2021-04-01

テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン

趣旨労働者情報通信技術を利用して行う事業場外勤務(以下「テレワーク」という。)には、オフィスでの勤務に比べて、働く時間場所を柔軟に活用することが可能であり、通勤時間の短縮及びこれに伴う心身の負担の軽減、仕事に集中できる環境での業務実施による業務効率化につながり、それに伴う時間労働の削減、育児介護仕事の両立の一助となる等、労働者にとって仕事生活調和を図ることが可能となるといったメリットがある。また、使用者にとっても、業務効率化による生産性の向上にも資すること、育児介護等を理由とした労働者の離職の防止や、遠隔地の優秀な人材の確保、オフィスコストの削減等のメリットがある。テレワークは、ウィズコロナポストコロナの「新たな日常」、「新しい生活様式」に対応した働き方であると同時に、働く時間場所を柔軟に活用することのできる働き方として、更なる導入・定着を図ることが重要である。本ガイドラインは、使用者が適切に労務管理を行い、労働者安心して働くことができる良質なテレワークを推進するため、テレワークの導入及び実施に当たり、労務管理を中心に、労使双方にとって留意すべき点、望ましい取組等を明らかにしたものである。本ガイドラインを参考として、労使で十分に話し合いが行われ、良質なテレワークが導入され、定着していくことが期待される。2 テレワーク形態テレワーク形態は、業務を行う場所に応じて、労働者の自宅で行う在宅勤務、労働者の属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用するサテライトオフィス勤務、ノートパソコン携帯電話等を活用して臨機応変選択した場所で行うモバイル勤務に分類される。テレワーク形態ごとの特徴として以下の点が挙げられる。① 在宅勤務通勤を要しないことから事業場での勤務の場合通勤に要する時間を柔軟に活用できる。また、例えば育児休業明けの労働者が短時間勤務等と組み合わせて勤務することが可能となること、保育所の近くで働くことが可能となること等から仕事と家庭生活との両立に資する働き方である。② サテライトオフィス勤務自宅の近くや通勤途中の場所等に設けられたサテライトオフィスシェアオフィスコワーキングスペースを含む。)での勤務は、通勤時間を短縮しつつ、在宅勤務やモバイル勤務以上に作業環境の整った場所就労可能な働き方である。③ モバイル勤務労働者自由に働く場所選択できる、外勤における移動時間を利用できる等、働く場所を柔軟にすることで業務効率化を図ることが可能な働き方である。このほか、テレワーク等を活用し、普段オフィスとは異なる場所余暇を楽しみつつ仕事を行う、いわゆる「ワーケーション」についても、情報通信技術を利用して仕事を行う場合には、モバイル勤務、サテライトオフィス勤務の一形態として分類することができる。3 テレワークの導入に際しての留意点(1) テレワークの推進に当たってテレワークの推進は、労使双方にとってプラスものとなるよう、働き方改革の推進の観点にも配意して行うことが有益であり、使用者が適切に労務管理を行い、労働者安心して働くことのできる良質なテレワークとすることが求められる。なお、テレワークを推進するなかで、従来の業務遂行方法労務管理の在り方等について改めて見直しを行うことも、生産性の向上に資するものであり、テレワーク実施する労働者だけでなく、企業にとってもメリットのあるものであるテレワークを円滑かつ適切に、制度として導入し、実施するに当たっては、導入目的対象業務対象となり得る労働者範囲実施場所テレワーク可能日(労働者希望、当番制、頻度等)、申請等の手続費用負担労働時間管理方法中抜け時間の取扱い、通常又は緊急時の連絡方法等について、あらかじめ労使で十分に話し合い、ルールを定めておくことが重要である。(2) テレワーク対象業務例えば、いわゆるエッセンシャルワーカーなどが従事する業務等、その性格テレワーク実施することが難しい業種・職種があると考えられるが、一般テレワーク実施することが難しいと考えられる業種・職種であっても個別業務によっては実施できる場合があり、必ずしもそれまでの業務の在り方を前提にテレワーク対象業務を選定するのではなく、仕事内容の本質的見直しを行うことが有用場合がある。テレワークに向かないと安易結論づけるのではなく、管理職側の意識を変えることや、業務遂行方法見直し検討することが望ましい。なお、オフィスに出勤する労働者のみに業務が偏らないよう、留意することが必要である。(3) テレワーク対象者等テレワークの契機は様々であり、労働者テレワーク希望する場合や、使用者が指示する場合があるが、いずれにしても実際にテレワーク実施するに当たっては、労働者本人の納得の上で、対応を図る必要がある。また、短時間労働者及び有期雇用労働者雇用管理改善等に関する法律平成5年法律第76 号)及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者保護等に関する法律昭和60年法律第88号)に基づき、正規雇用労働者非正規雇用労働者との間で、あらゆる待遇について不合理な待遇差を設けてはならないこととされている。テレワーク対象者を選定するに当たっては、正規雇用労働者非正規雇用労働者といった雇用形態の違いのみを理由としてテレワーク対象から除外することのないよう留意する必要がある。 派遣労働者テレワークを行うに当たっては、厚生労働省ホームページ掲載している「派遣労働者等に係るテレワークに関するQ&A」を参照されたい。 雇用形態にかかわらず、業務等の要因により、企業内でテレワーク実施できる者に偏りが生じてしま場合においては、労働者間で納得感を得られるよう、テレワーク実施する者の優先順位テレワークを行う頻度等について、あらかじめ労使で十分に話し合うことが望ましい。 また、在宅での勤務は生活仕事の線引きが困難になる等の理由から在宅勤務を希望しない労働者について、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務を利用することも考えられる。特に新入社員中途採用社員及び異動直後の社員は、業務について上司や同僚等に聞きたいことが多く、不安が大きい場合がある。このため、業務を円滑に進める観点からテレワーク実施に当たっては、コミュニケーションの円滑化に特段の配慮をすることが望ましい。(4) 導入に当たっての望ましい取組テレワークの推進に当たっては、以下のような取組を行うことが望ましい。・ 既存業務見直し点検テレワークをしやすい業種・職種であっても、不必要な押印や署名、対面での会議必須とする、資料を紙で上司説明する等の仕事の進め方がテレワークの導入・実施障壁となっているケースがある。そのため、不必要な押印や署名廃止書類のペーパーレス化、決裁の電子化オンライン会議の導入等が有効である。また、職場内の意識改革をはじめ、業務の進め方の見直しに取り組むことが望ましい。・ 円滑なコミュニケーション円滑に業務遂行する観点からは、働き方が変化する中でも、労働者企業の状況に応じた適切なコミュニケーションを促進するための取組を行うことが望ましい。職場と同様にコミュニケーションを取ることができるソフトウェア導入等も考えられる。・ グループ企業単位等での実施検討職場雰囲気等でテレワーク実施することが難しい場合もあるため、企業トップ経営層がテレワーク必要性を十分に理解し、方針を示すなど企業全体として取り組む必要がある。また、職場での関係取引先との関係により、一個人、一企業のみでテレワークを推進することが困難な場合がある。そのため、グループ企業や、業界単位などを含めたテレワーク実施の呼びかけを行うことも望ましい。4 労務管理上の留意点(1) テレワークにおける人事評価制度テレワークは、非対面の働き方であるため、個々の労働者業務遂行状況や、成果を生み出す過程で発揮される能力を把握しづらい側面があるとの指摘があるが、人事評価は、企業労働者に対してどのような働きを求め、どう処遇に反映するかといった観点から企業がその手法を工夫して、適切に実施することが基本である。例えば、上司は、部下に求める内容や水準等をあらかじめ具体的に示しておくとともに、評価対象間中には、必要に応じてその達成状況について労使共通認識を持つための機会を柔軟に設けることが望ましい。特に行動面や勤務意欲、態度等の情意面を評価する企業は、評価対象となる具体的な行動等の内容や評価方法をあらかじめ見える化し、示すことが望ましい。加えて、人事評価評価者に対しても、非対面の働き方において適正な評価実施できるよう、評価者に対する訓練等の機会を設ける等の工夫が考えられる。また、テレワーク実施している者に対し、時間外、休日又は所定外深夜(以下「時間外等」という。)のメール等に対応しなかったことを理由として不利益な人事評価を行うことは適切な人事評価とはいえない。なお、テレワークを行う場合評価方法を、オフィスでの勤務の場合評価方法区別する際には、誰もがテレワークを行えるようにすることを妨げないように工夫を行うとともに、あらかじめテレワーク選択しようとする労働者に対して当該取扱いの内容を説明することが望ましい。(テレワーク実施頻度が労働者に委ねられている場合などにあっては)テレワーク実施せずにオフィスで勤務していることを理由として、オフィスに出勤している労働者を高く評価すること等も、労働者テレワークを行おうとすることの妨げになるものであり、適切な人事評価とはいえない。(2) テレワークに要する費用負担の取扱いテレワークを行うことによって労働者に過度の負担が生じることは望ましくない。個々の企業ごとの業務内容、物品の貸与状況等により、費用負担の取扱いは様々であるため、労使のどちらがどのように負担するか、また、使用者負担する場合における限度額、労働者使用者費用請求する場合請求方法等については、あらかじめ労使で十分に話し合い、企業ごとの状況に応じたルールを定め、就業規則等において規定しておくことが望ましい。特に労働者情報通信機器作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、当該事項について就業規則規定しなければならないこととされている(労働基準法昭和22年法律第49号)第89条第5号)。在宅勤務に伴い、労働者個人契約した電話回線等を用いて業務を行わせる場合通話料インターネット利用料などの通信費が増加する場合や、労働者の自宅の電気料金等が増加する場合、実際の費用のうち業務に要した実費の金額を在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえて合理的客観的計算し、支給することも考えられる。なお、在宅勤務に係る費用負担等に関する源泉所得税課税関係については、国税庁作成した「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」(令和3年1月15日)を参照されたい。(3) テレワーク状況下における人材育成テレワークを推進する上で、社内教育等についてもオンライン実施することも有効であるオンラインでの人材育成は、例えば、「他の社員営業の姿を大人数の後輩社員オンラインで見て学ぶ」「動画にしていつでも学べるようにする」等の、オンラインならではの利点を持っているため、その利点を活かす工夫をすることも有用である。このほか、テレワーク実施する際には、新たな機器オンライン会議ツール等を使用する場合があり、一定スキル習得必要となる場合があることから特にテレワークを導入した初期あるいは機材を新規導入したとき等には、必要研修等を行うことも有用である。また、テレワークを行う労働者について、社内教育研修制度に関する定めをする場合には、当該事項について就業規則規定しなければならないこととされている(労働基準法第89条第7号)。(4) テレワーク効果的に実施するための人材育成テレワーク特性を踏まえると、勤務する時間帯や自らの健康に十分に注意を払いつつ、作業能率を勘案して、自律的業務遂行できることがテレワーク効果的な実施に適しており、企業は、各労働者自律的業務遂行できるよう仕事の進め方の工夫や社内教育等によって人材の育成に取り組むことが望ましい。併せて、労働者自律的に働くことができるよう、管理職による適切なマネジメントが行われることが重要であり、テレワーク実施する際にも適切な業務指示ができるようにする等、管理職のマネジメント能力向上に取り組むことも望ましい。例えば、テレワークを行うに当たっては、管理職へのマネジメント研修を行うことや、仕事の進め方として最初に大枠の方針を示す等、部下が自律的仕事を進めることができるような指示の仕方を可能とすること等が考えられる。5 テレワークルール策定と周知(1) 労働基準関係法令適用労働基準法上の労働者については、テレワークを行う場合においても、労働基準法最低賃金法昭和34年法律第137 号)、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)等の労働基準関係法令適用される。(2) 就業規則の整備テレワークを円滑に実施するためには、使用者は労使で協議して策定したテレワークルール就業規則に定め、労働者に適切に周知することが望ましい。テレワークを行う場所について、労働者が専らモバイル勤務をする場合や、いわゆる「ワーケーション」の場合など、労働者の都合に合わせて柔軟に選択することができる場合には、使用者許可基準を示した上で、「使用者許可する場所」においてテレワーク可能である旨を定めておくことが考えられる。なお、テレワークを行う場所の如何に関わらず、テレワークを行う労働

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