俺はとある名門私立と言われる大学に通っていてそこで出会ったのが彼女だった。
彼女は小学校からそこのエレベーターのお嬢様で、親戚を辿れば天皇家にも繋がるとか繋がらないとかそういう家だったらしい。
実家は裕福というか、外車のオープンカーに乗ってたり運転手が家にいたり近所に大きな家があるのに何故かすごいマンションで一人暮らししてたりと都立から大学に入った自分には異世界の女だった。
美しくて自分が裕福なのも知らないで日本全ての家庭にクルーザーがあると思い込んでるようなお嬢様が戯れに付き合ったのが俺だったらしい。
見た目の割に女系家族出身だったせいと内部進学なのに頭が良くてあとめちゃくちゃ腐女子で同人誌描いてるような子だったから男に縁遠いタイプだったらしい。
男と遊ぶより同人活動が好きで、結婚も同人活動を許してくれる人がいいが口癖だった。
金は集まるところには集まるもので、幼い時から高級品に囲まれていた彼女が抜群のセンスの良さと頭の良さからくる構成力、沢山絵を描き続けてきた画力で同人誌で学生ながらかなり儲けて親の税理士に勧められるがまま法人化して社長になっていたのだが、それは全部小遣いの一部になっていた。
華やかな生活がツイッターで垣間見え、彼女自身にファンが増えていくの繰り返しで本人は稼ぐ気なんか皆無だったのに金は貯まり商業BLの誘いもしょっちゅう来てたらしい。彼女が言うには推しカプしか描きたくないからやらないって突っぱねたらしいが。
俺は彼女との結婚を考えていた。はっきりいって打算だった。彼女を溺愛する両親は好きな人と結婚なさいと言ってまだ彼氏だった俺にも優しく、旅行に誘ってくれたりゴルフ道具を一式買ってもらって一緒に行ったりしていた。
彼女は相変わらず漫画を描いて、オタク活動と美容に明け暮れていた。
お互い就職を考える段階になった時、彼女は同人で作った会社があるから相変わらず同人を描くだけの高等遊民になるようだった。彼女の両親はあの子は変わってるしわがままだし体も弱いからゆっくりしていればいいと言っていたし、何の問題もない。問題は俺だ。
俺は彼女と結婚して彼女の親御さんの会社に入りたかった。というか彼女と結婚すればそれだけでニートでも充分生きていける資産はある。
結婚したいと仄めかし、彼女も乗り気でそのまま家に転がり込んで同棲を始めた。親御さんも公認だった。
しかし彼女は何の家事もしない人間だった。食事は外食、その他はハウスキーパー。食事も生まれつきの少食で一日一食じゃないと腹を壊すらしい。
空の冷蔵庫も、ハウスキーパーが出入りする生活も、彼女の親の過干渉も、節々で感じる格差も嫌になって彼女に当たった。
彼女の言い分は生活費全て私が出してるのに文句を言われる筋合いはない、働いてると言っても自分の小遣い稼いでるだけなんだから偉そうにしないで、そもそも私は同人の邪魔する人と結婚するのは無理だそうだ。
最後は置いといて今から思えばぐうの音も出ない正論だった。家賃も光熱費もハウスキーパーの金も全て彼女だった。
そこそこのところに就職したが彼女はおらず婚活中だ。結構相談所経由でアラサーの大して綺麗でもない女と金を払って会っている。
彼女は父親と同じような経営者と結婚したらしい。忙しいせいか同人活動に理解どころか、応援してくれる旦那で家事はしなくてもいいと言っているらしい。全部ハウスキーパーに丸投げで彼女は今日も漫画を描き、美容に投資し、オープンカーにシャネルのバッグでコラボカフェに行っている。
相変わらず美しかった。相談所には到底いない美しさだ。生来の美しさに加え、恵まれた環境と趣味に没頭しているせいだと思う。
あのダンディな父親の鞄持ちをさせられるだろうが、外車にのり港区の高層タワマンに住んで夜景を眺めているのだろう。
未だに後悔が尽きない。
あの時ああしておけばみたいなタイミングがあった人間の人生が上手くいかない理由は結局選択ミスや。 運が悪いとか理不尽とかそんなことではないんや。 ワイらは決断を間違えてしも...
結婚してたら絶対自分が惨めで劣等感煽ってくる彼女が憎い憎い言ってると思うわ