2016-08-21

価値ものを「テーマ」とは言わない

少しだけ真面目に言うならテーマというのは「主題」なわけ。「主」って言葉意味はわかるよね。中心であり核心であり、即ち価値なわけ。価値があるから「主」というので、なければ単なる一部分にすぎないの。そんなものを「テーマ」とは言わないですよ。

からテーマを論じたらそれはマウンティングなっちゃうわけ。少なくとも優勝劣敗が存在するわけ。そんで「作品に込められたテーマを探す競争」が人々の中二心をくすぐったりもしたし、作者すらそれに乗って崇高で深遠な「テーマ」を探す競争とかしてたわけ。でもあなたが言うとおり「テーマが主なら、作品は従か?」って疑問が当然出てくるわけ。「いやいやテーマ作品は不可分一体だよ」とか言ってごまかしてもダメなわけ。たかだか数行にまとめた「テーマ」が主なら、二時間映像はいらなくて、最初からテーマだけでいいでしょって話になる。おかしいよね。なんでそんなことになったのか?

そもそもむかしむかし「作り手・受け手」の関係において「受け手」は弱者だったわけ。「作り手」は神の代弁者司祭シャーマンまり天才」。受け手はただの虫けらで、神の子の手で一喜一憂し転がされ泣かされ笑わされ搾り取られるだけの存在だったわけ。でも「批評」という行為によって革命が起きたのが近代という時代だったの。書き手さえ気付かぬ作品のシンの価値発見確立する創造行為としての批評、それが近代的なあるべき作品受容の姿となり、そこで発明された批評家武器がすなわち「テーマ」なわけ。「この作品のシンのテーマは…」とかしたり顔で語る連中は、、ことごとくこの時代に生まれた連中のしっぽなわけ。

それに対して、受け手100%権力を握るべしとした20世紀過激主義者エンタメ派なわけ。どんな作品であろーが、オレたちが楽しめればいーじゃんていう。オレたちが楽しんだ事実けが重要なのであって、作品テーマとかそんなもんあってもクソ、みたいな考えは、一方で作品の質みたいなものを果てしなく劣化させてく危険思想でもあったのだけど。まあそんなことは昨今のアニメを見てる連中ならうすうす気付いていることだとは思うけど。萌え豚だって自分らが萌え狂ってる作品が、50年後100年後まで人類熱狂させるHOTコンテンツだなんて欠片も思っちゃいないでしょ? まあでも、「批評主義テーマ主義」ってしょせんはインテリ玩具であって新しい階級主義だったわけ。それより、萌え豚の方が「ぶひー」言ってればいいか楽しい多数派なわけ。急進派は多数派に敗北するのが歴史必然なわけ。んなわけで、萌え豚が「テーマ=悪。エンタメ至上」という旗印の下に批評家オタク駆逐していったわけ。

そんなわけで、この件についてはどちらが正しいってことも別にないわけ。「それぞれの時代における流行りの作品受容の在り方」でしかないわけ。いずれもその時代なりの必然があって生まれスタイルなわけ。

それより、そういうエンタメ派全盛な脈絡の中であえて「いかにもテーマ的に論じられそうなコンテンツ」をぶっこんで来た所が庵野のタチ悪さだったわけ。つまりテーマを論じる批評という行為自体を巧妙にエンタメ化したわけ。わかりやすく言えば萌え豚という民衆の手にテーマ論という権力解放したということで、これはまさしくアナーキズム可能性の中心なわけ。これがゼロ年代オタク概念の飽和を生んだ庵野革命だったわけ。そして今回は、ゴジラ震災政治、なんつーメジャーコンテンツを使って(政治ももはや萌え豚の旗の下に果てしない劣化を始めていたというタイミングもあって)

一般人までまんまとそれに狂わされてるわけ。そこが庵野の手腕ですげーとこなわけ。だから増田増田やお前増田や俺増田がこうやってネットであーだこーだいうところまでひっくるめて、全部庵野計算したとおりのエンターテイメントなわけで、つまり「やっぱり『シン・ゴジラ』すごいわ」というのがとりあえずの結論なわけ。

というわけで、これがライト左翼の語る「シン・ゴジラ」論なわけ。

http://anond.hatelabo.jp/20160816124615

(追記)ブクマに回答

id:tick2tack 批評オタクが「駆逐」されたのはなんでなのかな?エンタメ派が増えようが批評を続けることに問題はないように思える。単に注目・承認欲求が得にくくなったためとか?

承認欲求と言えばそうですね。すごそうな「批評」に感心してくれる人が減ったら批評やりがいがない。エンタメ派によって「今時『テーマ』とかムキになって論じちゃう批評ってイケてない」というイメージが広まりましたしね。あと、積極的駆逐しなくても、エンタメ楽しい、と一動作に対して批評=考える+論じるの二動作後者は前者にどうあがいても敵わぬ理屈ッ(成る程っ!)、みたいな。「楽で楽しい」方向に流れるのは時代歴史必然でもあるように思います

記事への反応 -
  • 昨晩書いた駄文(http://anond.hatelabo.jp/20160815210616)にたくさんコメントをいただきまして、興味深く読ませていただきました。ありがとうございます。 いくつか気になったコメントを拾っ...

    • がネット上(増田・2ch)に散見されるんだけどあれは何なんだ? 最近だとシン・ゴジラ。テーマを論じようとすると「庵野は今回エンターテイメントとしてゴジラを作ったんだからテー...

      • ■映画・漫画・小説のテーマを論じると怒り出す人たち http://anond.hatelabo.jp/20160815210616 増田の苛立ちがよくわかる。あいつら本当どっかいってくんねえかな。 多分ネット上ではテーマっ...

        • 少しだけ真面目に言うならテーマというのは「主題」なわけ。「主」って言葉の意味はわかるよね。中心であり核心であり、即ち価値なわけ。価値があるから「主」というので、なけれ...

          • 元の文章が読みにくいうえにイミフなのによく改変したな。

          • ※リンク間違えてた ごめん普通に増田が正しいと思いますよ。以下は全部言い訳です。 おれはテーマに絶対不変の価値があるという前提の人に対して、そんなものはないけど逆にだか...

            • うん。別にオレ、増田の主張否定してないし否定しない。テーマとモチーフの違いを踏まえてる増田が、物事分かってないとは思ってない。強いて言えば「みんな喧嘩やめーや」という...

              • ならよかったー。言われてみれば仲良く喧嘩が理想かもしれない。喧嘩できるパワーってのもいいもんね。 2いらないとは思うけど、正直シンゴジラ自体制作アナウンス時はいらないと...

      • シンゴジラは興味ないから関係する記事は適当に流し読みしてるんだけど 増田にはそんなやつほとんどいなくない?

      • 庵野の場合は特別だからな エヴァテレビ版で視聴者が考察やらに夢中になっていたら 最終話で全部ぶん投げておめでとーって締めたわけで それがトラウマになってる奴らがいるんだよ

      • 解釈することそのものは問題じゃないんだよ 深読みが的外れすぎて作品に対する侮辱になってるから怒られてるんだよ

      • こっちは見方のひとつとして提示してるのに勝手に決めつけるな!とか言われると冷めるよな

    • これ思い出した http://anond.hatelabo.jp/20160815210616 http://anond.hatelabo.jp/20160816173051

      • 俺ぁ作品を深掘りする評論は多少コジツケっぽくても面白がれるオタクだよ。 しかし「この作品にはテーマがないから駄作だ!」という奴と 「この作品が売れたのは斬新だからだ!」と...

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