第2回「今後の経済財政動向等についての集中点検会合」議事要旨より以下抜粋。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/tenken/02/gijiyoushi.pdf
(伊藤(元)議員) 浜田先生と伊藤隆敏さんにお聞きしたいが、消費税の引
上げの効果がどれだけあるか。浜田先生とはこのところ何回かいろいろな
シンポジウムで一緒になり、そこで私が伺ったメッセージは、やはりデフ
レのときに金融政策は非常に重要であり、財政政策は効かない。あるいは
ひょっとしたらマンデル・フレミングということもおっしゃったかもしれ
ないが、そうであるとすると、例えばデフレのときに財政拡張政策が効か
ないとすると、常識的に考えれば、逆の方向の財政引き締めになるような
消費税増加というのも相対的に金融政策に比べて効果が弱いのではないか
というふうにも思われる。
だから、もちろん金融政策をしっかり継続的に検証することが必要であ
るけれども、伊藤(隆)さんのほうはもちろん、これもお聞きしたいが、
消費税の引上げによる所得効果というか、それだけで見ると、それが大き
くないのではないかということをおっしゃったように思ったが、そこら辺
(伊藤(隆)氏) 今の元重さんの質問に答えると、財政政策は効かないとい
うことはないと思うが、やはりこれだけ財政赤字が大きくて、財政再建が
危ぶまれているときには、その財政を健全化のほうに一歩踏み出すことの
意味は大きいので、多少所得効果でGDPが落ち込んでも、それを補って余り
ある長期的なベネフィットがあると思う。
それで、全く上げられないということに、もしなったとすると、私は財政
破綻というのは遠い将来ではないと思う。これは星・伊藤論文というのがあ
るので、読んでいただくとわかると思う。
それから浜田先生、すみません、非常に尊敬する浜田先生に反論するの
は気が引けるのだが、やはり数字を出して議論していただいて、では、そ
の所得効果はどれぐらいだとか、インフレ率は日銀が言っているほど上が
らないのだというのであれば、その根拠を示していただいたほうが議論と
してはかみ合うかなということが第1点。
第2点は、やはり白地に絵を描いているわけではない。既に法律がある、
この法律をそのままやるか、別の法律を出す努力をするかという、その議
論をしている。もし白地に絵を描いているのであれば、私は1%増税とい
う案も反対ではない。それもあり得ると思う。1%掛ける5ではなくて、
それだったら1%掛ける10年でもいい。財政再建がきちんとできて、プラ
イマリーバランスがプラスになるまで上げていこうと。その間、歳出削減
ができて成長戦略が成功すれば早めに止める、そういう財政ルールもあり
だと思う。
ただ、これは三党合意の前にこの議論をしたかった。でも、三党合意がで
き、法律ができてしまっている以上、これをそのままやるか、やらないかと
いう議論を、今、しているわけで、その意味ではやはりやめるリスクは非常
に大きい。
第一の矢が折れて、第三の矢が放てないという政治的なリスク、それから
時間のコストは過少評価してはいけないと思う。そこが多分浜田先生との一
番大きな違いだと思う。だから、全くできなくなってしまう危険というのは
という点で、その1%を上げるのは、私は白地に絵を描くのだったら必ず
しも反対ではない。
IMFの話が、先生の口頭発表には出ていなかったけれども、紙には書いて
ある。幸か不幸か、IMFのチーフエコノミスト、ブランシャールという有名
な経済学者であるが、彼は別に財務省が御進講したからといって意見を変え
るような人ではないから、幸か不幸かIMFというのは、全く独立に意見を言
(浜田氏) 最後の点は、幸か不幸か、ブランシャールは、アベノミクスが失
敗すると危険だと言ったのを、日本のメディアは、それ見たことかと言っ
て、アベノミクスそのものが危険のファクターであるというふうに言って
いる。そういう意味では、私は役所のインフルエンスは十分あると思うが、
それにプラスして、メディアが、またそれを脚色しているということはあ
ると思う。
私は、数字のことは正直言うと非常に弱いので、困ると例えばここにおら
れる片岡さんとかに電話をかけて、必ず数字の裏付けはどうなっているかと
聞くようにしている。伊藤(隆)先生の言われるとおり、私は具体的な数字
で話すという、いわば元の企画庁エコノミストの持っていた長所というのを
持ち合わせていない。
ただ、理論的に言うと、僕は元重さんの言われたマンデル・フレミング
を忠実に考えると、財政支出あるいは財政が上げ調になることの景気に与
える影響は、普通の場合よりもかなり弱いという理論的可能性があると思
っている。
でも、これはやはり実証研究で調べて、ちゃんと確かめてからやらけれ
ばならない。マンデル・フレミングがあるからそのまま安心だとは言えな
いのだろう。
ただ、日本ではやはりケインズ経済学の影響が強いと思うのは、こうい
う議論をしたときに、ほとんどある年齢以上の方々は乗ってこなくて、有
効需要不足が大変なことだというふうにみんな考える。そういう意味で、
理論家として話をするときには、伊藤(元)先生の意見に賛成である。
ただ、日本の財政収支が大変だというのは、かなり問題があって、宮本
一三博士が、この先生はオールドケインジアンで、マネタリーなことを余
り重視されない点には問題が残るが、『文藝春秋』の論文では、ネットで
考えると、日本もアメリカも大体同じぐらいの財政負担を持っていると。
だから、粗債務の大きさをとって200%だからというのは、やはりこけ脅し
に財務省が使っているという。財務省としても、自分のやっていることが
非常に今危険なことであり、だから自分にも少し力を与えてくれという言
い方をしているわけである。
例えば、ネットで考えるとしても、こういう官邸を売り払って国債償却
に充てろというわけにはいかないので、日本の借金漬けという一般の常識
を日本は大変だということばかりを強調するだけでは十分でない。やはり
資産、負債別に具体的に調べていかなければいけないのだろうと思う。