2022-11-19

すずめの戸締まり駄作です

ダメだろ、これ。

失敗の原因は5つ。

①導入の失敗

冒頭、どこか非現実的で、しか東北震災を思わせる風景はいい。

踏切を渡らない演出や、立ち入り禁止看板を乗り越えるところなど、日常へ行かず、非日常へ入っていくことを描写していくも、よくわからないまま立ち去り学校日常描写→そして地震、なんか山から祟り神みたいなの出てる→再び廃墟へ。

ここが一つテンポが悪かったと思う。

どういう物語かを提示するという形で及第点ではあるが、特段面白くはない(わずか35秒で説明し、全く本編が面白くなかったソラとウミのアイダを見習ってほしい)

その後、猫(ダイジン)を追いかけ、船に乗るというところまでが、序盤といっていいと思う。

気になるのはすずめが船に乗るのは自発的意思に基づくものであって、君の名は。不可抗力で入れ替わったこととは違う。

ここにご都合的な強引さを感じるのだ。

さらに致命的だと思うのが、ダブル主人公のうちの一人、草太が早々に椅子の姿になってしまった。

この結果、ロードムービーでありながら、草太は椅子の姿であることからコミュニケーションをとることに作劇上の制限が加えられてしまった。

コメディ的なキャラクターになったことで、ラブストーリーとしての進め方にも違和感が出ている。

草太がどういう人物なのかが明示されないまま物語が進んでいく。役割しか持たされていないんだよね。

で、そのメンタルのまま、後半、突然の死にたくないっす。要石なりたくないっす。→私も草太がいない世界怖いっす。

義務的ラブストーリーにもっていくな!!

ロードムービーをやりたいのか、と思ったけれども、ロードムービーって基本的に旅する二人が、旅先での人との出会いによって関係性が変化するというのが定石じゃないですか。

でも、本作のヒロイン、すずめは一体に何に不満があって、成長するのかというのが不明瞭なんですよね。

3.11というモチーフと、ファンタジー表現の嚙み合わせの悪さ

災害の原因であるミミズが出てくる扉を閉める、という役目を帯びた青年が全国行脚しているようだが、ファンタジー職業ありがちなどうやって食べてんだ?という疑問には普通に大学生であるし、将来的には教師を目指しているという謎の情報が与えられた。役目が重すぎるだろ……。

関東大震災ミミズが原因だったという描写があり、直接的に言及されていないが、3.11も同じミミズが原因であったと推察できる。

こいつらがきっちり仕事してれば3.11を防げたってこと?という疑問点が観客の引っ掛かりになるのではないか

感動部分は、作品によってではなく、3.11悲劇性と記憶に頼って泣かせているんだよな。そして人間馬鹿から感情が動くと名作だと錯覚する。

③「世界」か「君」か

本作の中盤では、首都直下地震を思わせる災厄を封じるために、東京舞台に駆け回る。

通常の映画で言えばクライマックスに相当するようなアクションの末に、すずめは草太を要石として使用し、東京を救うことになる。

天気の子が「世界」か「君」かの選択で、「君」を選んだ結果、めちゃくちゃになった世界があって、それでも生きていくという話だったのに対し、今作では「世界」を選んだその後を書くつもりか?と思っていたが違った。

物語はこの要石となってしまった草太を救うために、幼少期に見たあの世への扉を探すことになる。

そして終盤、気仙沼炎上を思い起こさせるファンタジー災害空間で、暴れだす巨大なミミズを背景に、主人公を走らせる。この絵を描きたかったというのは分かる。

要石となった草太を解放することで、ミミズの抑えがきかなくなる。

さあ、どうする?

すまん!今まで要石やってくれとったダイジン、サダイジン!またやってくれ!

了解!!

おわり。

は?

世界」か「君」か、という選択と代償の話が、第三者委託したら何とかなったわwで終わっていいわけねえだろうが。

気まぐれな神としてのダイジンが、都合で動きすぎている。

自然に外れちゃった東京の要石ことサダイジンは、なぜか主人公たちの旅に付いてくる上に、最終的にはまた要石として役目を担うことになる。

ええ?

要石が外れたけど、機嫌治ったんで、自主的に役目に戻ってくれましたみたいな解決である

主人公らの選択と苦悩が壮大な茶番になってしまっている。

④単調な展開。

基本的四国神戸と行く先々でミミズを見かけて戸締まりするアクションシーンというのが連続で起きる。

また各地で出会う人々もそれほど深掘りされることはない。

これが東京まで来るとそれなりに街の描き方が生き生きとしてくるし、後半のキーパーソンになる芹澤が登場する。前半と後半で明らかに映画趣旨がガラリと変わっている。

からこそ前半の時間の使い方はもったいなかった。(後半にほとんど繋がっていかない)

おばさんも遠くで心配してる描写を延々はさむぐらいなら、もう少し後半の決裂に至る問題点避難者受け入れ、被災者遺族の家庭の問題)をやっとけばよかったのに。

⑤やりたいことが何もかも多すぎる

ロードムービーをする都合上、各地を巡り、そこで出会う人々とのつながりを書く必要があるので登場人物が増える。

そうするとそれぞれのキャラクターに割ける時間相対的に少なくなるので、魅力を描写する時間が足りなくなる。

途中で出会った人々を後半に繋げるでもなく、主要キャラ問題点提示や成長に繋げるわけでもない。何がしたいんだ。

新海が触りたかったものロードムービー3.11被災者への応援、衰退する地方都市避難民と家庭環境自然への畏敬、民間信仰恋愛あたりだろう。

終盤で、主人公過去自分を見つけ、この世界は明るいんだと、ド直球な被災者への応援メッセージを長々とぶちかましていく。

過去自分を救いたいという趣旨は分かるけど。

一方で衰退する地方都市自然に還る廃墟を映し、戸締まりの際の呪文山河をお返し申す、人間が使ってきた土地自然に返すという話であろうが本当に触れるだけだし、それを3.11テーマとどういうリンクをさせるつもりだったんだ。

ある種の無常観というか平家物語的な持っていき方をするわけでもなく、災害はそれはそれとして悼みます、という一貫性のなさ。

おばと主人公の決裂も、避難の子供引き取っちゃったせいで人生めちゃくちゃやん→ごめん言い過ぎたわ……。で終わり。

ダイジン、サダイジン、それにキャラクター名前を見ても民間信仰というか古代神道系の話っぽいなぁとは思ったが、そこもそれほど深掘りされず。

どうでもいいけど九州の要石、廃墟と化してるとはいえめっちゃ現代的な施設の真ん中付近に刺さってるの謎すぎるやろ。

そして終盤唐突恋愛映画的なスペクタクルと、抱きしめ。

男側の感情が一切見えない上に、女側もイケメンと旅して、神戸でいきなり発情し始めて椅子キスするという展開を伏線としてクライマックスで結ばれましたってやるの強引すぎるだろ。

今作は終盤に使うために仕込んだ伏線が、全て雑すぎて、「前に説明してましたよね?」と新海が言い訳するために挟まれるシーンが多すぎる。

戸締まりをする際に、その土地の人々に思いを巡らせる、というのもすずめにとっては何の縁もない土地の思い出が想起されるのは変だろう、と思っていると、終盤に被災前の人々の情景を描くシーンがあり、ああ、これのための言い訳だったのかと理解した。

なんなんすかね、これ。

  • 女が弱者男性と下方婚しない創作物は駄作です

  • 草太は椅子だから弱者男性だろ(人間戻ったらイケメンだが……、将来教師とかお役目と噛み合わせ悪すぎるし雑に考えすぎてて弱者男性)

  • てっきりすずめとそうたが要石になるのかと思ったら元人柱がまた要石になってて謎だったンゴねぇ

  • 感動部分は、作品によってではなく、3.11の悲劇性と記憶に頼って泣かせているんだよな。 これはおれも思ったね。 とあるシーンで体がガタガタ震えるほど号泣したけど、あれは現実...

    • こういう…インデックス的な手掛かり提示から、背後の情報の処理を視聴者読者の知識に依存して省力するっていうの。何て言うんだろうか。”データベース消費”ではなさそう。

      • インデックス的な手掛かり提示から、背後の情報の処理を視聴者読者の知識に依存して省力、でいいじゃん。

  • not for youだっただけなのに観客を馬鹿にするとか

  • 何か大災害が起こる。男子と女子が出会う。映える田舎の描写がある。気合の入った東京の描写がある。ヒロインの母が死んでる。適当な神道モチーフのギミックが出て来る。女子が走...

  • やりたいことと多すぎて全部中途半端なんだよな。いろいろ詰め込んでいてよくいえばテンポがいいになるけど、どう考えてもすずめの心理描写が圧倒的に足りてなくて行動原理がわか...

  • 日本のマス向け作品は基本ゴミだから。鬼滅が異常だった。

  • ロードムービーを入れるなら各地で出会った人々の感謝の祈りのパワーがラスボスに通用して奇跡が起きる的な定番の結末にしないと白けるよな

  • お話のために創造された作中人物は派手に救われていくのに、リアルとオーバーラップさせた(悪く言えば涙を誘うためのギミックとして導入された)「辛いめにあった子供:幼いすず...

  • >すまん!今まで要石やってくれとったダイジン、サダイジン!またやってくれ! >了解!! >おわり。 >は? えー。この物語にはいくつもストーリーラインがあるが、その一つが神...

    • 読み取れてないんじゃなくて説明されてないんだよ。 新海誠はすぐに小説に逃げる。映画単体として作品を完結させる気がなく、いつも説明不足。 彼自指針が原作をやっているから彼の...

      • ほんとソレな 評価してる人のネタバレ感想を拾い読みしたんだが みんなポエマーだなぁって思った んで、大抵小説に言及するんだよね なんでも、日記が黒く塗りつぶされているのは 「...

        • 秒速から新海のファンだけど、同意見。 小説はまず映画を見て面白いと思ってからさらに深堀をする為に買うものであるはずだよな。 君の名は。までは映画を見て面白いと感じる→小説...

          • すずめの戸締まりの小説版はほとんど脚本そのままに軽い地の文が乗ってるだけだと思うけど… エアプなのかな…

            • 小説を読もうと思わないって言ってる人に対してエアプかってあなたバカじゃないの またはアホか

    • 神が人間を特別扱いするのに人間の信仰が必要って設定よくあるけどさ 一個人からじゃないでしょ普通 再契約とかいうのもさ なんで人類代表みたいなのに選出されてるのかな おかしく...

    • その神様はずいぶんと弱々しく親の愛乞う幼子めいている 愛された記憶ゆえにヤングケアラーとなるに似て 石になるのがことわりなのは神は人ならぬものであり人と同じ心は持たぬ...

    • この投稿を関係者がやったと言っても信じられる程度には 映画にはそんな描写がない そんなというのは、「神の力」にまつわる仄めかし で、それ故に表象は浅薄で軽いわけで 駄作と言...

      • トシオが「最後の要石はすずめの母親であるべきだった」って言ってて、まぁ、それならちょっとは説得力増田って思った

    • 草太は伝承を正しく受け継げていないので要石を単なる封印の道具とみなしていて全然敬意をいだいていない。 それが原因で封印がゆらいでいる。 それが初期状態。 これについては...

    • 俺もこの内容を十分汲み取れたんだが、ゼロ年代のエロゲを嗜んでいて新海誠的な世界観に親しんでいたからじゃないかと思うんだよな 演出的に説明不足でハイコンテキストだった気が...

      • ハイコンテクスト 文化・思想の共有性に頼り、直接表現以外の情報に頼るコミュニケーション方法 みんなキミと同じことを言っている エロゲとかそういうのは関係ない 後からそう...

        • (あなたの)駄作であるという感想は誰ひとりとして否定していないというのに何が不満なんだ

        • 横からだけどその増田は「他人の駄作判定」を覆すだなんて一言も言ってないし 説明不足だという意見には同意する趣旨だと思うんだが…

  • 新海に求められてるのはポストパヤオとしての売れる映画なので 作品の良しあしは二の次や パヤオだって作品自体は割と中身ない駄作ばっかや

  • 駄作に言葉を尽くす必要はない

  • 駄作、とまでは言わないけど、物語構成に瑕疵があるのは間違いないよね。 サブプロットの「鈴芽と環の関係性」が、東北へ向かうクライマックスの流れの中で差し込まれ、全体のテン...

  • 感想について同意する。 なのでインターネットには「顔が性癖の男がでてきた」「被災について考えさせられる」みたいなふんわりした感想しかない。

  • 登校中にイケメンを見かけたから学校サボって追いかけるっていう尻軽ビッチをおじさんが描いてるのにフェミさんがキレてないのが謎 宮崎のクソ田舎の女子高生なんてそんなもんだろ...

  • まあ、わかる。新海っぽくないし、また無能川村元気が口出ししたってことないかな。

  • 人が死ぬ話でしか物語が書けない人間は人間の命より大事なものが書けないんよ 人間の命が一番大事だから生きている状態を維持するというためだけに理不尽な賭けをしたり決断をした...

  • anond:20221119161631 「ための」演出が多すぎるって言うか 鍵かけ演出 家や自転車の鍵をかけるシーンを意図的にカットとして抜くのは、戸締りとしての鍵を意識させたいんだろうが 「戸を...

    • マジックワードで自分だと気付くことで 未来の自分は元気でやっていると4歳のスズメが思っても それが母親を亡くしたスズメを救うとは思えんのよね クライマックスで震災の情景が...

  • 「駄作」という評価以外は同意 ワイは未だに00年代泣きゲーの文脈で新海誠の映画見てるので 麻枝准がKeyで書いてたシナリオもこんなもんだったよなとその辺の雑さは減点対象にしない...

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