オリンピックや野球中継やバラエティ番組なんかで芸能人や記者やアナウンサーが一流アスリートに話を訊く場面はよくある。
その様子がテレビに映し出されると、俺の友達はいつもムスッとした顔になり、ピリついた雰囲気を出す。
「『どんなお気持ちでしたか?』じゃねえよカス。このバカ、ほんと死ねや!!」
「うわ、こいつありえねえわ……馴れ馴れしくしてんじゃねえよ、相手誰だと思ってんだよカスタレントのくせに」
俺が見る限り、いっつもこんな感じで怒りまくってる。
正直言って、一流アスリートと絡む側にこれといった粗相があるようには思えなかった。
仕事上当然聞かなければいけないお約束の質問を投げかけたり、笑顔を浮かべて朗らかに接したり、そういった全く問題のない言動や振る舞いを槍玉に上げて友達がブチ切れまくってるようにしか俺の目には映らなかった。
アスリートの側が最初から非協力的な態度を取ったり、機嫌を損ねてたりしてるのが画面越しでも見て取れるときなんかはもう友達は大爆発。
「偉大なるアスリート様を不快にさせるなんてとんでもないクソ野郎だ!!問答無用で無礼者だ!!」
(レッドソックス時代の上原にスポーツ番組が密着したときなんかがまさにこのパターンだった。
「シーズン真っ只中にわざわざ時間を取ってくださった上原を怒らせる最低のマスゴミ連中」と怒りまくってた。
ちなみに、その放送は俺も家で見ていたけれどあれは上原がとにかく酷かった。マスゴミだなんてとんでもない。
「記者がいるだけでムカつくんだよ」とでも言わんばかりにカメラの前で終始イライラし続けて、
ディレクターからのごくごく普通の質問に対しても「だから、そんなん〜に決まっとるやろ…」なんて痺れを切らしたように噛み付く。
その密着でどっからどう見ても横柄で胸くそ悪いのは上原だった)
どんな経緯があろうともアスリートを不快がらせたのなら、いや、アスリートとただ相対しているだけで、芸能人やマスコミ関係者を「無礼なカス!!」と顔を真っ赤にして糾弾する。
俺は内心でこの友達はなんかのメンタルヘルスを患ってるんじゃないかと疑っていた。
天皇への不敬を咎める右翼なんてレベルじゃなかった。理由もないのに怒りまくる。ほとんど通り魔的といってもいいくらいだった。
「遠いところわざわざご苦労さまです」
「遠いところわざわざご苦労って……てめっ、おめえいい加減にしねえとよお。まあいいや、早く鍵よこせや」
などと爆発しかけたことがあった。オーナーは呆気にとられていた。
部屋につくなり俺は、なぜ突然怒り出したのか理由を問いただしたのだけれど、5分以上かけて意味不明な説明をされた覚えがある。
「こっちが予約して金を落としてやってるのに『遠いところわざわざ』だなんて、俺たちが突然やって来て驚いた、想定外の客だみたいなリアクションしやがって。人間失格」
みたいなことを言ってたような気がする。
とりあえず、意味不明で独りよがりな俺ルールを振りかざして、いかに自分の怒りが正当で礼儀に則っているかをずーっと熱弁していたことは強く覚えている。
正直、友達がこういう老害性が強烈な男であることはもう嫌というほど分かっているから、アスリート万歳が転じた無差別激怒も、ひとえに彼のキチガイ性の表れの一つだろうと納得していた。
でも、この友達レベルの奴がどうやら世の中にはかなりいるようなんだよね…。
アスリートを天皇みたいに神聖視して、インタビューや対談や番組出演となったら「どこが失礼なの?なにが問題よ?」っていうようなことでタレントや記者を叩くツイートしてる奴の多いこと多いこと。
どうやら、アスリートに笑いかけるだけでも、心境を尋ねるだけでも、打ち解けて盛り上がるだけでも不敬の極みに思えるようで。
俺の友達と完全に同じ。
アスリートを戦時中の天皇くらいに崇め奉って、あらゆる絡みも問いかけも無礼だといきり立ってるようなキチガイって意外と多いようだ。
頭が痛くなる。
俺の友達と同じタイプだっていう自覚がある人はどうか精神科の診察を受けてみてほしい。
「優勝した大坂なおみにセレーナに関する質問ばかりするなんて!って批判が殺到してるけど、
あんなもん世界的に注目されてる出来事なんだから記者がそれにまつわる質問するのは当然。文句言ってるやつはおかしい」
って怒ってたけど全く正論。
ストレス発散がテレビしかないんだねその人 ネットで暴れればいいのに
ストレス発散がテレビしかないんだねその人 アスリート活動で暴れればいいのに
アスリート警察は害虫以下。