2015-12-11

日本人はなぜプロ技能に金を払いたがらないか、という話。

演奏に代金は払いたくないのか(一部のコメントに対して。最初の文章から変わっています)|ソプラノ川上真澄の音楽とバラがいっぱい、時々子育てブログへようこそ!


 約めて言えば、会社における社員教育のせいだ。それと「仕事」に対する意識の違いだ。

 アメリカ会社大手であればあるほどいわゆる「即戦力」を取りたがる。何かしらの技能資格、実績を有している人々をリクルートするのだ。だから、しぜん中途採用が多くなる。つまり最初からプロ」として雇われるわけだ。

 対して日本会社はいわゆる新卒一括採用を行う。たいして技能も実績も持たない純真無垢な新人社員OJTで実地教育していく。このとき社員たちは様々な分野の部署たらい回しにされる。どの部署についても一定の知識を得られるように、よくいわれる「ジェネラリスト教育ってやつ。

 しかし、このジェネラリスト教育に罠がある。というか、教育後の人材の使い方に罠がある。

 アメリカ会社員プロフェッショナルなので、基本的自分の分野外の仕事はできないし、仮にできたとしてもしない。日本ではよくある「君、◯◯もできるって言ってたよね? ちょっと助けてよ」が通用しない。なぜなら、それは契約にないから。もしその人から助けを借りたければ、金を払って雇い直すしかない。

 一方で、(まあ企業にもよるけど)日本社員はそのへんかなりユルユルだ。極端な話、全然自分とは関係ない他部署特別技能を発揮して手伝ったところで、お礼なんて感謝言葉と、よくて飲み代のおごりくらいだろう。「会社は仲間なんだから家族なんだから、親切(ただばたらき、と読む)にするのがあたりまえじゃん?」という意識だ。持ちつ持たれつってやつ(自分のほうが持つとは言わない)。

 それだけじゃない。こうした仕事における「境界のゆるさ」はどんどん拡大されていく。

 まず日本人仕事とそれ以外の時間をあまりわけない。国勢調査かなんかのアンケートに出ているが、日本人人生優先順位トップにくるのは「仕事」だ。その意識トリクルダウンを起こした結果、「仕事外の時間仕事の話をしてもいい」という変な慣例ができる。

 たとえば、「飲みニケーション」といわれるものがそれだ。日本企業で働く外国人はよく「ニホンジンは飲み会業務に関する重要情報交換を行うカラずるいデース」と愚痴る。そう、業務時間外に仕事の話をしあうのは彼らにとって「ずるい」のだ。一時期の喫煙室なんかもそうした役割を担っていた。

 そして残業サービス残業。これについての説明不要だろう。文字通り、自分時間会社のために捧げているのだ。タダで。

 

 

 こうした仕事人生、公私の境界線がゆるゆるになっていった結果、さらりまんたちの倫理メルトダウンしてくる。

 彼らはニコニコ動画youtube にあげられているちょっと面白い専門技術を持った面白い人々の動画を見て、あるいは pixivイラストなどを見てこう思う。

「この人たちは『親切で』こういう面白いものを公開してるんだ。良い人たちだなあ」

 そこに奴隷収奪するプランテーションオーナーのような攻撃意識はない。むしろ、彼らはプロフェッショナルに「好意」を持って「讃えて」いるのだ。

そこには「この人たちは『たまたま特別な才能や技能を持っていて、そういうものがあるんだから当然『親切』で芸を提供してくれるよな」という考えが底流にある。「尊敬」などはない。あったとしても「技能」ではなく、「態度」や「生き様」などといったその人自身人間性に対する部分への尊敬だ。

 日本の「芸」は大道芸人から〜「芸」は自分でも習えるから「芸」なのだ〜などというなまっちょろい歴史解釈説明づけなど及びもつかない残酷さがここにはある。日本人の「プロに金を払わない主義」は間違いなく近代日本社会が、私達が作り上げ是認してきた監獄なのだ

 私たち根本的な錯誤をしている。プロは「誰にでもできること」を「助け合い」のために使う人間ではない。「誰にでもできるわけじゃないこと」を「報酬」のために行使する人間のことだ。言葉で言えばまるで簡単だし、誰でも表面上は「そりゃそうだ」と思うかもしれない。でも、日常的に誰しもがプロプロとして扱えるように振る舞えるわけではない。わかっているはずなのに。わかっているはずなのに。わかっているはずなのに。なぜだろう。なぜそうできないんだろう。

 社員教育システム、そして仕事に対する倫理観根底から変えないかぎりこういう悲劇は今後も続くし、「プロ」は永遠に軽視されつづける。そしてこの国において「◯◯しないかぎり」という言葉は暗に「未来永劫実現しない」という意味を含んでいる。つまり、これが日本だ。がんばってはたらいていこうな!

  • だから夏冬のコミック即売会やニコニコ大騒ぎみたいな定期闇市みたいな存在があるんじゃないの。

  • 私たちは根本的な錯誤をしている。プロは「誰にでもできること」を「助け合い」のために使う人間ではない。「誰にでもできるわけじゃないこと」を「報酬」のために行使する人間の...

    • 海外は陸続きだから、素性のしらない人たちと交流したり交易する機会が多かったんだろうね。 素性の知らない人を使う場合、後腐れがなくトラブルを避けるために、なあなあではなく...

  • ニコニコ、YouTube、ピクシブに関しては、アーティスト自らが喜んで投稿しており、一部の作家には「お金を儲けるためにやってるんじゃない!」とプライドと信念をもってる方もおられま...

    • ふ、ざ、けんなー!!!!! 金のために二十年間独房送りにしておいて全体のためにかせげだー?通るかボケ!返せ!二十年をかえしてからもの言えやボケ!!

  • 払わなくていい金を払う奴は馬鹿って増田君が言ってたよ

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