2015-12-11

はてなブックマーカー四天王と愉快な増田たち 【xevra先生 篇】

おはよ♪ 私は増田ノニー。はてな匿名ダイアリー学校に通っている、ごく普通女の子だよ。

学校につくと、クラスのみんながザワザワと騒がしい。隣りにいた増田雲子ちゃんに「どうしたの?」と聞いた。

「あのね、今日はxevra先生の問診があるんだって

雲子ちゃんは怯えているのか、がくがくと震えている。「どうしよう、あたしちゃんと答えられるかな」

大丈夫だよ。雲子ちゃんは増田のなかでも優等生じゃん」

私が励ますけれど、雲子ちゃんは後ろめたそうに目を伏せた。

始業のチャイムが鳴る。教壇で、はてな人検索お姉ちゃんが手を叩く。増田たちはみな注目する。

「これからxevra先生がいらっしゃいます。皆さん、いつもどおりに明るく笑顔で、正直に質問に答えるように」

「はーい」とみんなが答えた。

教室の戸がガラリと開くと、モフモフした可愛いハムスターのような生き物が入ってきた。

(´ω`*) ←こんな感じの生き物だった。

「わー、xevra先生かわいい!!」

増田たちは寄り集まって、xevra先生を撫で始めた。私もなんとか手を伸ばして、先生のふわふわの羽毛に少しだけ触れることができた。とても暖かくて幸せ気持ち。雲子ちゃんは、私が触ろうよと誘っても、首を振って教室の隅から動こうとしなかった。顔が強張っている。なんでだろう、こんなにかわいいのに。

『よしよし、子供社会の宝。元気に楽しく遊ぶのが一番』xevra先生が言った。それから先生の問診が始まった。私の番が回ってきて、将来は何になりたいかを訊かれた。

私は胸を張って、明るい声で

はい、私は自分の頭で考え、自分の足で自立する、立派な社会人になりたいです!」と答えた。xevra先生が満面の笑みで『素晴らしい。合格』と言った。私は褒められたのでちょっと照れくさかった。

後のみんなも先生から合格印を貰えた。最後に、雲子ちゃんの番が回ってきた。雲子ちゃんも私と同じように将来の夢を訊かれた。雲子ちゃんは、キッとした目でxevra先生を睨みつける。でも背中に隠した拳が、小さく震えているのが私には見えた。

「あ、あたしは、プロブロガーになるんだもん! 増田のなかではあたしが一番文才があるの。あたしの才能を眠らせておくなんて勿体無い。プロブロガーになって、GoogleAdsenseとアフィリエイトでいっぱい稼いでやるんだもん!」

 それは普段の雲子ちゃんとは思えない、とても強い口調だった。

 話を聞いていたxevra先生は、みるみるうちに赤くなっていって太陽のようなオブジェクトになった。教室全体に強い重力場が発生して、増田たちはみんな床に押さえつけられる。身体が重くて、立っていられない。私は床に膝をついて、雲子ちゃんとxevra先生行方を見守った。

「xevra先生は何者なの? 太陽なの?」私の質問に、人力検索お姉ちゃんが答える。

「あれは太陽ではありません。《真紅の黒洞――ブラッドブラックホール》覗き込み、覗き込まれるモノすべてを《深淵》へと引きずり込む、はてな最強の瞑想幻術。あれこそがxevra先生の真に顕現した姿です。はてなブックマーカー四天王の名は伊達ではありません」

人力検索お姉ちゃんは何でも知っているんだね」

「何でもは知りません。聞かれたことだけ」

恐ろしい恐ろしい

たったその一言で、近くにいた十数人の増田が吹き飛ばされ、教室の壁へと打ち付けられる。雲子ちゃんはまだ頑張って耐えていた。

ブログで稼いで何が悪いのよ! 立派なビジネスじゃない!!」

ホームレスニートブロガー社会の三大底辺、人間のクズだ。ブロガーとはもはや大脳が壊れて人間になり損ねた穢れの事と同義公共資産であるネットゴミをまき散らすな》

「まずい、逃げます増田さん」

私は人力検索お姉ちゃんに腕を引っ張られた。でもまだ雲子ちゃんが教室に残っている。雲子ちゃんはどうなってしまうの。雲子ちゃんはただ、ブログお金を稼ぎたいって言っただけなのに。

「躊躇っている時間はありません。xevra先生によって、このはてな匿名ダイアリー学校のものが《ゴミ》として定義づけられました。あと10秒後には此の空間のもの深淵の彼方に消滅します」

「そんな!!」

人力検索お姉ちゃんに背負われて、私は無理やり教室の外へと出されようとしていた。人力検索お姉ちゃん重力場無視して動けるようだった。教室から出る際、私は顔だけ、雲子ちゃんの方を振り向いた。

刹那――、雲子ちゃんがニヤリと笑ったように見えた。

「ふっ、あたしが何の対策もしていないと思ったの」

雲子ちゃんは左手を水平にかざして、詠唱する。

「《匿名解除――アノニマスオープン》我が身の真なるIDを此処に指し示せ!!」

プリキュアの変身シーンのように雲子ちゃんの姿が変わり、ピンクスカートに包まれた可愛らしい女の子になった。左手には大振りの斧を持っている。

「アハハハ、あたしのことただの増田だと思って油断したわねxevra! あたしはこれでも名の通ったはてな女子。月間1万PVブログからあんたのこと言及してあげる。喰らえッ、IDコール!!!

叫ぶ。雲子ちゃんは斧を振り下ろす。真紅の黒洞は真っ二つに割れ、xevra先生の姿は霧散して消えた。

「やった、やったわ! ふっ、ブックマーカー四天王と言っても所詮大したことな…」

「愚かですね」人力検索お姉ちゃんが冷たく呟く。「此処はすでに、xevra先生瞑想空間の中」

恐ろしい恐ろしい

瞬間、世界が闇に覆われた。

大脳が壊れて人間になり損ねたメンヘル増田メンヘルの吹き溜まり

私たちは無重力空間に漂っている。上も下も、右も左も分からない。深淵のなかで真っ赤なブラックホールが轟々と嘆くように燃えていた。私は恐怖で脱糞した。

《これをプリントアウトして病院で診てもらおう。お大事に》

幾多もの増田たちが、黒洞に飲み込まれてゆく。深淵に喰われてしまった彼らは、もう二度と生きては帰れないのだ。

さようなら増田ちゃん」

雲子ちゃんが両腕を広げて、私に手を振った。悲しそうな微笑みをたたえ、彼女は闇のなかへと。消えた。

「雲子ちゃん!!!

私は叫ぶ。愛しい友人が、消えてしまわなければならない理由が解らなかった。

時間切れですね」

ふっと目の前に現れた人力検索お姉ちゃんが、私のおでこに手を当てて詠唱する。

強制送還――ログアウト》

私は意識を失い、気がつけばベッドの上にいた。自分は何をしていたのだろう。長い長い夢を見ていた気がする。今日も私は、真っ当な社会人としての1日を過ごさなくては。ビジネスバッグを片手に、家を出た。

眼前には清々しい青空が広がっていた。

近い未来はてなブックマーカー四天王の残り3人と対決する日が訪れるのを、私はまだ知らない。

END

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