石川優実さんのKuToo運動は、提唱されてからそれなりに時間が経っているのに今でも連日ネットを賑わしています。
これは、良くも悪くもこれまでの社会運動とは違った「火を消さない構造」が含まれている点に特徴があります。簡単に言うと、炎上マーケティングの手法をまとった新たな社会運動のスタイルであり、グレタさんやなでしこ寿司なども多かれ少なかれ同じような構造を持っているように思います。
女性や子供など、「かわいそうランキング」上位に位置する弱者がシンボルであることが重要です。理論派の運動家やキモくて金のないおっさんなどが主張しても同情されません。
②誰が見ても正しいメインの主張
好きな靴を履きたい等の主張は、誰が見ても正しく、実施にデメリットもほとんどありません。他にも女性差別廃止や温暖化対策が必要といった総論に関して反対する人は誰もいないのです。
③穴だらけの付随的な主張
https://twitter.com/KuToo92/status/1139137539845967878
要約すると、パンプスやハイヒールの強制は、性差別・ジェンダーハラスメント/セクハラ/パワハラ/安全配慮義務違反のいずれかに該当するよう法規定を作ってほしい、という内容です。違反した事業主は差別、ハラスメントに該当してしまう、かなり強いニュアンスです。着用時間の上限を設けたり、足の健康状態が悪い場合は着用強制をしてはいけない、といった柔軟性のある内容ではありません。
対象となる職種の定義もないため、オフィスワークや接客業のみならずイベントコンパニオンやラウンドガール、ショービジネス一般、バニーガールからSM嬢まで対象になってしまいます(上記要望書の対象であるパワハラ指針案では正規社員だけでなく非正規社員や派遣労働者も対象に含まれる)。もともとの問題意識は、冠婚葬祭などの会場スタッフだったはずで、たしかにフォーマルやセミフォーマルのお客さんに長時間接するスタッフの服装規定は一考の余地があります。そのあたりにポイントを絞るべきではないでしょうか。一般の会社員で賛同している方も多いようですが、いまどきのオフィスでは、客先と対面しない場合は楽な靴が履けるところが多いのではないでしょうか。
つまりKuTooは「私たちは好きな靴を履きたい」という、しなやかな呼びかけではないのです。そしてまた、グラビアや芸能業界を間近で見てきた人ならではの、見られる職業との両立を考慮した提案でもないのです。
そのあたりも含めて、整合性、一貫性のない主張を石川さんはツイッター上で今も続けています。
当初賛同していた人たちも、途中でこういった穴に気づいて指摘や質問をおこなうようになります。すると、構図としては①弱者の②正当な主張に対して、既得権益者がヒステリックなクソリプをしているように見えてしまいます。実際は②総論賛成③各論反対なのにも関わらず、①弱者をいじめるミソジニストのように見えるのです。そうではないと指摘者が詳しく説明すればするほど、提唱者は孤高のジャンヌ・ダルクを演出することができます。
そして提唱者が③への指摘を認めないスタンスを取り続ける限り、炎上の火はおさまらず、社会運動として認知が広がっていきます。その中で、多忙で深い議論の内容まで理解する暇がない著名人や、深い議論のニュアンスが伝わらない海外メディアにも運動は支持されていきます。
元増田じゃないけど、あの人は良いことも言ってて結果も出しててそこは評価するるものの、ひとつ良いことをしたら他の雑な言動がすべて免罪されるわけじゃない、という認識が多い...