2014-06-13

勇者魔王討伐を目指す物語

全ての人間を支配しようと進撃を続ける魔王

それに対して必死の抵抗を続ける人類

状況を何とか打開したかった人間の王は特別討伐隊を結成することを決める

その中心人物として選ばれるのが主人公

いわゆる勇者だった

っていう王道物語を改編する遊びを友達とやってたことがある

漫画やらゲームやらの王道展開に飽きてきた時期でもあったので

みんなで色々アイデアを出しあって交換ノートみたいのも作ってた

とくに目的があるわけでもなく、なんとなくなノリでそうなっていったのを覚えてる

だいたい16、7年ぐらい前の話

外道勇者物語

自分とKくん(一番仲良かった子:仮名)で考えた物語は今でも覚えてる

主人公である勇者に、鬼畜&不幸な設定をドンドン付け足していき

どれだけ人の道を外れた主人公物語にできるかを楽しんでいた

外道勇者物語あらすじ

魔王討伐隊を作るために勇者が選ばれる

しかし、勇者に選ばれたのは、なんと死刑囚だった

国王への謀反を企てた罪(実は冤罪)で投獄され、一族を皆殺しにされていた死刑囚

魔王討伐にあたって特別に外に出された彼だったが

裏切りができないように国王から死の呪いをかけられ

魔王を討伐すれば罪を帳消しにするが、逃亡したり裏切ったりすれば即死すると告げられる

そんな死刑囚勇者であったが、もともと随一の切れ者だったこともあって

みるみるうちに戦果を上げて、周囲の信頼を勝ち取っていく

そして言葉巧みに王に取り入ったことで、ついに死の呪いを解かれるのだった

しかし、勇者魔王軍のスパイと化していたのである

勇者魔王軍に取り入り、国王をはじめとした全ての人間虐殺しようと計画していた

さらに、勇者目的国王たちへの復讐だけではなかった

魔王城に眠っているという「破滅の魔導書」を見つけ出し

この世のすべてを破滅させるのが目的だった

ついにそれを見つけ出した勇者破滅魔法を発動させる

魔法によって惑星はド派手に爆散し、すべての生命は消え去るのだった

そして、魔法は周囲の星々も連鎖的に巻き込み宇宙中に広がっていきました

おわり

今考えるとツッコミどころ結構ある内容だけど

モノづくりの楽しさみたいなものを初めて感じた時でもあった

だんだん凝った設定を考えるのが楽しくなっていき

アイデア収集のために色んな本や映画をみるようになったのも覚えてる

Kくんの本気

一年ぐらいすると、自分を含む全員がその遊びに飽きてしまった

でもKくんは違った

ひとり抜け、ふたり抜け、という具合に仲間が減っていく間も彼はその遊びに没頭していた

最終的に、彼はツクールを買ってきて一人でゲーム制作を始めた

完成した彼の作品をいくつも遊ばせてもらったけど、どれもすごく面白かったし

処女作いの一番自分プレイしてほしいと言ってきた時は本当に嬉しかった

そして新作が出る度に練度が上がっていくことに驚かされた

彼は、自分微妙だと言った部分をきちんと修正してきてくれたからだ

プレーヤーの痒い所に手が届くように、何度も何度も細かい改良を重ねてくれた

そんな彼の姿勢に応えなければと思い、自分真剣プレイするようになった

そうこうしているうちにネットの方でも彼の作るゲームは徐々に人気を博していき

フリーゲームコンテストでも入賞をするようになった

Kくんはすごく沢山の人から賞賛の声を浴びるようになっていった

一番のファンである自分にとっては彼が賞賛されることがたまらなく誇らしかった

プロになったKくん

ちなみにKくんは、今ではゲーム業界に身をおいていて

ソーシャルではないゲームの開発にも何本か携わっているらしい

そういうことを最近になって某ゲーム情報サイトで知った

ひとかどのゲームクリエイターとなった彼を見た時は心臓が跳ね上がった

なぜ本人経由で知らされなかったかというと、彼との縁を切ってしまっていたか

Kくんが有名になっていくにつれて、まだ子供だった自分は彼に対して嫉妬を覚えるようになっていった

初めのうちこそ友人として真摯ゲームレビューしてたんだけど

彼の作ったゲームプレイするのが段々と苦痛になっていったし

ゲームの内容よりもKくんのことが頭をちらついてどうしようもなかった

多くの人々から絶賛されるKくん

将来有望ゲームクリエイターとして色んな集まりに呼ばれるようになったKくん

ビジュアル音楽プログラムといった色んな要素を一人で手がけるようになったKくん

ゲーム制作サークル所属して、年上に混じって作品を作るようにもなったKくん

ゲームのファンだったという年上の女の子と付き合い始めたKくん

対して、これといって誇れる能力のない普通の(モテない)子供だった自分

積極性や行動力に乏しかった当時の自分にとっては

Kくんがどうしても羨ましくて妬ましくて、彼に対して卑屈になるしかなかった

そんなこともあって、彼との関係も徐々に希薄ものになっていった

あの頃に戻りたいとは思わないし

今でもKくんと交友を続けていたかったとは思えない

でも後悔はしている

卑屈になるしかなかった当時の自分をなんとかしたいと思ってしま

どうにかして何かしらの生きがいを見出してあげたいと思ってしま

最後

昨年リストラの憂き目にあい再就職先も見つから

ダラダラと無職を続け、誇れるような生きがいを何も持てていなかった自分にとって

彼の名前ネット上で偶然見つけたことは胸を抉られる出来事だった

夢を叶え、輝かしい実績を積み上げてきた彼を直視することはできなかった

そういうのはもう気にならなくなっていたと思ってたけど

ただ単に考えないようにしていただけだったと思い知った

今なら、外道勇者の気持ちが分かる気がする

惑星を丸ごとぶっ壊して全部終わりにしたいというあの気持ち

まさか今になって、自分面白がって生み出したキャラクターの気持ちを味わうことになるとは思わなかった

外道勇者みたいに切れ者ではなく、行動力もなく、ましてや不幸のドン底でもない自分が言えたことじゃないんだろうけど

でも秋葉原通り魔になるつもりは絶対にない

そんなことをして楽しかった思い出にまで泥をぶっかけたくない

そういことをグルグル考えながら、どうしようもない毎日を過ごしている

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