2020-02-20

コロナ戦線

その作戦はやや奇妙に思えた。

このウイルスは伝染力が非常に強い。しかも無症候のウイルスキャリアが多くいるらしい。感染予防策を徹底的に行っても、いずれはその網をかいくぐるウイルスが出てくることは自明であるように思われた。しかし、中国経済活動を捨ててまで、まさに国力を挙げて感染対策を行っている。大都市の封鎖、大病院の緊急建造など前代未聞であるいくら全体主義国家といえどやりすぎではないだろうか。

感染対策には少なくないコストがかかる。感染対策自体にかかるコストが、感染をしなかった時に発生する治療費社会的損失を上回る時に感染対策有効となる。

感染症に対する戦略(この際は特に隔離予防策について)は簡単に言うとこうだ。

・致死率の非常に高いもの流行した時の影響が大きいので徹底的に隔離する(エボラなど)

感染力の非常に高いものは抑え込む為のコストが大きい、またそもそも現実的不可能であるため、隔離予防策の有用性は相対的に低くなる(麻疹風疹、水痘など)

今回のコロナウイルスはどうだろうか。

・致死率については高い方ではあるが、高齢者でなければMERSSARS比較すると高くない。専門家もむしろパニックにならないように繰り返し伝えている。

感染力については非常に高い。インフルエンザ以上との予測もある。

仮に中国国内流行を止めることができても、そのうちウイルス海外を経由して逆輸入される可能性が高い。西側諸国中国のような徹底した策を講じるのは不可能からだ。であれば、国内必死に食い止めるために費やしたコスト無駄になってしまわないだろうか。極論を言えば全ての人がこのウイルスにかかれば流行は終わるのだから、なるべく犠牲を少なくコストを少なく抑えて全員にかからせるのが取るべき戦略のようにも見える。

しかに、隔離予防策は完全に封じ込めできなかったとしても、データを集めて治療法を練るための時間稼ぎをする意味はある。が、それでもコストに見合ったベネフィットが得られるように思えない。臨床試験から薬を大量生産できるようにするまでの確かな見通しが見えない中、時間稼ぎのための感染対策コストをかけ続けるチキンレースはあまりいい賭けとは思えない。また、コロナウイルスインフルエンザのように少しずつ形を変えて毎年大流行する事はない。一度かかって治れば免疫ができてしばらくかからないはずだ。世界規模の流行が起こるのはこれが最初最後だろう。その意味でも治療法の開発に莫大なコストをかけるのは分のよくない賭けではないだろうか。なんだったら季節が変わって自然収束する可能性もある。

しかし、中国は何も戦略がなくただ目の前の壁にがむしゃらにぶつかっていっているわけではない。

これを一国内問題としてみると戦略を誤る。

おそらく中国もこのウイルスを完全に封じ込められるとは思っていない。

中国の真の目的は、ウイルス人類との戦いで中国世界に貢献を示す事である

これは中国世界でのプレゼンスを高めるための戦いなのだ

中国自身がこれは戦争だと形容した。軍隊を動員して対策にあたらせているニュース冷笑して見ていた人もいるかもしれない。だがこの時まさに、中国が先陣を切り、それぞれの国が国力を挙げて戦うべきものとして世界戦場に引き入れたのだ。この戦場ではウイルスへの有効対策を講じた者が勝者であり、ウイルス蔓延させた者が敗者となる。また派手な施策を打てば戦果アピールやすい。

中国は初手を誤り、武漢での対策が後手に回り、世界から批判を受ける立場だった。しかし、感染力が高いこのウイルスであればいずれは世界蔓延することが容易に想像できる。それを見越して、全世界感染対策という名のコストをかけさせるチキンレースに参加させれば中国が圧倒的に有利となる。全体主義自由主義危機管理能力比べに持ち込んだとも言える。ある程度自国内を感染制御したところで我慢して、他の国でアウトブレイクが頻発すれば敗者は逃れられる。むしろ最初データが集まることをアドバンテージとし、各国に有効対策を広めることができれば世界的なプレゼンスを高めることまで期待できる。

すでに中国は一人負けの状況から脱しつつある。

この戦争が続く限り中国有利の状況は簡単には揺るがず、アドバンテージは増える一方となる。

季節の変化でウイルス自然収束してくれば戦局は変わるが果たしてどうなるか。

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