2015-09-07

似ているとか似ていないとか最初に言い出したのは誰なのかしら

深津さんのエントリhttp://bylines.news.yahoo.co.jp/takayukifukatsu/20150907-00049112/)は、基本的には佐野氏と委員会の説明をなぞったもので、デザイナーでなくても彼らの説明で「なるほど劇場ロゴのパクりではないのか」と納得した人は少なくないと思っていたので、この内容に対して「なるほどわかりやすい!」と関心している人が多いことに逆に驚いている。

これを読んでも納得いかない人がいるのは、おそらくデザイナーが「似ていない」という言葉を使って反論しているところに理由があるのではないか。万人に納得してもらう説明としては、「似ているが、パクリではない」が正しい。

あのエントリでも書かれているとおり、デザインは装飾ではなく最適解を求める設計なので、限られたパターンであれば結果が似てくることは珍しくない。

ゆえに、色々やった結果が「似てしまう」ことも「悪」とはされないが、同じ見た目のものが氾濫すると混乱を招く(それこそ社会におけるデザイン目的と反する)ので、商標などのルールによってお互いの利益を損なわない形で解決しましょう、というのが現代社会におけるお約束になっている。

からこそ、海賊版など意図的にこのルールを侵し、混乱させ、利益を得ようとする「パクリ行為「悪」なのだ

委員会が「法的には問題がない」と判断したのも、上記のルールにのっとってリェージュ劇場ロゴ商標登録されていなかったことから、「似ている」が「違法ではない」という当然の結論である事実佐野氏の初期案は「似ている」商標があったので修正を行ったと説明されているので、もしリエージュ劇場ロゴ商標登録されていたら、(撤回はされたが)現在エンブレムも「似ている」ことを理由委員会からNGとされていただろう。

当初、デザイナーがこぞって「パクリではない」と佐野氏を擁護した理由は、そういうことだ。エンブレム最終案があのデザインになった課程について、十分納得のいく説明はなされているし、最初から擁護していた人達はそのデザインの良し悪しは別として、コンセプトも含めてなんとなくでも理解していたはずだ。

その上で、なお疑義が残るとすれば、意匠=見た目の問題において「初期案を作るときに“T”の右下に●を置くアイデアチヒョルトからいただいちゃったんじゃないの?」という点だろうか。「9分割のモジュールアルファベット表現する」というアイデアは、言ってしまえばそれほどオリジナリティが高いものではないが、「鼓動のパワー」を表現するという「●」が「T」の右下にあるのはこのエンブレムオリジナリティの一つだといえよう。それが佐野氏が過去に見た展覧会のメインビジュアルに由来するのでは? という疑問が生じたわけだ。だからデザイナー矜持として、原案チヒョルト展のポスター類似の話が出たタイミングで、当初は佐野擁護だったデザイナーの中から批判に転じる人が出たというのも、おかしな話ではない。「(身内として)擁護しきれなくなった」のではなく「初期案のコンセプトの正統性に疑問を感じた」のだ。だが、これも「疑惑」にすぎず剽窃の「事実」は認められていないので、真実は闇の中である

個人的には、佐野氏のエンブレム以外の仕事を見ても、面白いものはあるが独創性に欠けるという感想を抱かざるを得ない。日本広告エンターテイメント世界においてよく見かける、海外で売れているが日本にはまだ入ってきていないものを「いただいちゃう」ようなやり方にどっぷり浸かりすぎてるんじゃないの? と思わないでもない。

もちろん、サンプリング本歌取りという手法クリエイティブを発展させることは確かだし、オマージュパロディによって発揮される作家性は存在するので、そういった行為否定するものではない。だが、それらの手法は「コンテクスト文脈)」に乗った上で初めて効果があるものであるサントリートートバックのイラストの件などはコンテクストも何もなく「いただいちゃった」案件のもので、悪質である。(パンの写真メガネ写真を無断で素材使用したのはまた別の問題だ。)佐野氏の事務所クリエイティブに、こういった姿勢垣間見えることで、オリンピックという大舞台デザインワークを担うのにふさわしいデザイナーであるかどうかを問われてしまうのは仕方がないことだろう。

はいえ、現在の「パクリ批判」のあり方は、その内容や手法において明らかに間違っている。

ここで長々と述べてきたことようなことを理解しているのかいないのか、本質とずれた批判センセーショナルに書きたて、多摩美など佐野氏が関わっている所なら話題性があるとばかりに火をつけて回るnetgeekやまとめサイトの在り様と、それに扇動されるネット民リテラシーのほうが、パクリ疑惑以上に深刻な問題なのではないだろうか。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん