はてなキーワード: Your songとは
20年近く経った今でもたまに思い出す。中3のときのこと、塾が終わった帰りだった。
そのころ通っていた塾は地元の駅前で、帰り道はいつも駅を北口から南口に通り抜けていって母の迎えの車を待つのが常だった。塾には友達がいないわけじゃなかったけど、帰り道は方向が違っていたのでいつもひとりだ。
その日もいつものように駅を通り抜けようとしたら、珍しくストリートライブをやっている人がいた。男の人がひとり通路に座り込んで、ギターを弾きながら歌っている。知っている曲、というか、当時の自分の好きな曲だった。LOVE PSYCHEDELICOの「your song」。姉がCDを持っていて、よく借りて聴いていた。ギターの音は閑散とした駅の構内に響き渡って、気持ちが良かった。歌声についてそこまで明瞭には覚えていないが、もっと聞きたいと思った記憶はあるのでたぶんそれなりに上手だったんだろう。
立ち止まってそれを聞いて、その曲わたしも好きなんですって伝えられたらいいな、と思ったけど、思っただけだった。歩みをすこし緩めたくらいで、立ち止まることもしなかった。
だってほら、ひとりで聴くのも恥ずかしいし、母がもう迎えに来るから。中学生の女の子が夜中(時刻は21時を過ぎている)に知らない大人の男性に声かけるとか、いかにも危ない。母は絶対に心配する。言い訳をたくさん心に浮かべながら、駅を南口へ抜ける。駅の外に出たら、歌声はもう聞こえなかった。
我ながらつまらない人間だと思った。この先もこんなことばっかりなんだろうかと思って、変に苦しかった。
弱い人は好きなものを好きと言うことも許されないんだろうか。
心配性の母を意味もなく恨んだ。仕事が忙しいせいもあってか、彼女はリスクを回避したがる。飼っている猫が車に轢かれたら嫌だからと家に閉じ込めるような人なのだ。猫はずっと外に出たがっているのに。私も猫と一緒だった。危険に会う可能性のある行動は全部嫌な顔をされて、反抗する気力も湧かない私は諾々と従った。全てを理屈で判断する母に反抗する手段が見つからず、自分の好奇心を閉じ込めた。
私が自分の気持ちで自分の行動を決められるようになったのは、その後5年以上経ってからだ。大学で文学部に入って、いろんな人からいろんな話を聞いて母の言う理屈以外の言葉で世界を見ることができるようになって、それからようやく息ができるようになっていった。周りより精神的に幼くてずいぶん馬鹿にされたけど、じっさい馬鹿だからそれでいいやと思った。なにより、自分も他の人と同じように行ってみたいところに行ったりやってみたいことをしたりしていいんだ、と思えた開放感に勝るものはなかった。そんな無邪気さを許してくれる人が周りにいてくれて、楽しかったし幸せだった。
好きなものを好きって言えないから弱いままだったんだな、と気がつけた。きっと中学生の頃も、母相手に「私はこれが好き」とそう言えればきっと少しは違ったんだろう。
いまはインターネットが普及したので、知らない人にも好きって言いやすい良い世界だと思う。知らない人の危険さは変わらないけど、少なくとも今すぐどこかに連れ去られるような心配はしなくていい。そして、知らない人同士でも同じものを好きって言い合えるのは幸せだとみんなが知っている。ほんとうに良い世界だと思う。
おばさんの思い出供養話でした。ここまで読んでくれた人、どうもありがとう。
エルトン・ジョンがその栄光の影で、ドラッグや酒に溺れお世辞にも幸福とは言えない状態を経験し、そこから立ち直る様を描いたお話で、『ボヘミアン・ラプソディ』(監督も同じだしね)や『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』とかそんな流れの映画だ。
こういった類のストーリーを見聞きしたとき僕は、多くのファンがいても孤独を感じるんだなとかどれだけお金があっても愛は手に入らないものなのかなといったぼんやり浅薄な感想に終始していた。
でもこの映画のエルトン・ジョンを見て彼らがなぜ孤独に取り憑かれて様々な依存症へと転落していくのか、なんだか腑に落ちるものがあったので頭の整理のために書き記しておく。
僕のような凡人も、当然日々人並みの孤独を感じて生きている。
それは僕が、人見知りのコミュ障で、才能もないし、お金もないし、成功もしてないし、顔はぶさいくでモテないからだ、とかまあ永遠に列挙できるんだけど、
お金持ちになったら、イケメンになったら、仕事で成功したら、誰かの愛を勝ち取って幸せになれるんじゃないかって恥ずかしながら思ってる。
もう孤独は、解消することは不可能に思えるだろうし、何かしらによって紛らわせ逃避するばかりになるのだろう。
やっかいなのは、孤独は大勢に愛されれば解消できるものではなく、自分が愛してもらいたい人に愛してもらえないと意味ないということ。
そして、顔や才能や財産をきっかけに人を好きになることはあれど、根本的に愛って損得やリーズナブルな理由を超越した絆を意味するものだから、
やっぱり持ち物が少ないほうが愛を感じやすいのだと思う。
すべてを手に入れて多くのファンに愛されているのに、お父さん、お母さん、好きな人は自分に向き合ってくれないの?とか、もうしんどい。
なんつって、ここに来てすごく当たり前のことを書いてることに気づいちゃったw
Your songが生まれるシーンなんか実写版幸福って感じで、心震えた。
悲しい映画じゃないのに、僕は観終わったあとなぜか激烈に寂しくなったから、これから観に行く人はだれかと一緒に行くことをおすすめする。
KATZEを知らない人のためにお勧めの曲を選んでCDにぶっこむことにした。
たった4枚のアルバムから選ぶとはいえなかなかこれが骨の折れる作業で。
結局こうなった。
1.STAY FREE
2.SOME DAY
3.LOST BOY
4.HOLD ME
5.LOVE GENERATION
6.90's pain
7.耳をすまして…
8.Destiny
9.Michelle
10.Good Times Bad Times
12.STAY OR GO!
13.AGAIN
14.LOVE IS HERE
いや言い訳をしておくと
「DON'T CRY ANY MORE」とか「YOUR SONG」とか
「CLOUDY LATER RAIN」とか「この雨の向こうに…」とか
「SHOCKING PART II」とかも入れたかったんだよ。
でも、導入としてはこっちのほうが入りやすいかと思って選んだ。どうだろう。
これで好きになってくれたらうれしいなあ。