2020-07-28

企業から見た競技プログラミングガチ勢への本音

私はみなさんがよく知っている某社でVPとして働いている。VP仕事は多岐に渡るが、その中でもソフトウェアエンジニア採用は最も重要仕事の一つである。そんな中、弊社の採用対策として、特に新卒学生の間で競技プログラミングというもの流行っているようである。これについて私の所属する部門での印象を述べる。

まず、身も蓋もないことをいってしまうと、少なくともうちの部門では新卒・中途関わらず競技プログラミング知識はほぼ不要である新卒のヘッドカウントは少なくなっているものの、大学コンピュータサイエンスをしっかり学び、かつ自分で手を動かした経験がある人であればあとは人間性問題である事が多い。弊社は選考の際にコーディングスキル特に競技プログラミングスキルを見ていると思われることが多いらしく、学生もその対策としてまるで受験勉強であるかのように取り組んでる人が多いという印象がある。弊社はそれなりに大きい会社であるため、中にはそのような目線採用面接をする部門エンジニアもいると思うが、少なくともうちのチームはコンピュータサイエンスの最低限の足切りをしたあとは一緒に働いて和を乱さないかを重視している。つまり面接をしたエンジニアの単なる印象に近い(これをあからさまにいうと社内でも怒られるが、意外とそんなものである。)

これだけ聞くと弊社も一般会社と変わらないのか・・・と思われるかもしれないが、これには色々理由がある。まずは私が見ている部門の話をしたい。

まず弊部門革新的プロダクトを次々開発するための「高速道路」が非常に整備されている。あまり詳しく言うことはできないが、例えばソフトウェアエンジニアであればGitHubやCircleCI、AWS、といったサービスを使って開発をしていると思う。これらの10年先を行っているインフラが社内で自由に、しかも誰でも使いやすいように整備されていると思って貰えればよい。これによってプログラミング経験ほとんどない人(といっても最低限の足切りはされていると思ってほしい)でもドキュメントコードを参考にすることですぐにプロダクトとして出すことができるということである。これは逆に言えば競技プログラミングで青とか黄といった高度なプログラミングの技術力は必要ないということである。どちらかといえば社内に存在する膨大な技術資料を読み込み応用できる忍耐力と発想力、そしてわからないことは例え相手英語があまり話せない人だったとしてもコミュケーションを厭わない対人能力のほうがはるか重要である。これは社内の人材評価をする際の統計データでも如実に現れている。

一方で実験プロダクトや社内向けプロダクトを開発している部門おいては少々事情が違う。こちはいわゆる「高速道路」が整備されていないためコードを1から書く必要がある。こういう場所では競技プログラミングといった高度なプログラミングの技術力を持つ人が多数活躍している。完全にリサーチャーとまではいかないものの、半分リサーチャー、半分エンジニアといった感じの仕事になっていることが多いと思う。そのような部門では驚くべきことに「Gitの使い方がわからない」といった人まで存在する。だがしかしそれを圧倒する実績を保有しているか、または現在発揮中のいずれかである。ただ弊社も大企業になって久しいためこのようなポジションだんだん減少傾向にある。競技プログラミングで赤や黄であり高度なアルゴリズムを開発するポジション希望するという人は常に一定数いるが、正直採用されることは困難というイメージである。どちらかと言うとこのような部門は優秀な人を引きつけるための広告塔として機能していると思ったほうがよい。実際に採用されるエンジニアの大半は弊部門のような泥臭い作業を任されることがほとんどである

最後個人的主観を述べておく。これはあくまでも私の周辺だけの話ではあるが(とはいえVPではあるのでみなさんが思うよりは広いと思う)、10年以上前入社した人はいわゆるプログラミングガチ勢が多かったように思う。しかし今採用されている人はそのような一点特価型はほぼいなくなり、技術力やコミュケーション力を含めたオールラウンダーが増えてきた。これはあくまでも想像であるが、現在シニアエンジニアとして活躍しているような人材技術力はかなり高いものの、やはりコミュケーション力や忍耐力といった点で難点のある人が多い。そのため、ジュニアとして採用するエンジニアはそういった人材とチームを組めるだけのコミュケーション力や忍耐力が要求されることになる。一方で技術力に関していえば社内で独自開発するよりは、外部から会社ごと買ってくるほうが簡単である。という意味でやはり求められているのはすべての面において難点がないことなである。これは会社の規模に応じた必要不可欠な変化であると考えられるし、また弊社は外資の中ではクビになりにくい体制であるというのも大きいだろう。

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