2019-08-13

anond:20190813023924

ちょっと前にここで書いたんだけど

https://anond.hatelabo.jp/20190723220720

韓国裁判所でも、日本裁判所と同様に和解を促す形で動いていればよかったんじゃないかと思う。

仮に国際法において訴求する権能を否定されたとしても実体としての権利存在とその仮定された請求内容は裁判所である程度は明らかにできるから

しかしこれはあくまで対日8項目に徴用不法行為に対する補償を含んでいるという前提。

大法院判決の危うさは、植民地支配被害そもそも請求協定範囲外という前提に立っていること。

まり条約解釈に相違がある。

あるいは盧武鉉時代の05年に、韓国政府が公けに説明していた

請求協定を通じて日本から受け取った無償 3億ドル個人財産権(保険預金等)、朝鮮総督府の対日債権韓国政府が国家として有する請求権、強制動員被害補償問題解決性格資金等が包括的に勘案さているとみるべきである

国務調整室 報道資料https://www.koreanbar.or.kr/pages/common/fileDown.asp?types=2&seq=7099

との韓国政府見解放棄する形となる。

大法院は今回なぜこうした経緯を踏まえつつも解釈変更に至ったかといえば、

それは協定補償金が過去植民地支配苛烈さに比べて少なすぎるとの認識があったからだ。

だけど、金額の少なさというのは法理を変える理由になるんだろうか。。

ところで、ちょっと視点を変えて日本公害問題とその法的政治的解決歴史を振り返ってみると、水俣病にしても大気汚染にしても、パーフェクトな解決というのはそもそも諦めざるをえない歴史があったと思う。特に数々の公害立法がしてきたことは、ある意味でどこかでラインを引いて被害者を無情に切り捨てるやり方だった。通り一本挟んだら指定区域外となり救済されないとかね。

戦後賠償補償もまた同じ歴史だったんじゃなかろうか。どこかで割りきりをしないと先に進めなかった。戦争清算というのは常にそういうもので、戦前にはすべてを水に流すという意味アムネスティ法理も極端な例かもしれないけれど紛争後の処理に大切な知恵だったように思う。

蒸し返し危険を防ぐという問題意識は何千年も戦争に明け暮れきた社会が常に抱えてきたものだ。

請求協定において、実体的な権利否定しないが訴求する権能を失わせる、というのはある意味でそうした知恵の現れだろう。

だけど、慰安婦問題でそうであるように、請求協定がとりこぼした問題はあるし、徴用問題だって協定に仮に含んでいたとしても満足いく解決ではなかっただろう。

そういう事柄当事者同士あるいは政治的努力対処していくことは大切だろう。

請求協定が対日8項目ですら満足にカバーし切れたかどうか、さらには植民地支配不法行為全体をカバーしていたとはいいがたい。

しかし、そこにきて裁判所金額が少なかったか協定カバーしていなかった不法行為だと認定したりすれば、それは協定解釈問題であり、そもそも植民地支配の再定義必要になる。つまり日本政府がいう、大法院の法理が協定の土台を覆す、という批判と繋がってくる。

しかも、それは請求協定がなぜ訴求権能を失わせたか目的からズレてしまう。

とりこぼした問題は当然今後出てくるだろうということは協定締結当初から想定していて、けれども、それは個別任意解決模索するというのが筋なのではないか

からこそ、当初から協定韓国政府が補償すべきもの実態判断して国内法の枠組みで対処しようという合意になったわけだ。しかし、すべてを国内問題からあとはよろしく、というということを当然に含んでいるわけじゃない。日韓双方の裁判外の努力も当然想定されていたとみるべきだろう。

しかし、ここで法的な請求を認めたということのインパクトはそうしたこれまでの理解を覆すものになる。

そして韓国政府として誠実に行うべきことは、上述したような条約解釈の違いを認め、その上で条約の想定する解決仲裁)を進めることだと思うね。

そして日本政府のすべきことは、協定解釈仲裁委員会で争うとともに、あらゆる政治的解決の不完全さを認識して、すべて解決済みであとは韓国政府の努力次第だ、という態度を改めることだろう。そして、その努力は、過去解決を蒸し返さないやり方で進めていくべきだろう。

記事への反応 -
  • 自分メモ- http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/33949.html たとえば、1991年8月27日の参議院予算委員会において、外務省の柳井俊二条約局長(当時)は、「いわゆる日韓請求権協定におきまして...

    • ちょっと前にここで書いたんだけど https://anond.hatelabo.jp/20190723220720 韓国の裁判所でも、日本の裁判所と同様に和解を促す形で動いていればよかったんじゃないかと思う。 仮に国際法にお...

      • そうなんだよねー。韓国の裁判所は、法律と道義の問題を分けて日本の最高裁と同じように和解する方向に持っていけば、結果的に徴用工の方も救われる方向もあったのではないかと思...

        • まさしくそう思います。 しかしまあ、お互いの溝を埋めるのは簡単じゃないわね。 2015年の日韓合意の破棄が政治的決着への失望を 双方で決定的にしてしまっているのも間違いないわけ...

    • そもそも植民地じゃないしw

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