私はしがない字書きだ。ドマイナーなジャンルで細々と字を書いている。比較的男性向けのジャンルだが女性のファンも多く、イベントがあるとサークル参加する人の割合は女性の方がかなり多いと思う。
そしてありがたいことに小説もそこそこ読んでもらえるようで、本を出せばそれなりに出る。小説本を出す人も少なくない。匿名の記事で時たま見かけるような、「字書きには人権がない」みたいなことを感じたことはあまりない。時々絵師の言葉の端々から「あぁ字書きのことを下に見てやがるな」と思うことは全くないとは言わないが、比較的温かい雰囲気の中で書かせてもらっている。
絵師様に挿絵や表紙を依頼しても嫌な顔をされることはあまりないし、光栄なことにコラボをさせてもらうことも時々ある。
そんな中で、私が感じたことをつらつらと書かせてもらいたい。
これに限る。
コラボをさせてもらう。字書きの私からすれば、自分では逆立ちしたって決して描けない神絵がやってくる。
そりゃもう持てる語彙すべてをフル回転してその感動を伝える。いやだってほら、こんな素晴らしい絵を描いてもらってる。しかも自分のために。
自分の話を元に描いてもらった神絵、もしくはその神絵にこれから自分が話を付ける権利を有している。こんなに嬉しいことはない。
テンションも上がる。絵をほめちぎる。なんなら褒めているという感覚はほぼない。自分の心の奥底から湧いてきたこの感動を言葉にしているだけだ。
そしたら、絵師様もとっても喜んでくれる。嬉しい、こんなに褒めてもらえるなんて、と私の書いた感動の言葉に対して感動したと返事が返ってくる。
「こんな細かいところまで見てくださって本当にありがとうございます!」
「ラフを投げただけですごく褒めてくれるので筆が乗りました!」
「もらえた言葉があまりにも嬉しくて、家族に報告しちゃいました!」
……まじか?そんなに喜んでもらえるの??嬉しいのは私の方なのに??
ちなみにこれは私個人に限った話ではない。
過去に複数の絵師と字書きが集まった企画を行った時も、グループDM内では字書き仲間は私と同じように興奮の極みのような感想を送り、絵師はそれに対してこちらが逆に申し訳なくなるくらい、感想ありがとうの言葉が返ってくる。
ここで私は気付く。
……もしかして、絵師様って普段はそんなに褒められてない……?
こんなに素晴らしい絵を描くのに?
日頃から私たちのタイムラインをあんなに素敵に彩ってくれるのに?
確かに『感想くれ!』っていう叫びを書いたお気持ち漫画やお気持ちイラストを見かける。
確かに私たちも、リプライ欄であのテンションで垂れ流すのはどうかと思うので感動をぐっと閉じ込めてふぁぼりつで済ましてしまうことがある。
コメント欄の半分がびっくりマークと三点リーダーで埋まってしまいそうなので、「可愛い」「素敵」と短い言葉で済ましてしまうことがある。
日頃から交流を持ち、長文リプを送り合っているような関係じゃないと、突然ツイッター上で鼻息荒い感想リプライは送りにくい。字数の制限もある。
そうか、絵師様はこんなに絵がうまくて可愛くて最高の作品を生み出すのに、こちらの思いが届いていない。
Twitterという公の場所で絵を投稿している以上、140字以上の感想を貰えることは極端に少ないし、死ぬ気で出した本でも買ってくれる人はいる、直接自分の本を求めてきてくれる人もいる、戦利品報告の中に自分の本はある、……ただ、そこから個別に感想を貰えるかと言われれば、実際そう多くはないだろう。
絵を描くたび、イベントに出るたび、「褒めてもらいたくて描いたわけじゃない、私は自分が描きたいから描いたの!」……と、そう自分に言い聞かせて、満たされない承認欲求をなんとか誤魔化してきた人だっているだろう。
そこで、だ。
タイトルに戻ろう。
そうすれば、私たち字書きはあなたのために全力で話を考えるし、頂いた絵に対しては、持てる力すべてを使ってその感動を伝える。DMというクローズドな場所の中で、字数の制限もなく、他人の目もない状態で、あなたが私のために描いてくれた絵を全力で絵の良さを伝えていく。私とあなたしかいない場所で、まっすぐ100%あなたへの、あなたの作品への言葉を伝えていく。
「絵にお話とかつけてもらいたいな~」「お話に絵をつけてもらいたいな~」と何の気なしに言ってみて、乗ってきた人と組んでみるのも一つだ。
良いなと思った字書きの作品に対して「勝手に絵を付けさせてもらっちゃいました」と先に描いてしまってもいい(そんなことされたら字書きは大抵興奮と感動のあまり死ぬがすぐに生き返るので軽率に殺してほしい)
誕生日を迎えた字書きのおめでとうリプやフォロワーと絡む系のタグでこっそり伝えてみてもいい。
「この人に褒めてもらいたいな」そう思える人に、軽率にコラボを投げかけてほしい。
もしかしたら、「そんなことして迷惑なんじゃ……」と思う心配性な子猫ちゃん絵師がいるかもしれない。
安心して。字書きの99.999%は絵師のことが大好きだ。自分じゃ描けない『絵』を生み出せる人に対して、敬意を払っていないわけがない。(敬意を払っていない字書きがいる?そんなものは燃やしてしまえ!)
悲しいことだが、絵描きが字書きを下に見ることはあっても、字書きが絵描きを下に見ることはあまりない……と私は思う。
でも、それを逆手に取ってしまえばいい。絵師以上に褒めてもらえないのが字書きの世界、自分の話を好きだと言ってきてくれた人が誰であっても字書きは嬉しい。初対面の人でも。それが絵師さんならな尚更うれしい。簡単に字書きは舞い上がる。
絵師が字書きにコラボを持ちかける(字書きはちゃめちゃに嬉しい)
↓
字書きが一生懸命お話を考え、絵師さんもそれを元に絵を描いてくれる(字書き嬉しい)
↓
絵師さんの絵を字書きが最高潮のテンションで褒める(絵師さん嬉しい)
↓
ほら見て。嬉しいと嬉しいことが重なって、ほかの人まで嬉しくなる。これが世界平和。認められた、自分の作品を喜んで受け入れてくれる人がいる。そんなプラスの感情で創作が進む。
創作って一人の戦いだし、やっぱり辛いことだってある。だからこそ、好きな絵やお話を、嬉しい気持ちで創れることってこれ以上ない幸せだと思うんです。
なのでもう一度言います。