そこは家族経営で、とても小さな会社だが、全国展開の大きな会社との取引もある。
私が入社した当時、20代の社員は私を除いて2人いた。翌年、私よりも年上の大卒と、私よりひとつ年下の短大卒の新入社員が入った。
入社5年以上のA、私のひとつ上の先輩B、私のひとつ上だが後輩のC、私のひとつ下の後輩D、そして私だ。
辞め方は最悪だった。辞める1ヶ月前、なんの前触れもなく突然辞めると言い出したのだ。
ドタバタの引き継ぎを終え、Bの仕事は主に私と後輩2人で請け負った。
辞めた理由は察することしかできないが、恐らく社風が合わなかったのだろう。
案件ひとつひとつを早く済ませて回転率を上げたい社風と、ひとつのものにじっくり向き合いたいBのやり方が合わなかったのだと思う。
また、部長との馬が合わなかったのもあるのだろう。
あとを追うように、数ヶ月後にCが辞めた。
辞めた理由はほぼBと同じだと思われるが、主に部長との馬の合わなささが、辞めたい気持ちに拍車を掛けたのだと思う。詳しい理由は私も知らない。
Cの仕事は、Dと私で請け負った。
余談だが、新入社員の頃から行なっていた私の雑用を、やっとCに伝授したばかりだった。正直なところ、辞めるのであれば教える時間が無駄だったと思う。
翌年、誰も辞めなかった。
私が入社4年目の話だ。
誰も辞めなかった、良いように聞こえるだろう。
事件は同年の確か秋だったように思う。
Dが辞めると言い出した。理由は、都会に住んでいる彼氏と結婚を前提に一緒に住むから、だそうだ。
Dも入社3年目を迎え、少し大きな仕事を渡そうと上の者が話していた矢先のことだった。
D曰く、大きな仕事を引き継ぐ前に(迷惑をかけてしまうから)辞めよう、と思ったとのことだった。
この翌月だったか、今度はAが辞めると言い出した。
Aは仕事はできるが、抱え込みやすく頻度は高くないが倒れてしまうことがたまにあるとのことだった。表向きの辞める理由は体調不良だ。
本当は辞めたくて仕方なかったらしい。Dが辞めることにより、Dの仕事が回ってくることを恐れていたのだ。
そんな爆弾を抱えたまま、2人が辞めるまでの時を過ごした。
年が明けて2人が辞めるまでの3ヶ月、言葉を選ばずに言うと地獄だった。
Aの仕事は部長と半分ずつくらいに分けた。Dの仕事はほぼ全て私が請け負った、その中にはDがBから受け継いだ毎月発刊の冊子物(全20〜30ページ)の仕事もあった。私も手伝ったことがある。
私の仕事は2倍どころではない。まためちゃくちゃ増えた。
そんな弊社に新しい風を吹かせたのは、2人が辞めると言う前に内定を出した新卒だ。
新卒は冬にはインターンとして、会社に来ていた。忙しくしていた私の代わりに、Dが新人教育を行なっていた。
正直、この年のことは全く覚えていない。
毎日がタイムトライアル。ストレス発散で食べていたお菓子のせいで、10kg近く太ってしまった。
私が入社6年目、誰も辞めなかった。
5年目でやってきた仕事も捌くコツを掴み、少しの余裕を見せていた。
実は契約社員からパートになった人がおり、社内の雑用を請け負ってくれていた。多分10年近くいるパートだ。この人も辞めてしまった。
そんなに大きな痛手ではないが、念のため表記しておく。
ここで新人の話をしよう。
今年3年目になるが、校正もできない、何か作業を渡すと必ずミスをする、デザインもできない、電話も何言っているかわからない、ほうれんそうをしない、誤字脱字が多い、人に作業の割り振りができない、毎月の作業を忘れる、優先順位がつけられないなど、もう散々だ。
正直、いる意味が皆無だ。
とはいえ雇っているのだから、何かしらは作業をしてもらわないとと思い、作業を渡すのだがはちゃめちゃになって返ってくる。
会社のパソコンで二次創作を見ているのか、お願いした作業ファイルに二次創作の小説のURLが貼られていたこともあった。
本人には悪いが、やる気も見られないし、成果もないのだ。
今はインターンと称して週2回ほど、うちに来ている。
勘のいい人なら気づくかもしれない。
この大学生は専用ソフトの使い方はおろか、パソコンの使い方も全くわからないのだ。
小学生の頃からパソコンに慣れ親しんできた私にとって、パソコンが使えないということが未知の領域だった。
「フォルダってどう作るんですか?」「これってどこに保存されるんですか?」
もう散々だ。ソフトだけではなくパソコンの使い方まで教えなければならないなんて。
彼女への指導はベテラン(もう20年近くうちで勤めている)が行なっていた。
それがいつしか私に代わり、なぜか部長も口を出すようになった。
私が教えたことが、部長によって塗り替えられていくこともある。
私が教えたことを、まるで初めて聞くかのように耳を傾けることもある。
私は疲れてしまった。
あれだけ涙を見せるのが嫌な私が、本当に仕事が間に合わないとき、忙しいとき、涙を目に溜めながら仕事をしている。
これは悲しみの涙ではない。
上手く事を運べない自分自身の実力のなさが悔しい。悔しさと怒りの涙だ。
気付けば、もう7年も会社にいる。
来年、あの大学生が入社したら、社内はどう変わるのだろう。私は心配でならないのだ。
その通りだと思う。
嫌なら辞めればいい。私もそう考えている。
30も近くなってきて、本当に仕事を見直す時期に来ているのかもしれない。
この会社のいいところは、夜中まで仕事をしないというところだ。同業他社だと、夜中までだとか休み返上で…という話もよく聞く。
それがこの会社にはない。
要は築き上げてきた地位(と言っても大したものではないが)を崩し、一からやり直すことに恐怖している。そして、自分の時間を確保できることにメリットを感じている。
悩ましいな。
そう思うだろう。
だがしかし、会社に対して不満があったとしても、おおよそ引き継ぐ相手は直接的な関わりがないし、もしかしたら同じ被害者かもしれない。
よって、残された者の苦労には少し配慮してほしい。
引き継ぎの時間はきちんと設けてあげてほしい。少しでも環境を整えていてほしい。
散々言われてきた言葉だ。
その度に張り倒しそうになった。
辞める側は私のことを気遣って言ってくれているのかもしれない。わかってはきるのだ。
けれども、お前のせいでこうなってるんだろ、と思う。
私は心が狭いので、生き霊がつくほど恨んだ。(実際に生き霊がついたかどうかは知らない)
こんなに赤裸々に語ったことがもし会社にバレて怒られ関係が悪化したとしたら。
辞めるいいきっかけになるかもしれないな。
ポートフォリオはよ用意せえや
その通りだわ準備しよ
ブッチでないなら別に良い辞め方じゃね? 一ヶ月前なら法的にもおけーなハズ
月ごとの仕事があるから、甘えかもしれないけど最低でも二ヶ月はほしかったところ。ブッチじゃなくて本当よかった
何故そんなポンコツ雇ったの?
上司たちの見る目がなかったのかなあ
上司たちの見る目がなかったのかなあ