2017-01-14

[] #12-2「自由大国

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「ん? なんだこれは」

パッケージデザインを見ても、何の商品か分からない。

ウサクが気になって案内人に尋ねると、俺たちの考えているものとは違う意図で話を展開させてくる。

最近は錠剤タイプが人気なくなっているんですよね。やっぱり吸ったり注入したりしたほうが実感湧きやすいのか」

近くにいた店員も、その話に追従する。

貧困さ。貧困が原因だよ。相関関係だとか因果だとかは知らないけれども、きっと貧困が全ての元凶なんだ」

要領は得ないが、どうやらこれは薬品らしい。

気になってそのパッケージを手に取り、裏面に書かれた成分を確認する。

「……麻薬!?

麻薬一口に言っても多様ではある。

だが、悪い意味ポピュラー名前がそこには羅列されていた。

まさかと思い、近くに並んでいた他のパッケージも調べてみると、ほとんどが危険麻薬だった。

なんでこんなものが、こんな大通り雑貨屋に堂々と売っているんだ。

もしかして……この国では合法なのか?」

ウサクがぼそりとつぶやく

それに対する案内人の答えは予想の範疇ではありつつも、俺たちはそれでも驚愕せざるをえなかった。

「ええ、合法です。というより、『合法』と表現するのも変な話だけれども」

俺たちの理解が追いつかないまま、案内人説明を続ける。

「ああ、でも推奨はしていません。それでも買うなら自由ですが」

ちょっと待て。推奨していないのに、なぜそんなものを売る?」

戸惑いを隠せない表情で質問をするウサクに対して、案内人は屈託のない表情で答えた。

「そりゃあ、“個人自由”だからですよ」


その店を出て、その後も宿までの道中にある店を回ってみたが、当たり前のように麻薬が出回っていた。

自分たちの国では違法とされるものが多く市場に出回っている。

その国には、その国のルールがあるとはいえ、俺たちはどうしても訝しい気持ちがくすぶっていた。

それが一番最初に爆発したのは、やはりというかウサクだった。

「なぜ、こんなもの規制禁止もされていないんだ」

内人の人はまるで言われ慣れているかのように、やれやれと言った反応をする。

「この国が“個人意思”を尊重しているからですよ」

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記事への反応 -
  • 俺たちはとある行事で出し物をやった。 このテの行事に消極的な俺たちは、ウサクが自信満々に監督を申し出たこともあって反対しなかった。 こうして、いわれるがまま出来たショー...

  • ≪ 前 案内人の回答にウサクは困惑する。 理屈が伴っているように見えても、それには隔絶されたものがあるからだ。 ウサクが紅潮する。 火が付いたウサクは、そう簡単に止められ...

    • ≪ 前 テーマ曲:「麻薬アブナイ」 歌:ウサク、マスダ、タイナイ 作詞・作曲:ウサク 麻薬アブナイぜ 体に良くない 色々あるし 医療とかで使うケースもある けど一般人は 気...

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