はてなキーワード: 壁と卵とは
>> もしここに硬い大きな壁があり、そこにぶつかって割れる卵があったとしたら、私は常に卵の側に立ちます。そう、どれほど壁が正しく、卵が間違っていたとしても、それでもなお私は卵の側に立ちます <<
私も常に卵の側に付こうと決意した。
私はタフな人間なのでそれができると思ったのだ。
ただし いま30年ちょっと生きてきて
卵もずるいよなあ って思う時も正直ある。
タフで無神経な壁の私が卵を割ってしまう。
どこかで 自衛してくれよ 自分でなんとかしてくれよ と思ってしまう自分がいる。
いつも人に優しくありたいし、システマチックな判断はしない、人の柔らかいところが好きだから感情的な機微も理解してるつもりだ。
でも自分はいろんな意味で強くて率直で、本当に繊細な人の気持ちが理解できない。友達には、あなたは強いから弱い人の気持ちはわからないと言われた。繊細な人にとっては私の強さが時折に無神経さに写り、その人を傷つけるときがあるんだろう。
そういうことが起こる時、もちろん周りから責められることはないし、私も卵を守るためにある種の不利益すら被ってもなお平気、と思ってはいる。だから多少の不利益を年単位で実際に被り続けたこともある。それで体調を崩したこともある。(そのあとはもう辞めようと思った)
で、この自分の信念めいた考えを、後悔することもなけれは、受け入れて生きているんだが、でも、それでもふとした時、ずるいよねえ 柔らかく繊細なままで、守られて、ずるいねえって、意地悪なことが頭をかすめるときも、ある。
”エルサレム賞を受賞した村上春樹の「壁と卵」のスピーチについて、斎藤美奈子が朝日の文芸時評で書いていたのはなかなかよくてね、「このスピーチを聞いてふと思ったのは、こういう場合に『自分は壁の側に立つ』と表明する人がいるだろうかということだった。作家はもちろん、政治家だって、『卵の側に立つ』というのではないか。卵の比喩はかっこいい。総論というのはなべてかっこいいのである」って揶揄していたよ”
http://www.sotokoto.net/yukokuhodan/yukoku_17_2.html
斎藤美奈子さん、いるみたいですよ
村上春樹のカタルーニャ国際賞のスピーチが賞賛を浴びてるけど、僕はすごいスピーチとは思わない。エルサレム賞の「壁の卵」のスピーチの方が、何億倍もすごかったと思う。
村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文(上) - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/enta/art/news/20110611k0000m040017000c.html
【村上春樹】村上春樹エルサレム賞スピーチ全文(日本語訳) : 47トピックス - 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/47topics/e/93925.php
一部には原爆と原発を一緒にするレトリックに批判が挙がってるけど、別にこの部分には異論はない。科学的にいうと全然違うかもしれないけど(急性被爆とかうんぬんかんぬん)、文学表現としては有りだと思う。
僕が違和感を覚えるのは、そこの部分じゃなくて、「我々が一貫して求めていた平和で豊かな社会は、何によって損なわれ、歪められてしまったのでしょう?」「理由は簡単です。「効率」です」という部分。
「効率」って言葉は一見抽象的なようで、安易に単純化した概念だと思う。
問題は深刻で真実は闇に隠されてて、立ち向かうのには、「壁と卵」のスピーチの言葉を使うと、もっとよい嘘をつくべきなのに、「効率」は出来の悪い嘘だと思う。
「効率」という嘘が、どのように出来が悪いかというと、この原発問題を簡単に乗り越えられるような印象を与えるということ。僕らが「効率」を捨てさえすれば、二度とこのような問題は起きないと錯覚するということ。
そんなに簡単に乗り越えられることが可能なんだろうか。僕らが「効率」だけを求めて生きてきたから、このような事故を引き起こしてしまったんだろうか。たとえそうであっても僕らは簡単に「効率」を捨てることができるのだろうか。
もしかしたら、福島の人に希望を持たせるためにあえて出来の悪い嘘をついたのかもしれないけど、そんなことは他の人に任せるべきで、村上春樹の仕事ではないように思える。春樹以外の人にだって出来ることなのだから。
春樹にしか出来ないこと、それは問題を抽象化して、別の形に置き換える作業だと思う。それは単純化と別方向の作業で、非常に難しいし、理解されないかもしれない。問題をさらに複雑にしたと批判を浴びるかもしれない。
でもそれが、「壁と卵」で春樹が言ってた小説家の仕事じゃないかな。そしてそれは「嘘を紡ぐプロ」として自覚している春樹にしか出来ないことだと思う。
※追記 エルサレム賞のリンクが間違ってたので修正しました。指摘ありがとうございます。
高く堅固な壁と卵があって、卵は壁にぶつかり割れる。