2020-12-06

大阪の赤信号

先日、大阪独自基準に基づく非常事態を示す「赤信号」が発令された。

新型コロナウイルス感染者数が先月から爆発的に増加しはじめたことはメディアで報じられている通りだが、

その中で重症者数も増えてきており、想像以上に早く医療機関収容対応能力限界に近づいてきたため、発令に踏み切ったとのこと。

この師走差し掛かった直後での発令、ここで食い止めないと医療崩壊に繋がりかねないとの名目なのだろうが、

正直な話、この赤信号発令のタイミングについては「判断が遅すぎた」と言わざるを得ない。

これから2週間は同じペースで感染者・重症者は増え続け、医療機関野戦病棟さながらの事態となるだろうことは想像に難くない。

一般人の私としては、医療従事者の皆さまには深く敬意を表すると共に、

一人の人間としてこれ以上の感染者を増やさないよう、そして私自身が感染者とならないよう、

慎重に行動をしてゆくこととで、細やかながらこの状況に協力してゆきたいと思っている。


さて、この非常事態宣言たる赤信号だが、15日までという期限が切られている。

この期間中不要不急の外出は控えるようにとの要請が出ているわけだが、まっとうな人間であればこの要請には恐らく従うことだと思う。

問題は、この期間終了後だ。

果たして、15日でこの赤信号が解除されるかどうかはまだ分からないが、仮に解除されたとして、果たして皆はどう考えるだろうか?

ここでもまっとうな人間であれば

「解除されたとは言え、人混みは避けて、飲み会などもやめておこう」

となるのが自然だろう。

まさかここにきて、

「解除されたからもう飲みに行っても大丈夫自分感染しない!」

などと迂闊な考えたをしたりする人間はいないだろう・・・私自身は願望を持っているが、

たった2週間という短期間の外出自要請と、年末という忘年会シーズンただなかでの解除ということを鑑みるに、

どうにも人々の理性のタガはいとも簡単に外れかねないのではないかということを大変に危惧している。

それに、そもそも15日までという期間が短すぎるのがどうにも気になるところだ。


既に飲食業界はガタガタで、特に居酒屋や緊密に接待してくれる店などの所謂「夜の街」のダメージはかなり深刻だ。

だが、この「夜の街」こそが感染の温床となっていることも事実で、

第2波の時も東京都知事毎日のように会見で発言していたことは、今でもげに印象に残っている。

本来ならば「夜の街で働く人の生活保障するから完全に閉めてくれ」と国が動くべきところだったが、

残念ながら、「自分の飯代くらいは自分で稼げ」と国が突き放してしまったのだから

今回の自粛要請にも否定的なお店は増えていることだと思う。

関東では店舗の照明を切って営業してる、なんてところもあり、その傾向は以前の比ではないように思える)

当然、一部のお店は通常通り営業を続けることとなり、店が開いてるなら酒を求める人々はそこに集中する。

狭い範囲ながら新型コロナウイルス感染者発生を維持する手助けをすることになる可能性がある。

活動自粛強制することができない関係上、居酒屋だろうと職場だろうと感染経路を遮断することは現行法では不可能だが、

このたった2週間程度の自粛期間では感染症の広まりを抑えるということについては焼け石に水といったところだろう。

そして、15日を迎え、晴れて赤信号を解除し、黄色信号になると同時に

自粛要請を解除するが、5つの小を徹底して飲食することを要請する」となった場合に、

果たして皆それを忠実に守り、極少人数で客の入りの少ない店に入り、個室で短時間のうちに静かに飲食を行い、速やかに退店するだろうか?

私は絶対にそうはならないだろうな、という確信めいた実感がある。

日本居酒屋は換気を徹底できるような作りになってるところは少ないように思うし、

グループごとに完全に個室に案内できる店は少し大きな料亭クラスの店くらいのもので、

申し訳程度に立てられたアクリル板はどうやら意味を為さないことが分かってきており、

安定した感染経路の提供口として機能してしまうことになることは想像に難くない。

また、いくら冷静に「小」を守る人でもひとたび酒が入れば感覚は鈍り、

徐々に声は大声に、顔も近づけて話すようになる。

非常に危険行為無自覚のうちに行うようになり、そのうち

「おいおい、密だぞ!」「ワハハハ、悪い悪い!」などと大声で笑いごとにしてしまうことすら想像できてしまう。

短い自粛期間を潜伏期間として過ごしたウイルスたちが、晴れて店中にばらまかれ、クラスターが広がる可能性が高くなる。

年末になると、医療現場は更なる地獄を見ることになりかねない・・・


大阪府はどう考えているのだろうか。

恐らくは、上記ことなどとっくに把握済であることは間違いないのだろう。

その上で

「この期間中医療体制をそれなりに確保する動きをしたうえで、各方面にはなんとか正月の餅代は自力で稼がせてやろう」

といったあたりの着地点を目指しているんだろうと想像する。

先日、自衛隊に対し吉村府知事看護師派遣要請を行ったという報道も小耳に挟んだ。

それが実現・成功するかどうかは分からないのだが、これを踏まえたうえで、15日でこの赤信号は解除し、

前回と同じく「飲みに行くなとは言いません」的なことを発表するのだろう。

餅代は、恐らく大阪からは降りてはこまい。


看護師派遣要請も今更という気しかしないが、そもそも根本対応にはなっていないことは果たして認識できているのかどうか。

新型コロナ患者専用のベッド数には限度があり、

追加のベッド数をねん出するには新型コロナ以外の患者収容するベッドを転用せねばならないという事実に変更はない。

看護師の確保と一口に言っても一朝一夕どころか数か月で多人数を動員出来る話ではない。

見ての通り、この感染症は爆発的な感染力を持っている。

一時感染者数が減ったとしても、ひとたび再感染が起き重症者が増えてしまえば一気に現場が逼迫してしまうのは考えたら分かる事だ。

このままでは、なんとか掴みとれた餅を詰まらせてしま救急搬送されてくるご老人の命一つ救えなくなりかねないという事態になりかねない。

よく考えていただきたい。


医療崩壊はこうやって起きる、というシナリオを忠実に1歩ずつ歩んでいるこの状況を無傷で乗り越えるにはあらゆる対応が足りない状態だ。

ワクチン供給も、いつになるか分からない状態で、来年の夏のオリンピック開催を我々は果たして笑顔で見届けることができるのだろうか?

年の瀬になり、「中止になるのではないか」という個人的妄想してるプランが少しずつ現実味を帯び始めてきた気もする。

私としては、オリンピックは是が非でも開催していただきたい。

だが、この新型コロナウィルス感染症を抑え込む気がさらさらない日本が、どうして健全大会を開催できようか・・・

まぁ、オリンピックは国全体の問題であり、大阪とはあまり関係のないこと(そうでもない?)なのでここで言及はやめておこう。

一人の一般人として大阪府に望むことは、今にも崩壊しそうな医療現場必死で踏みとどまっている方々への背信行為となるような赤信号の解除の仕方をしないこと、

それと同時に、より強力な経済対策医療現場で働く方々への支援日本国政府に対して引き続き要請を続け、そして引き出して頂きたい。

そして私と同じ一般の皆さまにも、赤信号が解除されたからといって街に繰り出したりしないよう、

理性を保って行動していただけることを切に望む。


偉そうなことを書いて大変に恐縮している。

だが、何故このようなことを書いたかと言うと、実は先日持病の発作で倒れてしま救急搬送されたばかりなのだが、

新型コロナウイルス感染症の影響か近くの病院で受け入れてもらえず、遠く離れた病院へ回されてしまったのだ。

搬送先で短期間ながら緊急入院となった訳なのだが、そこの病院も新型コロナ用の隔離病棟を準備していた関係一般病室に空きがなく、

やむを得ない形で、ぱっと見ではホテルなのではと見紛うような個室に入院することとなった。

病院都合なので、当然部屋代医療費に含まれ・・・

いいのか悪いのか複雑な気持ちになったものだが、だがこれは全く他人事ではないと身をもって体感たかである

何かあった時に入院できなくなる事態、考えただけでゾッとするものがある。

そして、それは自分だけでなく祖父祖母・父・母・そして家族にも降りかかる災難となる。

助かる命が助からなくなる医療崩壊が今後起きてしまうと、未曾有の大災害匹敵する凄惨たる光景を目にすることになるだろう。

それだけは、いやだ。

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