まずわたしは女で、ATSUGIのタイツやストッキングを愛用していたオタクです。
今回の炎上を萌え絵(と括るのも抵抗はありますが総称として)使用以前のディレクションという点でまとめたいと思います。
理由としては、主要顧客であった女性が引いてしまい同社の製品を手に取ることを躊躇う状況ができてしまったためです。
新規顧客を掴むためにうったPRでであれば従来の顧客にそっぽを向かれるのは本末転倒です。
性的か否かは個人の物差しなので、その目線は極力排除して、ディレクションという点で考えたいと思います。
2)商品が見えない
3)ファッション性
完全にディレクションされていないと感じた部分の1つです。
これは絵柄についてではなく、季節感やシチュエーションの統一についてです。
PRは11/2の「タイツの日」に合わせたもので、PR先はこれからタイツを購入する人たちです。
これが通年の「ATSUGIという社名・商品を知ってほしい」というPRならおおよそ合致しているとは思いますが、だとしたらむしろ秋〜冬のイラストが多すぎると感じました。
また、シチュエーションの貧相さも気になります。多くが「働く女性」か「学生」で、例えば友人と遊びに行く私服のイラスト、1人の時間を楽しむイラストなど、女性の私生活に寄り添ったイラストが少ないのが気になりました。
こんなに沢山のイラストラーターに発注するのですから、出来うる限りシチュエーションが被らず、いろいろな趣味・仕事・生活をしている女性を満遍なく配置したいと思うのがディレクションでしょう。
またツイート方法も違和感があり、ATSUGIアカウントではなくイラストレーターのアカウントでツイートする方法は会社のPRとしては不適切です。全て統括して企業アカウントでツイートするべきだったと思いますし、イラストには企業ロゴを入れ「企業の企画であること」を主張するべきです。
2)商品が見えない
次にこの問題ですが、イラストを見て商品の良さや特性が分かりにくい問題があります。
イラストを見て「この商品は電線につよい」「足が細く見える効果がある」「おしゃれにみえる」など、タイツやストッキングの付加価値が分からないのはファッションPRとして不十分です。
これは1で書いた「統一性」ともリンクするのですが、ほぼストッキングか黒タイツといつシチュエーションの少なさも問題だと思います。
商品・服装の指定をしたとの説明も見ましたが、ならば企画側が商品の見せたい部分・特徴をきちんと説明してその部分を見せられるイラストに修正しなければいけないと思います。
イラストレーターさんも商品が指定されていたのなら特徴部分を隠して描くとは考えにくいので、指定の有無についてはきちんと明言してほしいところです。
(今後、イラストレーターさんが「あの人は指定を無視して納品してくる人」と思われてしまうのはかわいそうすぎます)
3)ファッション性
これは声を大にして言いたいのですが、ファッションにリアリティがないものが多すぎます。
今年のトレンドを入れたほぼ皆無です。
たしかに今年のボトムスのトレンドはロングスカートやワイドパンツ、女子高生のスカートも長めなどのタイツが見えにくいトレンドですが、だからこそ「どうやって着たら良いのか」を提案するべきです。
全てを今年のトレンドにする必要はないと思います。これも色々なシチュエーションが欲しいです。
メイド服もメイド喫茶で働く方やコスプレをしたい方には刺さるでしょうし、タイトなミニスカートもショートパンツもその服を好んで着る方はいます。でもそればかりでなくロングスカートとカラータイツの色合いで楽しむイラストや、エキセントリックな色の組み合わせのイラストや外で子供と遊ぶお母さんのイラストなどがあった方がATSUGIの商品の幅も見せられてよかったのではないでしょうか。
イラストレーターさんの中にはもともと女性向けに描かれている方やファンタジー系の絵が得意な方もいらっしゃいました。その得意分野を活かしたイラストをディレクションしてあげられなかったのは悲しいなと思います。
最後にこの問題ですが、少し感情に訴えかける部分があり、わたしもまとめきれていません。
ただ、主要な消費者である女性はちぐはぐな季節感、使用方法、シチュエーションの少なさに対し敏感に「自社製品に対する愛のなさ」を感じたのではないでしょうか。
それは使用者のリサーチ不足や雑さを感じさせ、疎外感を覚えたのではと思いました。
タイツやストッキングは「仕方なく着用するもの」や「防寒着」であり「自分を美しく見せるもの」でもあります。
「自分を美しく見せるもの」は男性の目線を気にするということではなく(その場合もあるでしょうが)「自分のテンションを上げるため」という側面があり、それは仕事や通学以外にもいろいろな場面で発生します。
そのリサーチがされていないように見える企画に一歩引いてしまったという印象を受けました。
おそらく適切なリサーチ・企画・ディレクションをされていないために起きた問題だったのではないでしょうか。
広告は「美しいイラスト」だけでは成り立たず、運用方法や魅せ方がとても重要です。
もっと慎重に企画を練り打ち合わせを重ねてPRをして欲しかったと思います。
最初に言ったようにわたしは女でありオタクです。萌え絵もかわいいと思いますし今回のイラストをオタクとして見た場合は素敵なイラストだなと感じると思います。
この企画がうまくいっていれば「萌え絵とファッション」という分野が確立され新しい広告の打ち出し方が出来たのではないかと残念に思います。
肌感覚ですが、10代の方達は上の年代よりイラストに対して柔軟に捉えているとは感じます。
その若い年代にファッションを紹介するという点で、萌え絵と呼ばれる分野は武器になる場合もあると思うのでその方向が炎上してしまったのは悔しいです。
まとめきれていない上に長ったらしいですが、今回の炎上は広告屋目線で興味深い案件でしたので、メモとして残しておきます。
どこにも書けなかったけどタイツの売り上げをあげたいのならリモートで家からあまり出なくても着用したくなるようなPRイラストも欲しかったなぁ。
サンドバッグ殴って気持ちよくなるのは勝手だが、チラシの裏に書いてればもっと良かった。