この前「大学受験でTOEFL義務化!」とか言ってたのが立ち消えたかと思ったら、またなんかホッテントリにニュースが入ってたよ。
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20130404-00000471-fnn-pol
このへんと合わせて読むとたいへん興味深いよねーー
http://d.hatena.ne.jp/gorotaku/20130404/1365066300
TOEFLを「義務化」から「活用」までトーンダウンしたけど、ここまでほぼ脈絡もなく、根拠もなく(2つ目のリンク参照)、唐突にTOEFLゴリ押されるとなんかこう、裏を考えたくなっちゃうよね。 自分だけかなーー
これってさ、大学の受験、卒業要件にTOEFLを導入するとかいってるけど、単純に受験料だけ見ても、日本の大学生が2011年で257万人(もーめんどくさいから240万人にするね)、受験料がだいたい2万円とすると、全員が受験、卒業と2回の受験でパスする(そんなことはありえないけれども)としたら、
240万人÷4×2万円×2=約240億円
って計算合ってる? 桁、これで合ってる?って、ど文系の自分がパニックに陥るレベルのお金がアメリカのNPOに入るわけだ。なんてこったい。実際には何度もうける人がいるから、これの数倍にはなる。
センター試験の予算が100億円くらいだそうなので、まあ軽くその規模を上回るわけですね。
これだけでもアメリカの外圧を邪推するのに十分だとは思うんだけど、この自民党のTOEFLゴリ押しはやっぱりTPPとの関連で考えるべきだと思う。スピーキングスピーキング言ってるけど、コミュニケーション能力をはかる試験は他にもあるでしょう、と。IELTSとかさー ていうか英検だってスピーキングあるじゃん? そもそも100億円以上もかけるんなら、自前で英語の試験つくれるでしょーよ、と。
じゃあなんでTOEFLなのか。それは、これがアメリカの試験だからだよね。つまり、アメリカの基準で英語能力をはかります、と。
歴史的に考えてみても、新しい共同体(国民国家とか、国家間の共同体とか)作るときには、まず「言語」を統一するっていうのが基本なんだよね。近代だけで考えても、まずフランス革命後に「近代フランス語」をつくる努力が行われているし(ドイツもグリム兄弟ががんばったよねー)、あるいは最近で言えばEUが創設されるときもこれが大きな問題だったわけだ。何語を共通語にする?と。で、結局、全部を共通語にすることにしたんだけど、そうすると、それぞれの言語の習得っぷりにも共通の基準が必要になる。A国でB国人が働くとき、A国語がこれくらいできなきゃいけませんよーっていう基準と、B国でA国人が働くとき、B国語がこれくらいできなきゃいけませんよーっていう基準が違ったら困るわけね。これが許されたら、ある種の障壁をそれぞれの国が作ることが可能になっちゃって、地域共同体つくった意味がないからね。で、それぞれの国でバラバラだった、その国の言葉を外国語として学ぶ時の基準とかシステムとかが共通化されていったんですね。たとえば「ヨーロッパ言語共通参照枠」とかでググると出てくるよ(わかりにくい訳語ですよねーー)
さて、まあそんなことを思い出してみると、アメリカが日本政府に「TOEFL導入しろ」って圧力かけているっていう仮説も、まあ、アメリカを中心とした地域あるいは経済共同体を作りたいからだと考えれば、ありそうな話だと思うのです。EUは一応他言語主義をベースにしているから、マイノリティの言語にも生き残る道はあるけれど、TPPって要するにアメリカ中心の経済圏をつくる構想だよね?(建前は違うかもしれないけど) そしたら「アメリカの英語」を共通語にっていう圧力かけられてもおかしくない。アメリカの英語の試験の影響力が強まるということは、アメリカの英語の影響力が強まるということでもあり、その影響力の強さはまたアメリカの地政学的な影響力の強さと裏表の関係にある。(そもそも英語が世界共通語になったのは、大英帝国の覇権→アメリカの経済/軍事大国化の影響だよね。まあ、それだけではないにしても)
ちょっと強い言い方をすれば、これはある種の「侵略」だ。この言い方が強すぎるとしたら、言い換えよう、「これからやってくる侵略の地ならしだ」と。
英語って「アメリカの英語」だけじゃないんだよねー イギリスも、カナダも、オーストラリアも、インドも、フィリピンも、公用語としている国だけでもいろいろあるしさ、そもそも、もはや「世界共通語」になっていて、非ネイティブが英語を話すことのほうが多い勢いだ。「ネットの共通語」でもあるしね。グロービッシュという造語もできたくらい。ほら、あれだ、古代アジアにおける「漢語」みたいな?
そんななかで「アメリカの英語試験」であるTOEFLを自民党が(たいした根拠もなく)ゴリ押すとしたら、やっぱりそれはアメリカに対する「外交的配慮」だと思うんだよね。
それでいいんすかね。
日本人が使うんだから、日本の基準で英語の試験作ればいいんですよ。その試験の有用性が低いんなら、それを改良していけばいい。「日本人が話して伝わる英語」は必ずしも「アメリカの英語」とは限らない。
これって、本来の保守層からしたら、立派な「売国」だと思うんですけど。てか、日本語守れや。むしろTPPの共通語に日本語入れるくらいの強気の交渉姿勢でお願い致します。(弱小言語は放っておくと死滅するのもまた歴史が証明しているわけで)
外国の作った試験を自国の教育に公的な形で組み込むとか、本当に正気の沙汰とは思えない。この場合はしかも、いちNPOが作っている試験だ。その試験に対しては、一体誰が責任をとる...
普通に反対の声は出てると思うが。