#story 2020/09/27
銃・鉄・病原菌で人が死ぬ。金や金の示す権威によって争いが起こる。宗教で戦争が起こる。人類はこれらを廃絶することで平和を保った。今や世界に野暮ったい文明はなく、人に上下関係と信心はない。あんまりにも肌の色や性別によって諍いが起こるので、それもなくそうとしている。
中央当局にとって目下課題は肌の色と性別の廃絶である。性別については既に直近のロットの基本種からは廃絶された。既存世代からは外科的切除によって廃絶が進みつつある。もちろん任意だがもちろん全員が受けるという前提である。統治種の性別廃絶は検討中だが廃絶したことになっており、直近ロットから、無性別ロットは識別接尾子"A"によって暗に識別される。
肌の色について、当局は「アルファ値を0に」というスローガンを掲げているものの具体策は何一つ建てられていない。軍用オプティカルパターンを全人類分調達するのにかかる予算が試算されたが、大変間抜けで、そもそもスローガンからしてくだらなく、非機関紙の42面、つまりはコメディ欄に載るのみであった。そんな中、淫売スパイだけが不本意であり皮肉にも当局の定める模範的最新人類になろうとしていた。
淫売スパイは肉布団の上で寝ていた。あるいは自分が肉布団であったかもしれない。いかんせん貨幣制度は廃絶されており、淫売には金が払われないのでまぐわいの後、どちらが何を売って買ったのか分からなくなる。だったら全員肉布団だろうか。重力から見て上か下かで自分が肉敷布団なのか肉掛布団なのか判断できそうなものだが、ここは無重力デリヘル用ホテルなのでそれすら分からない。「マッチ吸いたいからタバコ貸していただけないかしら?」淫売スパイは未だ混濁の中にいるというわけではない。単にタバコが規制されたのでマッチをタバコで吸うようになったのだ。タバコにはリンが入っておりマッチにはニコチンが入っている。8世代前もそうだったが4世代前には逆転し、最近また逆転したという2020世紀まで続く下らないいイタチごっこだ。肥満気味の客は無重力に捕われて居心地悪そうに踊りながら、歩くのを諦めてタバコを箱ごと投げつける。
淫売スパイのくゆらせたマッチの煙は銀のラインが縦に数本入った首筋と鮮やかな金のポニーテールを撫でる。吸い殻を部屋のベッドと靴入れの固定されている面に捨てて24cmのすべすべした素足で火を消すと、光学迷彩が施された体の表面は一瞬虹色に滲み足が黒くなった後に「肌色」に復旧した。淫売スパイの肉体は第3366世代であり当時のテーマ「都会・活発・旺盛」に沿って、すらっとした長身にしなやかな四肢を備えているが胸・肩・腰が骨ばっており冷たい印象を与える。当時も評されていたことだが生産担当が「活発」や「旺盛」の意味を履き違えており、その冷たい骨にすら興奮を誘発する滑らかさがあり、性的外見が過ぎる。その素体をベースに光学迷彩、強化骨格を備えた身体、性別を喪失させた換装可能な性器ジョイント、それが淫売スパイの持つ全てである。精神は改変していないが初期値は「放埒:255, 淫売:255, 知性:255, 冗談:000」を与えてある。
<別のとこで 精神の説明> 精神はいくら統制しても環境によって変わりやすく、イレギュラーである淫売にとって初期値など意味をなさなかった。淫売スパイから知性は消え去り、自虐にしろ風刺にしろ破滅的な冒涜を行い、淫売は数値換算で16の16乗ほどあった。
淫売スパイは徐に外部性器に火をつけたタバコを差し込み、太った客に向けた。客は<今後の展開に依る>大臣で、つまり欲望が旺盛だったため新しい遊びと思い近づいた。これが彼の精神の最後で、淫売スパイは笑いながら彼の口に外性器を挿入し小麦粉とペペローションの混合物を爆発的にぶっ放した。太った腹は膨らみに膨らみ、ついには破裂した。淫売スパイは「フォアグラと製造過程が一緒ね」と言いながら口についたフォアグラを吹き飛ばした。まったくそんなことはないのだが、そんな気がしたらしい。
ぞわぞわする
メモ書きするならもっと自分にもわかるように書いとかないと後で役に立たん。 と、真面目にレビューしようとしたが最後で文章が壊れ始め、ゾワゾノするとのトラバ。 AIテストかいな...