「そういえば私たちもきっかけはそうだったね」って嫁が言ってたから備忘録として残しとく。
俺
・24。
・嫁いわく髪の短い寺島拓篤。
・書店勤務。
嫁
・28。
大学在学中。週1で通ってたとらのあなの近くで右往左往する女性が目に入った。
普段なら緊張で会話も成立しなかったと思うけど、後期のテストが終わり機嫌がよかった俺は声をかけることにした。
確かどうかしましたか?とか道に迷ってるんですか?みたいなことを聞いた気がする。
「えーっと、とらのあなに行きたいんですけど」
びっくりした。こんな美人からとらのあななんて単語が出るとは思わなかった。
「あー。わかりました。案内しますね」
美人は美人だ。オタクとか関係なしに一緒にいると緊張はする。案内の途中、俺は終始無言だった。今思えば向こうもなんとなくそれを察してくれたんだと思う。
「ついたんで、それじゃ」
とらのあなに付き、ここまで来ればあとはいいでしょうと言わんばかりに別れた。
そこには、さっき案内した美人が同人誌(一般向け)を物色する姿があった。
びっくりしたと同時に親近感が湧いた。
プロデューサーとはそういう生き物だ。相手がプロデューサーなら多少の壁が壁に感じなくなる。
「プロデューサーさんだったんですね」
「え。あっ。さっきはありがとうございます。もしかして、プロデューサーですか?」
そこから同人誌を1冊1冊を見比べながら「この絵がいい。こっちも可愛い」と盛り上がった。
ふと気づくと店は閉店時間に迫っており、彼女は吟味した本何冊かをレジに持っていった。
本を選ぶ中で確信したことがあった。
当時は1stライブすらやってなく、SSAと劇場版で以前よりは認知されだしたかなぐらいの時期だった。
周りはみんな765をメインにしている中で、自分と同じものを好きな人に出会えたのが嬉しかった。
レジから戻ってきた彼女にそれとなく聞いてみると「そうなんですよー!!周りに好きな人がいないんですけどね……」という返事が返ってきた。
とらのあなが閉店して店を出る。
正直話したりなかった俺達はどちらからともなしにそのまま食事に行くことになった。
楽しい時間はあっという間というもので、彼女が終電間際ということで駅まで送ることにした。
楽しかったし、別れたがった。
またどこかで会える保証はない。
改札に行く途中、俺はなけなしの勇気を振り絞ってこう言った。
「あの。こうやってまた話したいんで。LINEID教えてくれませんか!」
失敗したと思った。Twitterの方が良かったと思った。
「いいですけどQRの方が早くないですか?」って言ってくれた。
それからバイトと学校をこなしながら空いた時間で彼女(「ぴょん」ってあだ名の女性声優に似てるから「ぴょん」って名前ってことにしとく)とのLINEが始まった。
ぴょんにも俺にもミリオンライブについて話せる人がおらず、ぴょんとLINEを交換してからは本当に楽しかった。
ぴょんとはいろんな話をして、その中で彼女の人となりを知っていった。
ファッションが好きなこと。
ぴょんは自分をしっかり持っている強い人だった。そんな彼女に俺は強く惹かれた。
ぴょんと知り合って半年ぐらいが過ぎたタイミングで、ミリオンライブの1stライブが行われた。
その演者は、ミリオンライブ稼働初期からコンテンツの中心を担っていた人の1人で、いわばミリオンライブにいることが当たり前になっていた。
そんな人でも、参加出来ないようなことがあった。
当たり前が当たり前じゃなくなるのを目の当たりにした瞬間だった。
ぴょんとLINEが出来なくなったらどうしよう。
俺の頭にそんな想像がよぎり、後頭部を殴られたような衝撃を覚えた。
ぴょんと一緒に参加したライブが終わり、俺会場になった中野サンプラザの前で彼女に告白した。
彼女が当たり前じゃなくなる前に、この気持ちを伝えようと思った。
答えはオーケーだった。
理由はわからない。ぴょんの中で情のようなものが湧いていたのかもしれない。
けど、それでもいいと思えるくらいに俺は彼女のことが好きだった。
ぴょんとは本当に順調に付き合うことが出来た。
たまにちょっとしたことでケンカした時に「そんなに百合子(俺の担当アイドル)が好きなら百合子と付き合えば良くない!?」って言われたりもしたけどそれすらも楽しかった。
俺はどの業界に行くか決めていた。
俺は、書店の中でも安定して働ける駅ナカ書店を多く経営している会社にターゲットを絞って就活を進めていった。
就活を無事終え、何事も無く大学を卒業した俺はぴょんと同棲を始めた。
店からスーツを着て出勤するのは少し浮いている感があったが、ぴょんのためと思えばすぐに慣れた。
就活で3rdライブにはLVでしか行けなかったがぴょんは「一緒にいけるならLVでもいいよ」って言ってくれた。
3rdライブ最終日。ミリオンライブ稼働当初からの目標であった武道館ライブが決定した。
その日の帰り、俺はぴょんにこう言った。
「来年は一緒に行こう。それまでに仕事を安定させる。武道館2人で行って……結婚しよう」
今思えば支離滅裂だったけど、ぴょんはそれでも喜んでくれた。
そして武道館2日目。
俺とぴょんはライブを終わったその足で、役所に婚姻届を出しに行った。
俺の担当の七尾百合子役と、ぴょんの担当の藤井ゆきよが同じステージに立つ日だったからだ。
担当2人……いや、4人に見守られて、俺達はその日夫婦になった。
振り返ってみたらとらのあなそんなに関係ないけど多分あの時とらのあなでぴょんに出会えてなかったら全然違う人生を歩んでたんだなって思うからこれも1つのとら婚ということで。
つまんない創作系実話は勘弁してくれ。せめてもっと人物のキャラ立ててくれ。彼女がうんこ食いたがってるくらいパンチがあっていい。古着屋勤務のオタクの美女にウンコ食わされる...