「トランス女性が「私は女性として生きたいのに…」と嘆くので、「失礼な質問かもしれないけど、女性として生きるって具体的に何をするの?」と聞いたら、「好きな人と結婚して、子供を持って、幸せな家庭を築きたい。女性として当然の人生を歩めないのが辛い」と言われてしまって困ったことがある」
というツイートを目にした。
https://twitter.com/yumenokiiro/status/1554040728237420544?s=20&t=-52y3y_lfm8x9v9jkTHUKQ
答えた側もずいぶん古いステレオタイプだなとは思うものの、別にこういうシス女性もいなくはないだろ。
それが「トランス女性」という、少数派ゆえに個を無視して属性で見られる存在になると途端に「トランス女性って結局…」みたいに一括りにされるんだよな。
もしこれが「職場で隣のアラフォー女性」なら、そういう風に個別性を表現するんじゃないか?
「知り合いの」とさえもつけずに「トランス女性が」と書いたことに余計な意味を見出してしまいそうになる。
そしてそもそも、「女性として生きるって何をするの」という質問自体が、トランスを特別で異質なものと思ってないと出てこない質問だ。
まぁそりゃそうだ、ほとんどの人は自分が生まれたときの体とそれに付随する外見的特徴で生きていて気持ち悪さを感じることなんてないんだからな
「わざわざ性別変えようとするぐらいだから、性別変えてしたいこと、性別変えないとできないことがあるに違いない」と思うのかもしれない。
はっきり言うと「特にない」です。
「シスジェンダーが期待するような何か特別なこと」はないです。
男性にしかできないことの一つに立ち小便があるけど、莫大な手術費用を捻出しないと実現しないし
女性にしかできないことには妊娠出産があるけど、これはもはや手術で叶う話ではない。
そういう意味では後天的にジェンダーを移行したり手術を受けて何が変わるかというと、QOLだけです。異論は認めるけど。
「性自認」という言葉を、男が女装して女子トイレに入るための詭弁ぐらいにしか思ってない人には多分一生わからないだろうけど、
世の中には、生まれたときの性別で扱われることに、言葉では説明できない気持ち悪さや居心地の悪さを感じる人間がいる。
これは、「女に生まれたばっかりにセクハラされる、こんなことなら男に生まれたかった」とか、「男は仕事で成功しないと評価されない、女は楽でいいな」という話とは違う。
セクハラや生理が嫌で男に生まれたかったと思う女性、だからって外で道を尋ねてきたおばあちゃんに「ちょっとお嬢さん」と声をかけられただけで一日ガチ凹みしますか?(シス男性が女性と間違われたときの凹み方とも多分違う。自分が男性であるという確固とした信念と(法的・身体的・実生活上の)根拠があるのとないのとでは受け取り方は違う。 )
「女/男として認識される自分」「女/男として扱ってくる世界」が無理なんである。
ちょっと違うとは思うが、「都度怒りを表明するほどではないが絶えず少しずつ気分を落ち込ませるもの」としてはずっとこれを受け続けているようなものだ。
しかも相手はこちらがマイノリティだなんて思っていないので、「ごく普通の女性にごく普通の声掛けをしただけ」だから怒りを向ける先がない。
とはいえ道端で知らないおばあちゃんに声をかけられるぐらいなら、髪の長い男性だって女性と間違われるかもしれないと自分に言い聞かせられるからいい。
髪を切りに行っても「自分が女性と思われてるか男性と思われてるか」様子を伺うし、
「〇〇子」や「〇男」みたいな名前で性別を知られないようにすることに全神経を使うし(病院とかは本当に困る)、
女子トイレには入りたくないけど男子トイレに入って指摘されない自信がない時期はかなりきつい。
だから、外見を「女/男として扱われないように」変えるし、
正直、性別を完全に移行してしまうと(※戸籍の性別は変更していないが日常生活で体の性別の方で認識されることが全くなくなった状態も指させてもらう)、「性別」という概念は生活の中でほぼ透明になる。
シスジェンダーで「性自認」という概念に懐疑的な人たちは生まれてからずっとこういう感じだったんだろう。
個人的にもこの言葉に思うところがないではないが、対外的にそう説明するのが一番ギリギリ理解されそうだからそう言ってるぐらいのアレだ。
大分話が脱線したが、「男/女になってやりたいこと」なんて別にないんです。
(胸取ってタンクトップ一枚で外に出られるというのは確かに「女ではやりにくいこと」ではある。)
「普通に生活してるだけで感じる気持ち悪さを減らしたい」だけだし、多分それはシスジェンダーと言われる人たちには理解しにくいと思うけど、
理解できないものを「おかしい」と切り捨てるんじゃなくて「そういうのもあるんだな」と思ってほっといてほしい。
逆に「”ちょっと”生きにくいぐらいで性別を変えようなんてわがままだ」とかよくわからないことを思う人がいたら、「私の人生なんで」と返します。
あと、どんなにトランス女性のことを理解できなくても怖いと思っても、
と言うのだけはやめてあげてほしい。