2016-05-06

ニャートさんが「底辺」になったのは自己責任なのか?

4日前にニャートさんがキャリア論に関して以下のようなエントリーを書いた。

年収1000万超のキャリア論を一橋負け組が自省してみた

http://nyaaat.hatenablog.com/entry/2016/04/30/182924

ニャートさんが自身キャリアを振り返り、どうすればもっとうまくやれたかというのを振り返るエントリーだった。

その記事に対して以下のような増田が書かれた

年収1000万円には届かない一橋卒のキャリア

http://anond.hatelabo.jp/20160502202547

ニャートさんと同じ一橋卒業した編集者キャリア論を語った増田だ。

主張は2つ。"「学校は身の丈」「就職後は転職できるスキルを磨け」"

この増田を読んだ時、自分は非常に嫌な気分になった。

その「嫌な気分」というのをここに言語化しておきたい。


自分がこの増田を読んで「嫌な気分」になったのは「ニャートさんが『底辺』になったのは自己責任だ」と遠回しに言っているように読めたかである

同じ一橋大学卒業し同じ編集業の仕事をしていた増田とニャートさんのキャリアを分けたのはパニック障害発症たかどうかである

ニャートさんは過労によってパニック障害発症し、一方で増田ハードワークをくぐり抜け、今でも正規社員で働いている。

では、なぜニャートさんはパニック障害になり、一方でなぜ増田パニック障害にならずに済んだのだろう?

その原因はニャートさんが自分で振り返っている通り、ニャートさんの編集に対する適性がかけていたということだろう。

ストレス耐性や編集業に対する適性がかけていて、結果的にニャートさんはパニック障害発症してしまった。

しかし、それは果たしてニャートさんの責任なのだろうか?

メンタルの強さは人によって違い、それを鍛えるのは難しい。

編集業に適性がないこと自体はニャートさんの責任とは言えない。

ニャートさんに責任があるとすれば自分に合った仕事を選べなかったことにある。

だが、社会経験のない学生自分の適職を選ぶことが、今の就職活動システムで可能とは思えない。

嘘ばかりの会社説明会、ホラを吹く人事、面接官の感性による適当面接……etc

結局のところニャートさんがパニック障害に至り、非正規に転落してしまったのは不幸であるしか自分には思えない

にもかかわらず、この増田はどうもニャートさんがパニック障害になり、「底辺」になったのは自己責任であると考えているように思えるのだ。

それをを示しているのは「転職できるスキルを磨け」という増田アドバイスである

増田スキル自分が身につけていたからこそ、出版業が斜陽になっても他業種へ転職でき、今では年収1000万近く給料をもらっていると述べている

しかし、ニャートさんのキャリア論に対してこのような返答をするのは、ダメだと思う。

不運にも「底辺」になってしまったニャートさんに対して、自分が1000万近く年収をもらっていることを自慢すること自体まずどうなのかと思う。

そして1000万年収をもらえるようになったのは自分に「転職できるスキル」があったからと増田発言するのは、暗にニャートさんが「転職できるスキル」がなかったから「底辺」になってしまったといっているように聞こえる。

転職できるスキル」があればニャートさんは非正規から正規社員に返りざけるのだろうか。

それは違う。

散々ニャートさん自身呪詛に近い言葉非正規社員から正規社員に戻ることの難しさは述べている

http://nyaaat.hatenablog.com/entry/2016/03/16/072339

ニャートさんは編集業以外にも翻訳スキルなども持っている。それにブログ文章を読めば、高い能力を持った人間であることはすぐにわかるはずだ。十分スキルを持った人だろう。

だが、そんな高い能力を持ち、しか一橋大卒というアドバンテージを持ち合わせているニャートさんでさえ正規社員になるのは困難な道なのである

おそらくニートとしての空白期間パニック障害持ちというディスアドバンテージがニャートさんを苦しめているのだろう

しかし、何度も書くか、ニャートさんがニートになったのもパニック障害になったのも彼女自身責任ほとんどない。

それなのに「転職できるスキルがあればいい」とニャートさんのキャリア論に対して返答するのはいくらなんでもあんまりではないか


あともうひとつ不愉快になったのは「身の丈にあった学校に行け」というアドバイスである

これは増田自身がどれだけ自分学歴に支えられているか自覚していないからできるアドバイスなのだろう。

確かに増田受験競争就職競争の厳しい時期に、その狭き門をくぐり抜けた実力者であり、仕事のできる人間なのだろう。

しかし同時に、実力と同じくらい自分幸運に支えられてきたということに気付けていない。

例えば、増田と同じレベル、あるいはそれ以上の実力を持った人間でも一橋に入れなかった人間はいるに違いない。

貧乏で進学できない人、病気勉強できなかった人、不運な事故にあった人、あがり症で実力が出せなかった人…

そういう人間増田より実力があるにも関わらず一橋大学卒という資格を得られなかったのだ。

そしてそのような人たちはおそらく新卒就職活動増田より多いに不利な立場に立たされたに違いない

学歴というのは新卒就職活動において最も武器になる資格である

それをなぜ"ボクのいた出版社なんてそんな有名大学ばかりじゃないどころか短大卒とかもいたよ。"などと言えるのだろうか

増田自分一橋大卒からこそ採用されたということがありうるという可能性を無視している。

就職活動は実力のある人間採用されるとは限らない。

運や相性の要素もある。

仮に増田一橋大学卒業という肩書を持っていなければ、実力があっても新卒就職した会社面接で落とされていたかもしれないという可能性をなぜ考えられないのだろうか?

もちろん「身の丈にあった大学に行かないと退学し、結果的に損をする」のはありうるのかもしれない。

だが、増田の書きぶりはあまり学歴効果無視しているし、不幸で学歴を得られなかった人間に対して失礼じゃないだろうか。

長々と書いたが、結局、増田自分がいかに恵まれていたかに対して鈍感なのだと思う。もちろんそれ自体はそんなに責めることではない。

ただ、不幸によって「底辺」に転げ落ちてしまい、そのことを死ぬほど気にしているニャートさんのキャリア論に対して、自分は実力だけでのし上がったという返答を返すのはどうなのか。

実力があっても人生どうにもならない人はいる。まさにニャートさんはその証明だろう。そういう人間に対して実力があれば何とかなると言ってしまうのは、つまるところニャートさんの不幸は自己責任だと言っているようなものではないか

あのキャリア論を書いた増田は多分ニャートさんの事情についてよく知らずに増田を書いたのだろう

ついでにいえば、あのキャリア自体もニャートさんに向けたものではなく一般論を書いたつもりだったのだろう

しかし、ニャートさんのキャリア論を受けて書かれたキャリア論として読むと、どうしても嫌味に読めてしまう。

記事への反応 -
  • シャイ丸さんという方がいる。 好戦的なキャラでブログを始めた新星だが、でも言葉の端々に人の良さがにじみ出ている人(笑)。 その方がこんな記事を書いていた。 社会人2年目で年...

    • 4日前にニャートさんがキャリア論に関して以下のようなエントリーを書いた。 年収1000万超のキャリア論を一橋卒負け組が自省してみた http://nyaaat.hatenablog.com/entry/2016/04/30/182924 ニャー...

      • http://blog.imalive7799.com/entry/No-More-Depression あの応戦を意識してかかれたのかはわからないが、これがある意味真理にちかいのかもしれない。 ニャートという人はとにかく目の前の仕事を手...

      • メンタルの強さは人によって違い、それを鍛えるのは難しい。 編集業に適性がないこと自体はニャートさんの責任とは言えない。 ニャートさんに責任があるとすれば自分に合った...

    • 興味深かったのでトラバ書かせてもらう。 地頭はあるというのは本当に思う。 あとメンタルの強さ。 メンタルの強さはほとんど生まれ持ったものが100%に近いと思う。 聞いた話で恐...

      • 弁護士って、はっきり自分の意志でなろうと選んだ奴ってどのくらいいるんだろう 親が子供の資質なんて全く考慮せずにその道を選ぶことを強いていたとすると悲劇だよな

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん