2020-08-18

売却癖

衝動的に手持ちの物を売り払う癖がある。

売り払うものゲームソフトだ。

親共働きで鍵っ子、家に誰もいない中私の遊び相手になってくれたのはゲームだった。

スイミングクラブ上級試験に受かったご褒美に買ってもらったマゼンタゲームボーイカラーと、ポケットモンスター銀

近所の金持ちにいちゃんが貸してくれたゲーム機が自分の家にあって、しか自分の持ち物になるなんて!箱から出したてピカピカのランドセルを背負った時と同じくらい嬉しかったものだ。

それから「いつかは卒業するだろう」と思いつつ中学ではファイアーエムブレムMOTHER1+2出会い高校では星のカービィUSDXタイムアタックに熱を上げ、大学ポケモンXYに出戻りし……

現在も私はswitchスマホを握り締めてゲームと向き合っている。

大人になったらゲームをやめるなんて大間違いだった。

しろアダルトゲームができるようになると名作ADVを男女BLの境なくやりまくったし、今はSteamやらDLsiteプロアマチュアの垣根なく無限面白いゲームを購入することができるのだ。

幼い頃のように没頭できる時間はなくなったけれど、購入本数は増えたと思う。

しかし、先述した通り私には売却癖?がある。

高校の時だ。私は手持ちのゲームポケモン銀とプラチナを残しすべて売ってしまった。

きっかけは正直思い出せない。ただ、私の高校生活はお世辞にも楽しいものとは言い難い。

友人とは一度も同じクラスになれないのに、とんでもない女(教師カマキリをくっつけておおはしゃぎする等)とは二年同クラスな上修学旅行の班も同じ。

本命に落ちて来た学校だったので授業のモチベも終わっていて、ついでに入学時両親が離婚した。

確たる理由はわからないが、私はゲームを売ってしまった。

そしてゲームをすることもやめた。親が禁じた訳でもなく、ほかに趣味がある訳でもない。受験勉強に打ち込むでもなく、高校生活を惰性で消費していった。

そして大学、私はふとゲームをやりたいという感覚に襲われた。高校から抜け出したことメンタルに余裕ができたのだろう。

衝動的におもちゃ箱(というかゲーム箱だが)を漁って手にしたのは、折りたたみ式のゲームボーイアドバンスSP。早速何かやろうとカセットを入れていた巾着をひっくり返した。出てきたのは、ポケットモンスター銀。それだけ。

そこからはもう怒涛だった。

「お母さん!ポケモンの古いゲーム捨てた!?」「アンタが売って良いっていったんでしょ!?」とかい迷惑まりないやりとりをして私は中古屋に走り、探していたものを見つけた。

ポケットモンスターサファイア不思議のダンジョン青の救助隊、闇の探検隊ポケモンコロシアム、ポケモンチャンネル………それからカービィ鏡の大迷宮USDXMOTHER1+2トマトアドベンチャー。ここに書ききれないくらいの私の思い出は、そこにあった。

けれど悲しいかな、大1でバイトもろくに始めていない私には全てを買い戻すことはできなかった。いつか絶対買い戻そう、そう胸に誓って500円箱なしのトマトアドベンチャーだけを手に私は店を出た。

帰ってきてすぐ、私はポケットモンスタープラチナを起動した。本当はサファイアをやりたかったのだが、私が手元に残しデータが飛んでいないソフトはそれだけだった。

すごく、面白かった。何をして良いのかわからず各街に飛んで聞くBGMも、適当に組んだパーティレベル80代のライバルボコボコにされたことも。

あの時得た端金で買った名前も知らないスナック菓子にかえていいものじゃなかった。何年越し、何十回目の殿堂入りを果たした時、私は泣いた。

そしてその夜、人生ではじめてバイト用の履歴書を書いたのだ。

人生初のアルバイト苦痛の方が多かったが、おかげでソフトほとんどは一年以内に買い集めることができた。FE系のソフトと一部のハード大学生の懐には痛かったけど、ようやく自分を取り戻せたような気がした。


……自分を取り戻せたような気がした?


ここに来て私はゲームに相当な依存心を持っていることに気がついたのだった。

職場ゲーム趣味について弄られると「まあゲームに育てられたようなもんなんで!w」と冗談で返したことはあったが、どうやら真実(マジ)らしい。

そして現在コロナ無職である

バイト貯金繋ぎつつ、精神を削られている毎日だ。

疲労ピークに達した時、ふとあの時の感覚が頭を過ることがある。売ってしまえばいい、と。

今手にしているswitchを手放した時、私は今度こそ自我を失うかもしれない。

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