2021-03-24

報ステCMについて考えてみた

普段日記など書かない人間である

ツイッターは大好きだけれども毎日呟くというよりかは延々と目に飛び込んでいる文字情報を楽しむただの活字中毒なのだ

ただ、今回、まとまった文章が書きたくなったのは。

報ステ炎上CM初見ではなんだか気分が悪いけれど、何が批判されるべきなのかさっぱりわからなかったかなのだ

一部の文言を切り取って批判している人にもなんだか頷ききれないし、かといって擁護している人にもなんだか頷けなくて、それなら一から自分で、納得がいくまで考えてみようと思ったのだ。

からこれは、普段映像読解力ゼロ人間が、自分の考えをまとめるためにつらつらと思考内容を垂れ流したものである

■まず、CMの内容の振り返り

若い女性がカメラを覗き込みながら

「ただいまー!」

そのまま彼女は正面の椅子に座り、カメラに向かって話し出す。

「なんかリモートに慣れちゃってたらさぁ、ひさびさに会社行ったらちょっと変な感じしちゃった~。

 会社の先輩、産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど、もうすっっごいかわいくって。

 どっかの政治家が「ジェンダー平等」とかってスローガン的にかかげてる時点で、え、何それ

 時代遅れーって感じ。

 化粧水買っちゃったの~! もうすっごいいいやつ~。それにしてもちょっと消費税高くなったよね。

 でも国の借金って減ってないよね?

 あ、9時54分!ちょっとニュース見ていい?」

ここでテロップ

「こいつ報ステみてるな」

画面切り替わり

報道STATION

若干抜けや誤字などはあるかもしれないが、概ねこんな感じだと思う。

最初感想はこれだった

……え、何が言いたいのコレ?

■まずはシチュエーションを考えてみる

映像読解力の低い私は、まず舞台設定から考えてみたい。

場所は「ただいま!」と言ってるところから、どう考えても家である

ただ、家にいる相手に話しているにしては、なんだか視線のやり方がおかしい気がする。

ずっとカメラに向かって固定なのだ。在宅の家族と話しているのならば、カメラ(=視線)がある程度

動かなければ不自然だ。

しかも、最後カット、「ちょっとニュース見ていい?」と話し相手にわざわざ断っている。

同居の家族であれば、わざわざ時間で区切って「ニュース見ていい?」などと聞くはずもないし、

ほかの番組を見ているチャンネル権を渡してほしいだけであれば、リモコンを持って聞くのが自然であるような気がする。

ということは、相手は「固定の場所を覗き込まなければコミュニケーションが十全に取れない状況」であり、同席していない。

ZOOMなどを利用して話をしていると考えるのが自然だろう。

実際話の冒頭が「リモートに慣れちゃったらさぁ」であることからも、これがリモートでのコミュニケーションであるということ

示唆しているのだろう。

■誰と話をしているのか

さて、彼女が話している相手は誰なのだろう。

まず、「ただいま」と冒頭で彼女が言っているということは、かなり親しい関係だろう。

帰宅してすぐに通話をつなぐ。つないででも話がしたい。

親友」「恋人「家族」

それくらい親しい関係を想起させる話し方だ。

ここで相手性別に注目しよう。彼女の話し相手男性なのか女性なのか。

一つ目のヒントになるのはテロップだ。CM最後のほうで出る「こいつ報ステ見てるな」のテロップ

明らかに彼女の話し相手思考だろう。

さて、もちろん女性同士も気の置けない関係であれば、相手のことを「こいつ」と頭の中で考えることは

あるだろう。ただ、その場合はどちらかというとコミカルな突込みとしてあえて使う乱暴言葉という

ニュアンスが強く、一般的には男性の方がよく使う言葉、という印象はある。

ただ、まだ断定はできない。

二つ目のヒントは、「彼女が何言ってるか分からないこと」だ。

この「彼女が何を言ってるか分からない」というのは、私のこのCMに対する個人的感想でもあるが、

どう考えてもこのCM、「彼女の言いたいことの趣旨」がわからないように編集されているとしか思えない

である

なにせ、「ただいま→リモートワーク→先輩の赤ちゃんかわいいジェンダー平等というスローガン

時代遅れ化粧水買った→消費税高くなった→国の借金減らない」である。びっくりするほど脈絡がない。

ここで、よく言われる男女の言説について思い起こしてみたい。

「女の話は脈絡がない。オチがなくてつまらない」

この言説が正しいかどうかは置いとくにしても、このCM編集意図を見る限り、あえて「男性から見た

女性のつまらない話」の形が強調されているように見えるのだ。

彼女が話している相手女性だと仮定してみよう。女性同士の会話が端から聞いていて脈絡がないのは、

話している片方の主体が次々と話題を入れ替えるのではななくて、「そういえば私の友達がさー」等と

双方が、相手の話を一度受け止めた後で、それを鍵に違う話をし始めるからというのが基本だ。

CM女性の話し方はあまりにも一方的だ。ということは、話を聞く側は一方的な話をただふんふんと

聞いていて、話をする女性側はたいしたリアクションがなくてもこんなものだと気にせずに話し続けている

ことになる。

もちろん上記の推測は決定的なものではないし、この思考自体が男女に対するステレオタイプ

とらわれたものだと言われればそうなのかもしれないが、やはりこの話し相手というのは「男性」と

仮定するのがしっくりくるという気がする。

話を戻して、「非常に親しい」「男性」となれば、やはり自然に浮かんでくる彼女の話し相手は「彼氏

であろう。親子関係にもよるのだろうが、「家に帰るなり通話をつないで」「化粧水の話までする」親子

関係というのはちょっと想像がしがたい。

ということで、あまりにも長くなったが、この後はこのCMシチュエーション

恋人リモート通話する女性」の話として進めていきたい。

彼女の話の内容について

ではやっとシチュエーション仮定がある程度済んだところで、彼女が話している内容について言及

していきたい。

まず、全体の会話の構造はすべて同じだ「脈絡のない日常会話→ニュース意識したコメント(ただし

感想感覚的で浅い)」である

この流れを何度か繰り返すことで、カメラ相手は「あ、こいつ報ステみてるな」と気づく訳である

彼女感想が浅いことについて

ニュースに対する彼女感想は、基本的感覚的で浅い。

「どっかの政治家が「ジェンダー平等」とかってスローガン的にかかげてる時点で、え、何それ

 時代遅れーって感じ」

消費税ちょっと上がったんだって?でも国の借金は減ってないんだよね?」

基本的ニュースを観た後で、たとえばその後内容について調べたり、突っ込んで思索した様子が

なさそうなコメントだ。彼氏との会話でそんなに難しい議論をふっかける必要があるかといえば

別にないのだが、「ニュースについて言及しているのに頭を使ってなさそうなコメント」の連発は

この後にくるテロップ「あ、こいつ報ステみてるな」の中で使われている「こいつ」という、

相手に対する見下しのニュアンスが入った二人称への違和感を緩和させる効果を生じさせている。

・「ジェンダー平等」に関するコメント解釈

これについては、ネットで見ていると、大まかに言って2通りの解釈が出ていて、

「どっかの政治家が「ジェンダー平等」とかってスローガン的にかかげてる時点で、え、何それ

 時代遅れーって感じ」

ジェンダー平等というスローガン時代遅れダサい

ジェンダー平等というスローガンを掲げている政治家存在しなければならない日本の現状が

 時代遅れダサい

と、まるっきり逆の解釈をされているようなのである

このCM擁護する人は②の解釈採用しているケースが多いようだし、批判している人は①の

解釈で怒っているようだ。

この一文だけを見るとどちらにもとれるような気がするので、今まで考えてきた中で出てきた、

今回のCMの描き方についてざっくりおさらいしたい。

彼女の話し相手推定男性恋人で、彼女のことを心のなかで「こいつ」と呼んでいる

彼女の話は脈絡がなく何を言ってるのか分からない(女のつまらない話)。

彼女ニュース話題をちょいちょい挟むが、その感想思索論理痕跡が見えず感情的で浅い

そしてもう一度あのセリフを読んでみよう。

……やはり、ここまでの描かれ方からして、②の解釈をするというのはちょっと無理があるんじゃないだろうか。

あのセリフだけなら、文脈によっては②の解釈はできたかもしれないけれど、ここまでの彼女の描き方に、

まりに悪意のある女性ステレオタイプと、それを上から目線で眺める男性存在を感じるのだ。

①の解釈とすれば、当然それは失礼な話である

日本ジェンダーギャップ指数を考えればジェンダー平等もっともっとスローガンとして掲げられなければ

ならないし、それを時代遅れと称してしま感覚意味不明だ。あろうことか、そんな感想を「女性感想として」

主人公に言わせるというこのCM構造には、ほかでも批判されている通り「悪意」を感じる。

ちなみに、「これは産休明けで子供を連れて出社できるような、社会制度が進んでいる未来の話だから彼女

時代遅れ』なんて言ってるのだ」というミラクルな主張も見かけたが、さすがにそう解釈するにはCM側の

説明が足りなさすぎるし、わざわざリモート恋人日常会話を楽しんだり仕事をしたりするシチュエーション

というのは、やはり今の世相を反映しているものだとみるべきだろう。

さらについでに言えば、「育休」ではなく「産休」あけで赤ちゃんを連れてきた「先輩」も、文脈から考えるに

女性であろう。男性側の産休制度自体が現時点で始まっておらず、現状ならば、会社独自制度がある場合

のぞき男性は「育休」のはずだ。

産休」が「あけて」子供会社に連れてくる……?ということは、仕事がはじまっているのに職場子供

連れてくる……?もちろん制度が整っていれば悪いとは言わないけれど、まともに仕事が進むとは思えないし

保育園には入れないの?どんなシチュエーション

と現状の日本会社組織の状況を考えると無理があるなという感想も抱いてしまった。

ということで、死ぬほど長くなったけれど、一から考えてみたらやっぱり報ステCM、私は燃えて当然だと思う。

っていうか、このCM何が言いたかったんだろう。

「より深く、よりカラフルに」というキャッチコピーCM,完全に乖離してて、どうしたの?という感じだ。

動画ユーチューブからすでに削除されているらしいけど、ほかでも言われている通り、

どういう意図で、どういう構造でこういうCMが生まれたのかということを、報道機関であるならば

きっちりと検証して報道してほしいところ。

それをしてくれるなら何年かぶりテレビを見ることもあるかも……しれない。

ああすっきりした。

  • 普段、日記など書かない人間である。 ツイッターは大好きだけれども毎日呟くというよりかは延々と目に飛び込んでいる文字情報を楽しむただの活字中毒なのだ。 読んでないけど、...

  • 話の脈絡のなさは女性らしさを表している、というのはちょっと考えすぎでは。単に場面場面をぶつ切りして繋げただけ、という印象を持ったけど。 恋人とのzoom中という説は説得力ある...

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