はてなキーワード: アル・アジフとは
10年以上フィギュアを集めた私が、今回フィギュアを売るにあたって、自分の気持ちを整理するためにフィギュアに対する想いを長々と綴った。
業者さんに送った文をほとんどそのまま投げる。業者さんの名前は出していいかわかんなかったからとりあえず空白にした。
自分でも今後読み返せるようにしておく。あと誰かに読んでほしかった。
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今から十数年前。高校最後の年に友人から食玩フィギュアをもらったのが、私とフィギュアの出会いでした。
あのころはガチャガチャ・食玩フィギュアが多数存在しており、小さいながらにそのキャラクターの特徴が捉えられていました。ゲームばかりしていた当時の私に多大な衝撃を与えてくれ、自分のオタク趣味の世界が少し広がりました。バイト代をガチャガチャにつぎ込み、クローズド食玩フィギュアの中身を数少ないフィギュア仲間とトレードしていました。
翌年進学してすぐ、自分へのお祝いとしてショップで初めてのスケールフィギュアを購入しました。マックスファクトリーのアル・アジフです。この頃はフィギュアの購入者層も限られており、ギャルゲのフィギュアが圧倒的に多かった時代でした。
これは偏見かもしれませんが、当時学生だった私のオタク趣味の中でスケールフィギュアというものは、とても高額でありかつガチオタが楽しむものだとされており、とてもハードルが高いものでした。友人間でも冗談で「そっち(スケールフィギュア)に踏み込んだら終わり」という謎の感覚が浸透していたので、ショップで会計をしているときは心臓が早鐘を打っているようにうるさく、とても緊張したのを憶えています。大きい袋を持って帰路につき、自室の机でさっそく開封して台座に立たせました。まずはその圧倒的な存在感。ガチャガチャ・食玩と比べてその大きさもさることながら、それまで手の届く範囲にあったものとは圧倒的にクォリティが違いました。こんなすごいものがあるんだと、いろんな角度から夢中で眺めました。
そしてここからズブズブとフィギュア沼にはまっていきます。私はすっかりフィギュアの持つ魅力の虜でした。
この頃はメーカーによってフィギュアの出来に大きく差がついており、好きなキャラクターが出ても購入意欲がそそられないものもある時代でした。そのため私は自然と、知らない作品のキャラクターでもクォリティが高ければ買うという、造形買いをし始めます。
初めは大手メーカーのものから買い始め、原型師さんによっての造形の違いが分かるようになってくると、好きな原型師さんが作っていれば買うという原型師買いもし始めました。
社会人になると使えるお金も増え、より多くのフィギュアを手に入れられるようになりました。そうすると飾る場所も考えなければなりません。ガラスケースを購入し、大きな部屋に引っ越しするなど、更に管理のために室温なども考えるようになりました。
そうして現在、多くの素晴らしいフィギュアがリリースされる時代になりました。有名なキャラクターはほとんどがフィギュア化され、ハイクォリティで360度眺められます。その分値段が高くなりましたが、メーカーから比較的安価のものも出ており、可動やデフォルメ、プライズも素晴らしい出来で世に出ています。フィギュアの世界はこの十数年で大きく広がったなあと思っています。
そんな時、ふと自分の部屋を見回すと、未開封のフィギュアが積まれているのが目に入りました。いえ、今まで目を背けていただけで、本当は分かっていました。今の現状を、アル・アジフを買った当時の私が見たら罵倒されるでしょう。今の私は、惰性でフィギュアを買ってしまっています。
私の家にはガラスケースが3つあり、そこに100体ほどのフィギュアが飾られています。一年前くらいからそこに入りきらなくなってしまい、仕方なく積んである子達です。いつか飾るからね、と思いながらどんどん積んでいくフィギュア達。同時に作ってくれた原型師さんやメーカーさんにも申し訳ない気持ちが積み重なっていきます。
ケースを追加して飾ることも可能ですが、必ず限界が来ます。フィギュアの管理は箱から出して空気に触れさせた方が良いと言われていますが、あれだけ管理面にも気を付けていたのに今の私はそれすらできていません。さらに物を捨てられない・売ることができない物欲の塊の私は、どうしたらいいのかわからず悩み始めました。
こんな思いを引き摺って数か月、答えが見いだせないまま、近々引っ越しをすることになりました。今まで通りなら当然フィギュアも連れて行くのですが、悩んでいる自分が今まで通りでいいのかと言ってきます。今が引き際なんじゃないかと。
まず友人に譲ることを考えましたが、当時のフィギュア仲間はほとんどおらず、今の友人もだいたい同じものを持っていました。また、量が多いので個別に送るとなると手間もかかります。そうして私は、思い切ってネットでフィギュア買い取りを検索し始めました。そして見つけたのが「 」さんです。
決めてはこの「愛情買取」でした。先に買い取り依頼をした方の愛情紹介を読んだ時には、私と似た状況の方もおり、正直泣きそうになりました。
よしここで売ろう、と決めて買い取りオーダーをしましたが、やはりまだフィギュア達には未練があります。自分が惚れ込んで買った子達なのに、飾ることができなかった状況がとても悔しくて申し訳なくて悲しいです。でも私の手元にあったのではこの子達は輝けない、他の人の手に渡ることによって輝けるなら、それが一番いいんじゃないか。売ることに対して引っ掛かりを感じていましたが、こうして文章にして自分の想いをまとめると少し心が軽くなったような気がします。
「 」さんでは「娘を送り出すようなもの」と書かれていましたが、私の友人間では昔からフィギュア達のことを「養子」と呼んでいました。大げさかもしれませんが、まさに子を送り出す親の心境です。
私はダメな親だったけど、みんなに魅力がなかったわけじゃない。それぞれの造型美に惚れ込んで、迎え入れた時の気持ちは本当でした。これからは新しい家で存分にその魅力を振りまいて、きらきら輝いてほしい。みんな、幸せになってね。さようなら、ありがとう。