2011-09-01

高収入の人ほどSNSを使っている」という嘘が出来上がるまで


あるいは「SNSを使うと高収入になれる」というデマが流れるまで。

世の中は事実と異なる煽り記事があふれている。実際には嘘であることをそれとなくまかりとおすことは風説の流布になる。フィクションであるなら構わないが、それならば断っておく必要があるだろう。そのような煽り記事に対する傾向として、最近の記事を事例として「なぜ高収入の人ほどSNSを使っているのか 」を例に情報の歪みをまとめておきたい。

まず最初元ネタ記事。

ソーシャルネットワーク職場の人とつながっている? | DODA ホンネの転職白書

http://doda.jp/guide/ranking/044.html

を見てほしい。これから言えるのは

[煽り傾向その1 サンプルの質を述べない]

最初の歪みはサンプルの質であるDODAであればそもそも「転職を考えている人間」であろうことが明示されていない。転職を考えているのなら少なくとも、性質上、縁故採用を期待するのは当たり前である。ならば転職者のSNSの利用が高くてもおかしくない。

一部引用すると、

順位 職種別 SNSの利用率

1 メディア広告 75.6%

2 IT/通信 64.7%

3 金融 56.9%

順位 職種別 SNSの利用率

1 企画/マーケティング 82.1%

2 クリエイティブ 80.5%

3 ITエンジニア 62.8%

とあるが、これも転職者が前提であれば、あるいは、DODA顧客が前提であれば、SNSの利用率以前に流動性の高い職種が上位にくることは自

である。したがって、転職者ほどSNS利用率が高いということではないだろうか。

一部引用すると、

SNS上で仕事関係者交流するビジネスパーソンは、身近な同僚と会社内のコミュニケーションだけに留まらず、プライベートでも積極的にコミュニケーションをとっていることがうかがえます。一方で上司や部下、取引先については、SNS上では多少距離を置きたいと考えているようです

このことは転職検討者ならば当然(上司や部下に内緒にしたいため)のことであり、サンプルの質により曲解ではないか。これらはサンプルの質を述べないために起きることである

[煽り傾向その2 サンプルの量を述べない]

順位 年収別 SNSの利用率

1 900万円台 68.4%

2 800万円台 66.7%

3 1000万円以上 60.0%

4 700万円台 57.4%

5 400万円台 56.5%

だそうだが、そもそも900万円台が何人いるのかどうかが述べられていない。相対的には少ないはずというのは予想できるが、傾向その1のとおり、上記職種の年収比較的高いがゆえに利用率が高いだけではないだろうか。900万円台の人数と職種の比率を述べずして

年収が高いビジネスパーソンは、SNSを積極利用する傾向に

と結論づけるのは、ないものをあるように見せているだけのようである。それならば、なぜ1000万円以上がなぜ下がっているのか?同じく500~600万円台で下がるのか?その理由も述べられていない。そうではなく「企画/マーケティングクリエイティブITエンジニアSNS利用率は比較的高い」というのなら理解できる。実際、この情報からはそれだけしか読み取ることができない。年収が高いビジネスパーソンSNSを積極利用というのは論理の飛躍ではないか。裏を返せば1000万以上職種は企画/マーケティングクリエイティブITエンジニアではないということをまず述べるべきであり、DODA顧客転職者としては母数が多くない職種ではないと推測できる。おそらく流動性の低い職種であろう。つまり高収入公務員医者と考えられる。これらはサンプルの量(と、それに対する比率)を述べないために起きることである

[煽り傾向その3 関係ないデータを持ってくる]

一部引用すると、

DODAに登録いただいた転職者約5000名の、TOEIC®テストの点数別に平均年収を見てみると、TOEIC®テストの平均点に近い550~599点の平均年収405万円に対し、900点台は528万円と、123万円も高いことがわかっていますDODA調べ)。これらの調査結果をあわせみると、Facebookなど海外ユーザーコミュニケーションをとる機会が多いSNSの普及と、語学力が高いユーザーの参加が増えたことが、年収別の利用率に関係していると考えられます

実際には別の調査であり、まったく関係がない。にもかかわらず、同じ記事で関係されている。なぜなら「550~599点の平均年収405万円に対し、900点台は528万円と、123万円も高い」ことは年収900万円が利用率の高い説明にはならないかであるTOEIC900点台が528万円であることならば、500万円台は54.3%でしかない。さらに「SNS利用率の高いユーザ英語できること」の調査結果はどこにもない。

蛇足だが「TOEICの点数と年収の相関」の調査はあるようだ。

http://www.english-resume.net/indiv/ent-41-10.php

しかDODAのこれらの調査記事は「転職検討者に限ったデータです」あるいは「企画/マーケティングクリエイティブITエンジニアに限り」などのバイアスに対する前置きさえあれば、特にいかがわしいものではない。間違った推論は余計だとしても、それが転職検討者のデータであるならば、理解できる部分が増える。そして、もっとも問題になのは事実を捻じ曲げたタイトルをつけてしまった次の記事である

年収900万円台」の利用率は68.4%!なぜ高収入の人ほどSNSを使っているのか

http://diamond.jp/articles/-/13776


[煽り傾向 その4 都合のいい抜粋と、嘘の組み合わせ]

このタイトルはつまるところ「年収高くしたければSNSを利用せよ」という錯覚を引き起こす煽りである。実際にはその相関も因果も何も説明

されていない情報二次コピーしかない。少し譲って「「年収900万円台」の利用率は68.4%!」は、DODAの調査からそうであったとしよう。しかし上記で説明したとおり、「なぜ高収入の人ほどSNSを使っているのか」というタイトルは嘘である。実に巧妙に、この記事にはタイトルに嘘が50%含まれている。たぶんこのような誘導に慣れているのだろう。文章中に「なぜ高収入の人ほどSNSを使っているのか」という説明はどこにもない。diamondの記事ならば、せっかくなのでば600万円台、500万円台の利用率がなぜ400万円台より低いのかを分析したらどうだろうか。忙しい500万円~600万円の人はSNSの利用率が低い。とでも書いたらどうか。

これらを真に受けないように対策も述べておく。

[煽り対策その1 過去データを探す]

日本SNS利用率、世界5か国中で「最低」

http://www.j-cast.com/2009/05/29042167.html

主な利用目的SNSであるのが36%と世界5か国中最も低い結果ということであり、直接上記の問題と関係はない。だが、どうやら思ったより熱

狂的ではないことは感じ取れる。震災後にSNSの利用ユーザー増えたという時期的なデータもある。

[煽り対策その2 全体のデータ比較する]

平均年収年収転職ならDODAデューダ

http://doda.jp/guide/heikin/

職業年収サーチ-職業ごとの最新給料調査-年収ラボ

http://nensyu-labo.com/2nd_syokugyou.htm

を比べればわかるが、DODAデータはやはり局所的であり、上記で推測したとおりの前提付きであろう。「流動性の高い職種ではSNS利用率が高い」あるいは「ITに関係する職種ほどSNS利用率が高い」という当たり前のタイトルがふさわしいのではないだろうか。それ以上ではない。

[煽り対策その3 批判記事を参考にする]

上記のとおり、年収SNS利用率の相関も因果も確認されていると言いがたい。これを別角度から説明した良記事がある。

本当かな? 「年収が高い人ほどSNSに積極的」

http://www.j-cast.com/kaisha/2011/08/24105238.html

このような疑問や批判精神から記事が作られることは、メディアの失われつつある機能であり、稀にしか書かれることはないが、もし存在するのならばそちらの記事を合わせて読むことが重要である

回答者の87.5%は600万円未満で、ボリュームゾーンは300~400万円です

ということであり、傾向その2は証明されたようだ。これでは確率的なブレの域を出ない。つまり次の調査では異なった結果が出る可能性が高い。

900万円台の人が占める割合は、わずか1.4%。1000万円以上も1.7%に過ぎない。30.8%を占める300万円台の20分の1。高収入者はもともと、SNSの利用率で一喜一憂する必要もないほど少数派だ。「自分SNSをこんなに使っているのに、なぜ収入が低いのか」と自信を喪失しないようにしたい。

まったくそのとおりである。自信を喪失する必要などまったくない。少数をあたかも全体のように説明してはいけない。

[最後に]

なぜかマスメディアはなぜかSNSの利用を煽る傾向がある。自らの利用率が高いものは良いと当然、適用しようと思うのかもしれないが、私はSNSに熱狂したり血道を上げている人間に立派な人を見かけたことがない。正しいかどうかはわからないが(と、あらかじめことわった上で)現状のSNSの利用率に関する私の感覚を言うのならば、

SNSの利用率と年収は関係ない

SNSの利用率が高い人ほど転職率は高い

SNSの利用率が高い人ほど離婚あるいは交際回数が多い

SNSの利用率が高い人ほど英語ができない

SNSの利用率が高い人ほど消費性向が高い

SNSの利用率が高い人ほど飽きっぽい

ではないだろうか。つまり極論としては日本においては

SNSの利用率が高い人ほど不幸である(不幸をアピールする場でもあることから

という気がしてならない。どなたか証明していただければ幸いである。

  • 超斜め読みな上に些細な所に突っ込むが DODAの顧客=転職者としては母数が多くない職種ではないと推測できる。おそらく流動性の低い職種であろう。つまり高収入の公務員や医者と考...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん