明石市長の舌禍問題について。当初の過激な言い分への批判一色模様から一転して、
神戸新聞NEXT|総合|部下に「辞表出しても許さんぞ」「自分の家売れ」 明石市長の暴言詳報
↑の市長の発言詳細が明らかになると、「悪いのは7年仕事を放置してた無能職員であり、市長はむしろ正しい。立派」みたいな意見が続出していて愕然とした。
当の市長そのものの是非については、正直それほど強い感心はない。個人的には、どんな背景があるにせよ「(市民の家に)火をつけてこい」って発言はあまりに酷すぎると思う。が、市民の安全を想う明石市長の言葉の熱意に感銘を受けたり、あるいはこれまでの功績を評価して、明石市長を支持したいという立場を取る人たちを別に否定するつもりもない。
それよりも気になって仕方がないのは、この発言の是非を巡る議論に際して、パワハラ発言の被害者側である職員が「7年間何もしてなかった無能怠慢職員」だと決めつけられがちなことで。
市長を擁護する側は言わずもがな、批判する側からも「無能職員を働き者の市長が叱責した」という前提に立ったコメントが散見されて、「いやいや、そもそもこの記事だけじゃ実際の職員の働きぶりがどうだったか分かんないじゃん。ちょっと待ってよ」と。
市長「そんなもん6年前から分かっていること。時間は戻らんけど、この間何をしとったん。遊んでたん。意味分からんけど」
おそらく、前掲の記事のこの辺のやり取りであったり、
「ややこしいの後回しにして、楽な商売しやがって」
市長のこの辺の言葉であったりとかが、職員は7年何もすべきことをしていなかった、遊んでいた、面倒な仕事を後回しにしていた、給料泥棒……みたいな印象を与えるのだろう。
でもこのやり取りは、あれだけ過激な言葉を使うほど興奮状態だった市長が、上の立場から一方的にまくし立てていたであろう状況なわけで。そんな一方的な発言だけを見て、市長と職員の働きぶりが有能・無能だったと決めつけてしまうのはどうにも不公平に思えてならない。
市によると、事業は10年度に国が始め、約200メートルの区間約1900平方メートルに42人の地権者がいた。
国から用地買収の委託を受けた市は職員3人で、12年度から個別交渉を開始。早ければ16年度末に完了する予定だった。
市によると、交渉は「住み慣れている」「権利関係が複雑」などの理由で、一部の合意が大幅に遅れた。
交渉を担当した市幹部は「最後の建物を放置していたのではなく、1カ月に1回以上は地権者と交渉していた。正式書面で金額は示していなかったが、概算額は提示していた。市長が激高した時期は契約前の最終段階だった」と話す。
市長は「7年間何しとってん。楽な商売しやがって」と怒鳴ったが、別の職員は「金額提示をしていないことを、全く着手していないと思い込んだのではないか」と推測した。
一方でこちらは、遅れて公開された職員側からの弁明記事。もちろんこれはこれで職員側からの擁護的な言い分であるわけだから、これだけを鵜呑みにして「なんだ職員側は十分頑張ってんじゃん」と判断するわけにはいかないだろう。
しかし、調べてみると用地買収の実務について知識のある人たちから、「職員が7年仕事してなかった」って取り上げられ方に同じく疑問を持つ声がチラホラ見受けられる。
明石市長の「パワハラ」案件について、自治体としてできること・できないことから考える - Togetter(例えば、この方の一連のツイートとかは知識の無い自分にもわかりやすくて参考になった。)
というか、用地買収手続きの実態とかが全くわからないにしても「複雑な事情があって難航していたんじゃないか」とか「縛りの多そうな役所の仕事だし、職員の立場ではどうにもならないこともあったんじゃないか」とか、いろいろ想像は付きそうなものだし。それを「7年何もしてなかった」とまで言ってしまうのはあまりに短絡的じゃないかなあと。担当職員が何度か交代していたというから尚更、みんながみんな揃って全くやる気の無い職員だったなんて考えづらいし。
たぶんこれが、民間企業での上司と部下のやり取りだったらこうはなってなかった気がする。
・お役所仕事の非効率さや、公務員の働きぶりそのものに負のイメージが持たれがち
・当初の報道で、市長の立派に見える発言部分が報じられていなかったことに対する反動
……などなど、いろんな要因が重なってこういう流れになっちゃったのかなあと。
まあもちろん、実際いざ蓋を開けてみたら、やっぱり職員がただ面倒な仕事を後回しにしていた、どうしようもない怠慢職員だったって話になる可能性もある。(市長の叱責の翌月には買収がまとまったって話もあるようだし)
しかし、もし職員が自分の出来る範囲できちんと尽力していたのだとしたら、今の彼らの心情を思うと何ともやり切れないなと。ただでさえ、逆らえない上の立場の人間からあんなキツイ言葉を投げかけられた上に、仕事の実態を知らない全国の人々から、無能だ怠慢だとレッテルを貼られ、「こいつが悪いんだから言われるのも当然」なんて言われるんだもの。まるで「いじめはいじめられる側にも原因がある」って被害者側が叩かれるみたいに。理不尽にもほどがあるような。
それに、例え仕事が滞っていた原因として職員の落ち度が少なからずあったとしても、「何もしてない無能」とまで言われることはないんじゃないかと。
今この世のどこか(というかたぶん明石市)に、市長の言葉と此度の件で、自分の仕事を全否定されて尊厳も名誉も踏みにじられた職員がいるのかもしれないと思うと、凄く居た堪れない気分になってくる。
今後、市長の発言の是非そのものだけでなく、用地買収経緯の実態が明らかになることで職員が「何もしてないわけではない」ということが明らかにされて、彼らの名誉が回復されていく展開が訪れるか。そうならないのであれば、彼らが実のところ本当に同情してあげる余地が全くないほど、「7年何もしてなかった」怠慢すぎる職員であってくれることを願うばかり。
内情なんて部外者が知れるわけないのだから証拠を出せる奴は関係者以外いないけど その理屈だから公務員天国が終わらない 市長を擁護するのが国益だと思う