2020-08-15

同人作家目線の、同人誌感想を送ることの是非

物づくりをする人の中には、アーティストタイプの人とクリエイタータイプの人がいる。



アーティストタイプは「表現すること」自体に重きを置いていて、

クリエイタータイプは「表現したものを通して人の心を動かすこと、表現のその先」を目指している。


アーティストタイプの人は自己表現目的から評価どころか、誰かに見てもらえなくてもいい、見せるために作っているわけではないという人もたくさんいる。「作ること」それ自体が喜びであり、楽しいのだ。


逆にクリエイタータイプは、他人に見てもらってリアクションを得ることが前提にある。広告web装丁など「デザイン」と分類されるものに携わる人はこっちだ。顧客の求めるものに応え、見る人がどういう気持ちになってほしいかを重視して、ものを作る。書籍として販売されている商業作家ほとんどはこっちだろう。(一人でひっそりと作り続けたものたまたま誰かの目に留まって商品化されるケースもあるので「ほとんど」と書いた。)


私は根っからクリエイタータイプで、物心ついた頃から絵は描いていたけれど、ただの絵ではなく「紙芝居」や「絵本」や「着せ替え人形」や「塗り絵」を手作りして他人に楽しんでもらうという、ちょっと珍しい遊び方を幼稚園時代からしていた。絵を描くこと自体ももちろん好きだけれど、それを見た人が喜ぶ顔を見るのが何より好きだった。



同人誌ではよく、「感想をもらって嬉しいか否か」「いつもどれくらい感想を貰うか」のような、感想についての議論が時折取り沙汰される。

人の目に触れる形で世に出した以上、多少のリアクションは欲しいという人が大多数だが、感想はいらない派も少なから絶対数存在する。これは前述した二つのタイプがあるからだ。

どっちが良いとか悪いとかの問題ではなく、表現ベクトルが違うのだ。

アーティストタイプの人の中には、他者から(たとえ肯定言葉であろうと)何かを言われた瞬間に物づくりをやめてしまうという人も稀にいる。自分が一人で作り上げた小さな世界に、知らない人が土足で上がり込んできたような、そんな気持ちなのだろう。感想を送ったらブロックされた、お気持ちツイートを書かれた、という人もたまに見かける。


こうやって作り手にもタイプが混在していて、かつ「ネット」というそれが表出しにくい状況だと、読み専で感想を送る側のオタクにとっては、送った方がいいのか悩むのももっともだろう。一度送ったら筆を折られたなんて経験があれば、二の足を踏んでしまうのは当然だ。

ここの見極めは大変難しいのだが──反応がいらないという人は、自分作品宣伝や告知をほとんどしなかったり、「感想いらないです」と明言したりしていることも多いので、そこで見分けていくしかない。

ただ、製本やグッズ化などなんらかの形にして即売会頒布している作家に関しては「見てほしい、リアクションがほしい」人が大多数ではあるので、臆することな感想は送ったほうがいい、と、私は思う。


実際、感想を貰えることなんてほとんどないのだ。

私は同人では二次創作BL界隈に身を置く腐女子だが、関東イベントだとだいたい安定して誕生日席、インテだと繰り上がって壁配置になる程度の中堅サークル活動している。いつも通販イベント再販合わせて一作品500〜1000部くらいの部数を頒布しているが、貰える感想10以下。内容によっては1つしか来なかったときもある。

来ないのだ、意外と。

たぶん、作家と読者で感想を貰う数の想像に差があるんだろう。

本を出すときは「受け入れてもらえるだろうか、楽しんでもらえるだろうか」と不安で仕方ないので、最初の一つが来ると心から安堵する。一つ貰えるだけで飛び上がって喜んでしまう。十通も来たら「今日が命日…」なんて思う。描いてよかった、と自分肯定できる。

私が送らなくてももうたくさん貰っているだろう、なんて思う必要は全くない。貰ってない。感想を送れ。


また、一度送ったからもういいだろう、みたいなことも思わなくていい。好きだと思ったらその度に伝えていい。

貰う数が少ないから、作家側は何度も感想をくれる人を次第に把握する。HNを書かなくても文体でわかったり、「以前〜というような感想を送った者です」とだけ書いてもすぐに思い出せる。

何度もくれる人にはそれだけ愛着というか、親しみのようなものが湧く。この人のためだけに一冊書き上げたい、何かお礼をしたい、スケブを描きたいから一度顔を出して会いにきてよ、と思うことすらある。

この人だけは絶対リアクションをくれる、という安心感生まれる。そうすればそれだけ、作り手は本を出し続ける。

作家を支えているのは読み手なのだ

感想を送れ。






…とまぁ、送るか否かで悩んでいいのはあくま趣味同人界隈の話で、商業作品に関しては100%感想を送っていい。作家に直接送れないときは、amazon楽天ブックスなど媒介業者レビュー欄に書くといい。レビューを読んで購入するかどうかの指針にする人もいるからだ。本が売れないと商業作家死ぬ感想を送れ。

感想問題話題になるたびいつも思う、同人作家かつ商業作家かつ商業クリエイターの三足の草鞋を履いているオタク独り言でした。

  • どうでもうんち

  • 感想書くのも時間と労力かかるからなぁ。無償で感想を期待するのもどうかと。金払って参加したイベントで帰り際にアンケート書かされるのもなんか嫌。もちろん「ファンだけど送っ...

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