そのことを考えていたら、昔のことやら色々思い出してしまった。
今朝起きたことはこうだ。
毎朝のことではあるが、本日の私はやらなければいけないことや、昨日中に起きた細かい色々についての対処をどういった順番でどのような手段で処理していくかなど、頭の中で1日の予定を確認しながら身支度を整えていた。
洗面台を、あともう少しで使い終わろうとしている頃合いでのことだ。
母は私に向かって、「汚したままにしないでよ?ちゃんと片付けて行ってね」と言った。
この一言に、何故かどうしようもなく腹が立った。というか、色々なものが一気に思い出された。
私の心が狭いというのはあるかもしれない。
しかし、だ。
私の予定というか、『当然やるべきこと』のうちに、洗面台を片付けてから服を着替えるという流れは既にあった。当たり前のこととして。
『洗面台を汚したまま出かけてしまうこと』が母の嫌がる行為だとして、まだ何もされていないうちから「これやらないで、ああはしないで」と言ってくるのはどうなのだろうか?
これを言われた時、私は咄嗟というよりも半ば反射的に「まだ使い終わってもない(のに何言ってるの)」と言ってしまった。
それから、私が家を出るまで母は始終不機嫌だった。
私が悪いのか?
後から起きてきた父は私たち2人の醸し出す雰囲気を見て至極面倒臭そうにしていたが、私だって面倒臭い。
何故計画的に、なるべくスムーズに諸々をこなそうと動いている最中、あたかも私が家を汚したまま出ていくかのような言われ方をしなければならないのか。
もしも私が洗面台を汚したまま出かけたのなら、その時に言えばいい話である。もっとも、先から洗面台を『汚す』と書いてはいるが、歯ブラシを歯ブラシ立てに立てる立てない・うがい用コップを元の位置に戻すもの出さない程度のことであり、私を始め家族の誰もが元からある洗面用具以外のものを持ち込んで散らかし放題なんてことは一切しない。水しぶきだってみんな当たり前のように拭ってから洗面台を離れる。
私を含め、家族に洗面台を汚く使う人間はいないし、直近に誰かが汚したままにしたという話もなければ、母も取り立てて潔癖というわけでもない。
だから、そもそもの話、「汚くするな」と言われることこそがわりと首をひねりたくなる指摘ではあったのだが。(もっとも、そこで引っかかったおかけで、過去の諸々も思い出せた)
たまたま母の機嫌が元から悪かった可能性も考えたが、それはない。
私が洗面台に向かう直前まで、余計な口を出してくる時でさえ、母はいつも通りだった。なんならいつもより機嫌は良かったかもしれない。
でもまあ、私も「まだ使い終わってもないのに」と、言いたいことはその場で伝えてあるのでこの件は私の中では終わっていた。
なのに、この母の不機嫌だ。
何故あなたがヘソを曲げている。
どうにも解せないのと、朝から気分が悪いのとで、支度が終わった後、母に直接訊いてみた。
「なんで怒ってるの?」と。
したら、母はこんなことを言う。
「怒っているのはあなたでしょう」
「だって、まだ何も間違ったことはしていない状態なのに、どうしてあんな文句調で、汚すなだのそのまま出ていくななどと言われなくてはいけないのか」
「汚されたら嫌だと思って言っただけでしょ。あなたのために言ってるの」
「まるでこれから汚すと決めつけられているようで、気分が悪かった」
母が言うコップの定位置とは洗面台の端のことで、軽いコップの位置なんて、ただ母が洗濯物を洗ったり取り出したりする時にだって、簡単に落ちてしまう。過去の私が元の位置に戻さなかった、いつも戻さないといった事実は無いのだ。
この口論まがいなやり取りをしている間、母は父のための朝食を作っていた。目玉焼きを焼いていた。
「母さんが言っているのは、まだ失敗していないうちから、『焦がすなよ、油をコンロに飛ばすなよ、皿を割るなよ』と口うるさく言われることと変わらないのではないか」
「そうかな。仮にそうだとしても、聞き流せばいいだけ」
暴論すぎる。
「言われた本人が、ああいう言い方はやめてほしいと言っているのに対し、聞き流せばいいと返すの?」
「汚してほしくないと思ったから言っただけで、悪いことは言ってないし」
「こういう言い方は嫌だよと言われたら、『わかった』だけで良くないか? 仮に承服しかねても、相手が嫌な気分になった事実だけは受け止めるなりしないと、今のあなたは聞く耳持たずでまったく会話になってないよ」
「はいはい、じゃああなたにはああいう言い方しないように気を付ければいいんでしょ」
こんな具合だった。
朝からこんなことがあり、今でも私は今朝の出来事を思い返したりしているが、思えば私の幼い頃から母はこういった教育の仕方だったように思う。
子供が、何をする前に、「するかもしれない悪事の可能性」を全て述べて、してはいけないと諭す方法だ。
その結果何が生まれたかというと、著しく積極性を欠き、拭っても拭いきれないほどの劣等感を抱いた下の兄弟だ。この2つは、程度が下の子の比ではないにしろ私にも要素はあるかもしれない。
母は、事前に「ああはしないで、こうはしちゃだめだから」と伝えておくことで、万が一子供達が粗相をしでかしたときに「だから言ったじゃない、ちゃんと言っておいたのに」という怒り方をする。
子を持たない私でも、こういった叱り方はあまりよくないものだとわかる。
この叱り方は、子供を臆病にさせる。
なぜなら、事前にあたかも私たち子供が悪事を働くことを前提にしたかのような言われ方をすると、「私は、母にそんな懸念を抱かせるような子供なのだな」という意識が知らず識らずのうちに根付いていく。
今でこそ、今朝のようなやり取りをしても(私ももういい大人なので)思考は母のやり方への疑問にとどまるが、これが仮に上司から放たれた言葉だったならどうだろう。新入社員時代に上司からこういったやり方をされたなら、たちまち自信喪失して言われたことしかできない役立たずになっていた自信がある。少なくとも私は。
母が私たち子供に与えた影響は、主には下の子に、良くない形で現れてしまった。
下の子は自分に自信がなく、誰かの指示を待ち、自分からは動けない子になってしまった。数年前までは、明確な指示が出るまでは動かずとも(怒られていないのだから)何も問題ないとさえ思っている様子だった。良いことも悪いこともまったくせず、動かないことこそが安全だと思っているというか。その思考回路は、「だって何も言われていないし、私なんかが勝手に動いたら迷惑をかけたり、何を偉そうにとか思われるかもしれないから」らしい。深刻だ。
一方、私の方はというと、下の子ほど臆病にはならなかったものの、仕事などの面では結構なせっかちにはなってしまった。「◯◯なんて失敗はしないでね(後が面倒だから)、△△だけはやらないで(後が面倒だから)」と言われたくないばっかりに、学生時代の部活や就職してからも、一刻も早く上の人や周りの求めていることを察して動き出さないとと常に急いでいた記憶ばかりだ。言われたくないなら言われるより前に成功させてしまえばいいの思考だったのだろう。少しでも失敗する可能性や、わからない部分がある場合は、事前牽制をされるよりも前に積極的に上の人に聞きに行った。少しでも母のやり方に重なるような言い方(こちらが失敗をするかもしれないと思われているのかもと感じてしまうような言い方)をされるのが苦手だったから、注意はなるべくされるよりも前にこちらから確認しにいくようにしていた。
本当に、
「◯◯しないでね、△△は勘弁してよ」という牽制が、心底苦手だ。
注意事項を盛り込んだ事前説明などはまったく問題ない。あれは、「あなたが失敗すると決めつけているわけではないけれど、以前にこういう事例があったので注意を払って進めていこうね」という教えだ。
母のやり方には、「あなたが失敗すると決めつけているわけではないけれど」という前提が大きく欠けているのだ。
洗面台を綺麗にしてから出かけて欲しいのなら、そう言えばいい。
「(まだ使ってる最中から)汚さないで、片さないまま出かけないで」より、「洗面台を綺麗な状態で保ちたい」と言われる方がどんなに良いか。
もしかしたら、母は私が指摘した『前提』の部分は、自分では言った気になってるのかもしれない。
いや、言ってないからな。
今日初めて聞く言い方なら気に障ることもなかったのだろうが、昔の諸々を一気に思い出してしまった。
幼い子がこれをやられると、「そんなに悪い子だと思われてるのか」という自信喪失にしか繋がらない。
こういう教育をしている人は、言い方一つ変えるだけなので、是非気をつけてほしい。下手をすると、私の下の兄弟のように、就活どころか学生バイトですら苦労する子になる可能性がある。
普段からきれいに使ってりゃそんなこと言われないだろ
お前が悪い
お前が悪い
記事を書いた本人です。 ボカしたくて兄弟と書いてはいますが、ここに出てきた人物は自分も含めて父以外は全員が女です。母に理解されにくいような洗面台の使い方はしていないと思...
長すぎて最後まで読んでないけどあまりにしつこく牽制されると嫌な気分になるのは分かる たとえば車運転してて2-3回気をつけろって言うくらいなら別にいいけど、毎回毎回言われると...
ご意見ありがとうございます。 そうですね、繰り返し同じ失敗をするので事前にセーブをかけられるのならまだわかるのですが、身に覚えのないことやしてもいない失敗の可能性を出さ...
今日も女は毒親叩き
非常に良くわかる。 そんなに心配しないでいいからってやさしく言ってあげるのがいいと思いました。
昨日「牽制する系注意の仕方」という記事があったけど、 何も問題が起きていないうちから、あれこれ言われると気分が悪くなる、 というのが「夫の仕事のやり方が昭和すぎる」の問題...