はじめに断っておくと、給与体系は会社によって違うので、この記事は当方の昔の経験に基づく話としてご覧くだされ。
海外駐在を知らない人からよく掛けられる言葉の一つに、「給料たんまり貰ってていいな〜」というものがある。
これはまぁ一定の真実を含むが、たぶん世に思われているほど懐が潤ってるわけでもないよってのが本記事の趣旨である。
海外駐在の給与算定には、「購買力補償方式」というのが採用されていることが多い。
これは簡単に言うと「本国で頑張ってる同僚と海外駐在を公平に扱いましょーね」というテーマのシステムである。
元々は欧米製造業のグローバル体制が拡大してきた60年代くらいにどっかのコンサル会社が編み出したらしい。
海外駐在というのは赴任する国で労働ができるビザを取得して行くわけだが、向こうの国だってビザを発給する相手の素性は慎重に吟味する必要がある。
なので(国にもよるかもしれないが)、基本的にはその駐在員が赴任先の現法にとって必要不可欠な存在であるというタテマエを付与されている。
また、この関係で駐在員というのは下駄を履かされ、日本でいう社長とかマネージャーとか、拠点長みたいなポジションを与えられる。
現法においては、このポジションに則った給与を与えないと会計上やら税金上やらで問題になるので、駐在員にたんまり給与を支払うことになる。昔よく言われていた「海外駐在は日本からも赴任先からも給与を貰っている」という風説はたぶんこれが発端である。
ところが、実際には現法における社長というのは大概の場合日本における部長クラス。マネージャーや拠点長は課長クラスである。
つまり、現法で貰っている給与というのはその人の日本の職位からすると貰いすぎなわけである。
この貰いすぎた差額をどうするかについては国や会社によって対応が異なると思うが、一例としては毎月会社に給料の一部を返金したりする。
もちろん上記のような背景あってのことなのだが、それでも毎月自発的に給料返上イベントが発生するというのはなかなかモチベーション的にクるものがある。
次に給与の中身の話になるが、駐在員の手当としては、大別すると危険地手当と物価調整の2種類がある。
危険地手当は読んで字の如く日本より危ない地域に赴任した駐在の方が多くもらえる。物価調整は日本より物価が高い国にいる駐在が多くもらえる。
ただ、物価が高い国というのは生活コストが高いということなので、より危なくて物価の安い国にいる駐在の方が可処分所得という観点ではメリットがあると思う。
また、控除という観点からは日本で支払うのと同等の税金をさっ引いて、駐在員の手取りを調整したりもしている。
で、これでもまだ何となくおちんぎんをたくさん貰えてそうな感じがするが、実際には国によって個人負担してでも揃えないと生活が大変な物が結構あって、この辺の待遇がどうなってるかが会社ごとの待遇差に繋がっている。
超大手になると今でも家族用の車購入を補助してくれたりするらしいが、自家用車を自己負担する場合はそれだけで結構な金が飛ぶ。
また国によっては治安上の理由でドライバーを雇わないといけない場合(まぁそれ自体が普通に考えれば贅沢なことなんだが)があり、これが個人負担だと一気に苦しくなってくる。
あとはそもそも論だが海外への転勤自体、トータルで考えるとすげぇ金がかかる。日本の自宅に持っていた家電や家具は購入してすぐだろうが何だろうが処分しなければならないし、それらは帰国したら速やかに買い直さなければならない。子供がいる場合は教育関連もかなりコストがかかる。
自宅を引き払うなどした場合は置き場を失くした車もセットで処分する場合が多いので、帰国した際の配属先によってはまた車を買い直さないといけなかったりする。(まぁ車については日本でも都市部と地方の転勤で同じようなことになるけど)
そんなわけで、確かに日本で勤務している時と比べて額面上では貰っているのだが、日本にいる時の倍もらってるとかは基本無いし、また生活の実情としてメチャ楽かというと言う程でもないというのが実態だと思う。
しかしなー、中国をはじめとしてアジア各国の経済成長が著しい中、日本水準の給与支給を是とするこのシステムは加速度的に割に合わない内容になっていくんじゃないかなーと思っている。
当時もぶっちゃけ夫婦で転勤の無い会社に勤めてそこそこの給料で2馬力した方が可処分所得という点では楽な感じがしたし。
また、そもそも海外で遜色なく暮らせる語学力とかのスペックがあって、バキバキに仕事する自信があるのであれば外資とか行った方が楽しく稼げるんじゃないかなーとかも思う。
まぁこんな感じの実情ですよというのを知ってもらえたらと思って書いてみた次第。