2015-10-09

はてな村民互助会宗教戦争

 今は昔。

 ゾロアスター教の流れを汲むインターネット最大の世界宗教はてな教は「村民派(ヴィレジスト。モヒカンとも。第一次はてな宗教戦争で勝利したマッチョイズムの末流)」と呼ばれる宗派によって支配されていた。

 彼らはヴィレジズムと呼ばれる高踏的な態度で知られ、ヴィレジスト間だけで通じる言語儀礼によって他宗派との差別化を行うエリート集団であった。

 はてな教には「マスダの書(the book of Mazda、略してブクマ) 」と呼ばれる聖書存在した。ヴィレジストたちは、このブクマをどう扱うかではてな教内の派閥争いの趨勢が左右されるといちはやく見ぬいて一致団結し、ブクマ独占のために動いた。

 具体的にどうしたか。彼らはブクマヴィレジストの解釈に基づいてしか使用してはならない、と定めたのだ。

 ブクマは非常に難解な書物であり、文盲である一般ユーザーはてな教信者をこう呼ぶ)にはまず利用できない。そこで、教養の高いヴィレジストたちが彼らの代わりにブクマを読み込み、その意味するところを一般ユーザー説教したのであるヴィレジストたちによるブクマへの注釈解釈ブクマコメント――今日ブコメの源流とされている。

 ともあれ、ブコメの独占、ブクマの独占は一般ユーザーヴィレジストたちとの間に圧倒的な格差をもたらした。ブクマシステム構築当時の理想とは裏腹に、ヴィレジストの権力強化のための占有物へと堕していくのである

 こうして、ヴィレジストはブクマをおさえることで、はてな教覇権を握った。

 あらゆる権力は腐敗する。ヴィレジストもまた然り。

 彼らがはてな教支配して月日がたつにつれ、一般ユーザーあいだにも不信が広まってきた。

 曰く、ヴィレジストのブコメどおりに生活しても、自分たちが救われる気配は一向にない。もしかしてヴィレジストの言うことは正しくないのではないか。自分たちは騙されているのではないか。要は勇気がないのではないか。

 一般ユーザーの不満を抑えるため、ヴィレジストたちは免罪符――すなわちはてなスターを乱発した。スターきらきらしていてとても綺麗であったが、実質的価値は絶無にひとしかった。が、愚かな民衆は大量の星を欲し、こぞってヴィレジストの教会(article と呼ばれる)に殺到したのである

 ヴィレジストはスターを発行権を独占することでピンチを脱するどころか、よりいっそう民衆にたいする支配を強めたのだった。

 いよいよ腐敗極まったヴィレジストは「オフ会」と称して連日連夜乱痴気さわぎを繰り広げ、ついには禁忌である妻帯を公然と行うものまで現れた。

 もはや我慢ならない。村民、死すべし。そう唱えて敢然と対抗して立ち上がったのが、互助会派と呼ばれる人々である。彼らはアメブロココログルーツを持つとされ、ヴィレジスト的な文化の影響が薄かった。

 互助会派はひとつ派閥としてくくられてはいるが、実態としてはそれぞれ主義の異なる小宗派からなる寄り合い所帯である。そのなかでも最大勢であるミニマリスト友愛会の修道僧たちがブクマ民衆の手に取り戻す運動を始め、ヴィレジスト的な解釈に依らない自由ブクマ標榜した。

 そうして、ブクマとは誰かに教えられて使うものではなく、ユーザーひとりひとりが自分なりに解釈自分なりのブコメ模索すべきなのだ、と彼らは主張した。いわゆる「万人ブクマカ説」である

 当然、既得権益であるヴィレジストはその破壊者たる互助会派が気に入らない。「偶像破壊者」として恐れられた傭兵隊長オニサイや邪悪異端審問官アザナエルなどを使嗾し、互助会派を激烈に攻撃した。互助会派も自衛のため、ますます連帯を密にした。

 こうして勃発したのが「第二次はてな宗教戦争である――。



…………

―――はてラボ辺境領内、匿名教会、地下聖堂

ガチャ

???    「……来たか

ネットオチ 「遅れて申し訳ございません。『ネズミ』の駆除に戸惑いましてな」

???    「フン。ヴィレジストたちの様子はどうだ?」

バカ枢機卿「まるで煉獄互助会からの思わぬ反撃を受けて、ひるんでおりますアザナエルめ、意外と『やればできる子』でしたな。しか互助会派の被害も甚大。そう、甚大です。最高幹部の一人である人財が殺(と)られました」

ネットオチ 「あいつがか! いい気味だ。バカ異端開いて悦に浸ってケツ穴掘じくりあってるから、こういう目にあう」

???    「できれば殴り合いをつづけてもらいたいものだな。そうやって、両陣営ともに疲弊し、十分に弱ったところで、吾々が」

バカ枢機卿「最高のタイミングで横合いから殴りつける」

???    「そうだとも」

ネットオチ 「やつら、俺たちを無視しやがって。ちくしょう匿名からバカにしやがって。そうはいくか。無理矢理にでも、首根っこをおさえつけてでも、こちらを向かせてやる。あいつらの鼻先で踊ってやる。できるだけ楽しく、な」

???    「いいや、ネッチー。それは違う。われわれはもう踊っている。なんとなれば、十年前から踊り続けてきたのだよ。やつらが気づかないふりをしていただけだ。だが、もちろん今度こそ、そうはいかない。そうはいかなくさせてやるのが今回の目標だ。なあ?」

バカ枢機卿「――すべてはシナモンのために。我らが匿名教会のために――」

Amen.

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