以前増田で、映画館の客の男女比が話題になった。日本の映画館は女性客が多数派であり、大量に作られる恋愛映画は女性客を主要ターゲットとしたものであるという話であった。
ブコメではそもそも女性客が多いこと自体初耳であったり、根拠となるアンケート調査の女性客は好みの俳優が出ているかどうかで映画を見ることを決めているというのも話題になった。
しかし君の名は以降よりはっきりとしてきたのは男性客が主体であったアニメ映画が最大の隆盛を極めているということだ。
ワンピース、すずめの戸締り、名探偵コナン、スラムダンク、TOP4はすべてアニメだ。
これはいったいどういうことだろうか。
それだけではない。なんと2022年のディズニー映画はTOP10に入っているものが一つもない。
このまま成績を伸ばせばアバターが辛うじてはいるかどうか?というところでありこれも大事件だ。
ディズニーはサブスクへの傾倒や映画館との確執(コロナ禍に上映中止し、自社のサイトに配信したことによる)もあり興行収入をのばせなくなっているのかもしれない。
またTOHOシネマズはレディースディを取り止め、男女に区別なく割引するTohoウェンズデイを2021年からスタートしている。
TOHOシネマズがレディースディを廃止し、女性客をメインターゲットとした映画が退潮し、男性がよく見るアニメ映画が大ヒットし、女性に人気のディズニー映画がランキングにはいらなくなる・・・
ここから見えるのは、映画館が女性のものから男性のものへと少しシフトし初めているのではないかということだ。
もしこの推測があたっているのだとしたら日本の映画館はついにその基盤をグローバルスタンダードと同一化し、男性客も女性客も鑑賞することができる土台が出来上がったということになる。
女性客が多いという特殊な環境が生み出す弊害というのはグローバル化する上で非常に不利になるという点だ。
なぜなら世界の映画界は男性主導で男性客が映画を鑑賞し、男性が映画賞を評価するからだ。
近年のJ-Drama・邦画が日本国外で見られなくなったのはこのねじれたジェンダー問題も一つの要因であった。
日本は男性の過剰労働により男性が映画を鑑賞する時間がなくよりフレキシブルな対応が可能な女性客が観覧形式の娯楽のチャンピオンであった。
しかし世界では男性が作品を作り、男性が映画を見るのである。そしてだからこそ世界の映画界は女性を取り込もうと必死になっていた。
製作者・キャストに女性を増やし、映画館に女性を呼び込み観客の総数を増やす。まさに王道だ。
残念ながら日本の映画館は女性客が主導しており邦画界はその手法をそのまま導入はできない。
しかも邦画界は製作者に女性を増やず、よりクローズドなサークルにとどまりますますボーイズクラブ化していった。
その結果は近年取りざたされるセクハラ問題としてまさに露呈している。
本来やるべきことは女性製作者を増やしつつ、男性客を増やすという施策が必要だったのだ。
このねじれた日本の映画環境は女性を製作から排除し、消費者から男性を排除していった。
なぜ歌舞伎が今のような形態になったのか、なぜ能が今のような形態になったのか。
アニメは実写よりはるかに女性の制作者が多く、また男性客もてらいなく作品を見ることができる。
もしこの状態が定着すれば、将来的に男性に受ける実写映画が誕生する可能性がでてきた。
これによって男性が評価している海外のマーケットでも日本映画が評価する芽がある。
これは日本の女性向け映画が低俗であるとか、質が悪いという話ではない。
とはいえ、その評価も徐々に変わっていくだろう。重要なのは女性客に見てもらえているかどうかではないからだ。
ジェンダーを尊重している欧米で評価されれば実態はどうでも日本の映画はジェンダー平等であると評価されることになる。
つまりより男性的である欧米で評価されれば自動的にジェンダー平等を尊重しているとみなされるようになる。
その時ついに我々の映画館は真にグルーバルスタンダードとなるであろう。
01 トップガン マーヴェリック 02 アバター:ウェイ・オブ・ウォーター 03 ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー 04 ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス 05 ジュラ...