未だにこんな陳腐な話するか?と少し腹が立ってブコメ非公開だったので酒の勢いで殴り書きしてみる。
なんて言うか現役電機メーカーのエンジニアたる俺からしたら、決定的に現場の状況を知らない。
最近絶不調の電機業界論に決定的に欠けているのが、エンジニアの視点だと思うわけですよ。
フラッシュメモリの竹内先生とか、発言するエンジニアが居ない訳じゃないけれども、
彼の言説も、『ポジショントークか?』と思える部分が多々あって。
東芝出身で、今現在も企業と共同研究をしている竹内氏が現場を知らないはずがないし、
自分自身、NEセミナーや、講演等を通して部分的に氏を知っているだけに違和感を感じる。
大前提としてエンジニアにはパブリックな場で発言するとと会社に不利益をもたらす情報も
多々あるわけで大手メーカーで意志決定できるポジションにいる人の話は絶対に出てこない。
と言うことで、勝手ながら評論家たちよりは真実を知っている折れ様が
サイレントマジョリティたるエンジニアを代表して現場の視点を述べてやる。
経営の重要性なんて、偉そうに言ってるけど、すでにみんなよく知っているって。
俺が大学生をしていた10年くらい前からすでに経営の重要性が説かれていたし、
産学連携イノベーションセンターみたいなのも流行で、うちの大学にもあった。
で、選択科目として、MBA的な授業もやってた。
おもしろがってたくさん履修してたもんだ。単位取りやすかったし。
当時出たばかりの任天堂のDSとソニーのPSPを題材にした、枯れた技術の水平思考とか、
ユニクロを例にとってSPAとか水平分業とか。フラット化する世界とか。
そんなトピックスをやってたね。
そんな俺が電機メーカーに入社して、事業部で知った事実は、評論家たちの意見とは違う。
ビジョンがないとかグローバリゼーションに乗り遅れたとか、そんな大げさな問題じゃなくて。
結論から言うと、
純粋に現場の開発能力が落ちて、まともなものが作れなくなってきてる。
それも、ここ数年で急激に。
台湾企業のODMを増やしているのも、コストや水平分業とかじゃなくて、
プロパーの設計よりもレベルが高いから。とか。あまり書くと問題になるかもしれんな。
他のメーカーにいる友人たちといろいろ話して感じたコンセンサスがこれ。
AppleやSamsungはすごい企業で特別なのかもしれない。
勝てないのは仕方ないのかもしれない。だけど、LGやAcerといった所にも勝ててない。
経営がダメでも、技術が今でも一流なら、さすがにこのあたりとは良い勝負が出来るのじゃないのか?
90年代だって、MicrosoftやIntelにはかなわなかったけど、今より良かったわけで。
その開発力の原因は何かというと、一つには開発現場のいびつ人員構成に構造的な問題があるんじゃないかと思うわけで。
まず、2000年代半ばの好景気時に大量採用で入った人間が多いこと。総じて彼らのスキルは低い。
同年代の韓国・台湾のエンジニアよりかなり低い。(折れもその世代なのであまり偉そうなことは言えないが。)
彼らも30歳前後の年齢となり、ここ2,3年で発売された家電のかなりの部分にこの世代が関わっていると言うこと。
次にその製品開発の統括をしているリーダーはバブル世代の40代が中心になっていると言うこと。
さらに、彼らが大学で学び、若手としてスキルを磨いた時の知識が時代遅れになっていると言うこと。
そして、そんな現場をかろうじて支えているのが氷河期世代の30代。
デジタル家電普及の過渡期に入社し、技術の発展と共に育ってきた世代。
リーダーの補佐から若手の尻ぬぐいまで、この世代がいなければ現場が破綻する。
ただし、人数が少なく、常に激務。あらゆる所から引っ張りだこ。
いかにスキルがあろうとも、細部まで目が行き届くわけではない。
この世代が他の世代のフォローに回れば回るほど、製品完成度は少しずつ下がっていき・・・
余談だけど、地味に響いていると思うのが、社内文章の電子化。
自社開発の製品の設計資料は電子化されているが、セキュリティ対策で、社外から参照できなかったりする。
ベテランエンジニアが飲みの席で『おれば若い頃は図面を持って帰って勉強したものだ』
とか言うけれど、最近はこんな事は出来ない。
しかもなぜかアクセス権の問題で、入社前に作られた製品のドキュメントが読めなかったりとか。
書き出すときりがないけれども、眠いし終わらないので中途半端だけどここまで。
気が向いたら、明日続きを書くかも。
この人鋭いこと言うこともあるんだけど技術関係になると途端に目が曇るんだよね。 専門が違うから仕方がない。