授乳させるくらいなら空腹の子供を泣かせておけとか、店内のトイレを占領してやれって話でもなくて、店から出て授乳室を探して授乳しろって話なんだよね多分。
私は授乳中は電車でグズり始めたら即ケープで隠してくわえさせて静かにさせてたけど、それがダメなら泣くたびに電車から降りて駅のトイレでやってまた乗ってグズったら下りてって繰り返すの?
何を吹きあがってるんだか知らんが
「ん? なんだこれは」
ウサクが気になって案内人に尋ねると、俺たちの考えているものとは違う意図で話を展開させてくる。
「最近は錠剤タイプが人気なくなっているんですよね。やっぱり吸ったり注入したりしたほうが実感湧きやすいのか」
「貧困さ。貧困が原因だよ。相関関係だとか因果だとかは知らないけれども、きっと貧困が全ての元凶なんだ」
要領は得ないが、どうやらこれは薬品らしい。
気になってそのパッケージを手に取り、裏面に書かれた成分を確認する。
まさかと思い、近くに並んでいた他のパッケージも調べてみると、ほとんどが危険な麻薬だった。
なんでこんなものが、こんな大通りの雑貨屋に堂々と売っているんだ。
ウサクがぼそりとつぶやく。
それに対する案内人の答えは予想の範疇ではありつつも、俺たちはそれでも驚愕せざるをえなかった。
「ええ、合法です。というより、『合法』と表現するのも変な話だけれども」
「ああ、でも推奨はしていません。それでも買うなら自由ですが」
「ちょっと待て。推奨していないのに、なぜそんなものを売る?」
戸惑いを隠せない表情で質問をするウサクに対して、案内人は屈託のない表情で答えた。
その店を出て、その後も宿までの道中にある店を回ってみたが、当たり前のように麻薬が出回っていた。
その国には、その国のルールがあるとはいえ、俺たちはどうしても訝しい気持ちがくすぶっていた。
それが一番最初に爆発したのは、やはりというかウサクだった。
案内人の人はまるで言われ慣れているかのように、やれやれと言った反応をする。