畳んだ傘の中程をワシ掴みして階段を先に登るヤツも追加してください
諦められるか、が鍵のような
きっちり停止してください。
道の端に寄り、壁に向かって念仏でも唱えながら停止してください。
人混みの中を歩く時は、前の人と一列になり、原則、前の人と同じ速さで歩いてください。
すっけべー、すっけべー、すっけべー、すっけべー♪(スキップしながら)
じぶんのセックスをみせるな
どうせ『にタバコ』とかアダ名つけてんだろ?
カフェマシン洗いに没頭していたら、いつもの通り、私のレジでしか会計しようとしないお客様が並んでいたけど、Bさんがレジを打っているし、何人ものお客様が行列してる訳でもないので、まぁいいか、と思ってほっといたら、珍しく私のレジでしか会計しようとしないお客様は、Bさんのレジで会計をしていた。
だが、いつもだったら二箱買うタバコを買って行かなかったので、また夜遅くに再来店するパターンですな、とBさんと話したら本当に21時を過ぎた頃に私のレジでしか会計しようとしないお客様はまたやってきた。
そのとき私はトイレ掃除をしていたのだけど、私のレジでしか会計しようとしないお客様の声はすごくデカイので、トイレの中まで聞こえる。今度は一人じゃなく連れがいて、お連れ様もよく来る人というか、私のレジでしか会計しようとしないお客様と一緒にしか来ない人だ。私のレジでしか会計しようとしないお客様が四十代前半くらいの容貌なのに対して、お連れ様はどう見ても60歳は超えていて、ひょっとすると70歳くらいなのかもしれない感じだが、そういえば一体あの二人の関係って一体何なんだろうな? と思った。家族にしては敬語だし、だけど話してる姿は同年代の友達同士みたいだ。いつも何を大声でべらべら話しているのかは知らない。
トイレ掃除のあと、私はレジに戻らず、黙々と品出し作業をした。私のレジでしか会計しようとしないお客様とそのお連れ様が邪魔な所で大声でしゃべっているので、わざと追い立てるようにカートを動かしつつ商品を並べた。二人組は何をそんなに喋ることがあるのかひたすらべらべらべらべらしゃべり続けていた。レジにはBさんがいて、私がBさんを見たらBさんは口をへの字に曲げていた。『帰らねーですね。』とでも言うように。
たぶん、トイレ掃除を始めてから品出しが完了するまで軽く三十分くらいかかっているのだが、その感ずーっと私のレジでしか会計しようとしないお客様とそのお連れ様は店内でデカイ声でしゃべり続けていた。私が品出しを終えた途端に、Bさんが大声で私に、
と言った。そんなにゴミは溜まっていないし、閉店後にまとめて捨てる方が効率いいからいつもそうしているので、ゴミ捨てを言い訳にわざとレジを外れようとしているわけだ。
Bさんが外に言った途端に私のレジでしか会計しようとしないお客様とそのお連れ様が無言になってスススとレジに移動していった。私はBさんが戻るまで品出しがまだあるふりをしていようかなと思ったけど、棚の向こうで人影が微妙に行きつ戻りつしているので、仕方なくレジに立った。すると私のレジでしか会計しようとしないお客様とそのお連れ様はせきをきったようにべらべらしゃべり始めて、私は知らんふりで商品をレジに登録した。タバコくださいと聞かれなかったのでタバコを取りにいかなかった。いつもなら、「お願いします」という一言でお客様はタバコを出して貰って当然と思っているようで、私がタバコを取りに行かないと「二つ」と言い、それでも取りに行かないと「タバコ二つ下さい」と言うのだが、今回はタバコを買わずに帰ってきた。
二人と入れ違いにBさんが戻ってきた。ゴミ捨てなんて三十秒で終わるのに、戻って来るの遅いなと思ったら、じつはBさんは外から店内の一部始終を観察していて、
「やっぱりアイツおかしいですよ! 絶対に異常! 増田さん、本当に気を付けた方がいいですよ」
と言った。
私のレジでしか会計しようとしないお客様は、見た目はあまりにも普通オブ普通、ちょっと昔はヤンチャしてました感があるのがまた普通の人としてリアルなのだが、やっぱりなんかおかしいのだ。お連れ様もまた、私のレジでしか会計しようとしないお客様に誘導されてうっかり長居させられてるのかと思いきや、行動を見ると事前に二人で示し会わせているようなのだ。普通だけど何か違和感のある年齢差の二人が、わざわざあんな意味不明の行動を取っている。
こんなことってあるの? と、私は目の当たりにしていながら思ってしまうのだが、以前ネットで見た「ぶつかりおじさん」も見た目は普通の中高年だったし、おかしな人っていうのはこんなものなのだろうか。
お前は俺の事だけ考えて生きればいいんだよ