2024-10-24

高校生に戻れたら、気になるあの子デートに誘いたい

30代。女。既婚。

小学生の頃、中学受験を目指す塾に通っていた。そこには天使のように可愛い顔立ちをした男の子がいた。目がくりくりしていて、女子から「ほっぺがぷにぷにだ」と直接触られていた。塾の中でも愛されキャラで、男子からもいじられてはいたが、同じだけ相手をいじり返す強さのある子だった。

私は薄ぼんやり「好みの顔だ」という意識はあったものの、彼のことは塾の中で仲の良い男子のうちの一人、という認識だった。

中学になってから、彼は男子校に通い、私は女子校に通った。いわゆる中高一貫校で、六年間同性に囲まれるある種快適空間だ。

そんな生活なので「新しい異性との出会い」などなかったが、高校生くらいから状況が一変する。mixiの普及だ。これによって、かつて同じ塾に通い別の学校に進学した友達たちと男女問わず繋がった。

繋がった人同士で塾のプチ同窓会のようなものが開かれる。そこで、例の可愛い男子と再会した。彼の可愛らしさは成長しても変わらず、本当に好みの顔で胸がときめいた。たしかこの頃メアドを交換し、直接連絡を取り合うようになったと思う。

私は味をしめて、プチ同窓会を開いてくれた幹事友達に、「またみんなと会いたくない?」と提案した。友達も乗り気で、またプチ同窓会メンバーで遊ぶ機会を作ってくれた。私は、あの可愛い彼と会ってドキドキしていた。もし彼と恋愛関係になれたら、と妄想は止まらなかった。

私は懲りずに幹事友達に「またみんなと会う機会を!」と提案し、そして友達に嗜められた。

「会いたい人がいるんでしょ? 彼を直接誘えばいいじゃん」

おっしゃる通りです……。

と、図星を突かれてはいたが、私は彼を二人きりのデートに誘うことが出来なかった。

時々彼とメールのやりとりは出来ていたが、彼のことを誘えるほど「好き」に対して覚悟を持てなかったのだ。

やがて彼とのメールは疎遠になり、私は大学生になった。共学に通い、大学出会った人を好きになって、1年生の冬に付き合い始めた。私から告白した。

彼は初対面の時からすごくフィーリングが合い、趣味も合う・優しい・顔も好みと全く非の打ちどころのない彼氏だ。

私は浪人していたので、1年生の冬に成人式があった。彼氏から振袖姿が見たいと言われ、式が終わったら写真を送るねと、とにかく浮かれていた。

その時、あの可愛いからメールが来た。

成人式に、会わないかと。

彼氏と付き合う前であれば間違いなく会いに行った。

でも今の私は彼氏持ちだ。しかも付き合って1ヶ月ホヤホヤの。これでもし、一時は恋愛関係妄想した可愛い彼に会いに行ったら、あまりにも、その、……「ビッチ」すぎないか

彼氏いるから会えない」と返信した。

それ以降、可愛いから連絡が来たことは一度もない。

大学で付き合った初めての彼氏は、その後夫となった。

長い付き合いなので、順風満帆とは言えないタイミングもあった。関係不安定になるたび、可愛い彼のことが頭に浮かぶ

でも、私は可愛い彼のことを、「顔が好み」くらいしか分かっていない。

小学生の幼き頃は気が合ったような感覚はあるが、今の彼の内面を何も分かっちゃいない。

から可愛い彼」は私にとっては幻想に過ぎないのだ。

高校生の時にちゃんデートに誘うべきだった。「女は誘われ待ちが良い」なんて旧価値観になぜどっぷり染まっていたのか。ガンガンから行くべきだ。

そして玉砕するか、上手く付き合えたとしても恋愛を通した関係構築のゴタゴタを経験して、この人と人生パートナーになれるのかしっかり吟味たかった。

そうやって、幻想を打ち破るべきだった。

これからも夫とうまくいかなくなるたびに、「可愛い彼」の幻想に耽りつつも、「とはいえきっと彼とは上手くいかなかったよね」と心を慰めるだろう。

しろ私は、家事能力は壊滅的で、メンヘラで、他責思考で、と欠点を上げればキリがなく、そんな私でも見捨てずに支えてくれたのが夫である

夫は私の欠点に打ちのめされるたび、このまま私との関係を続けるか躊躇していたが、「それでも愛している」と覚悟を決めてくれた。その覚悟に報いたい。治せる欠点は治して、「この人と結婚して良かった」と思ってもらえるような妻になりたい。私は夫を愛している。

間違っても不倫をしたくないので、可愛い彼に連絡を送ることはない。

いや、本音では可愛い彼とまた話したい。私には男女の仲になりたいという欲求全然なくて、性別関係なく人間として彼がどういう人生を歩んだのか知りたいという思いはあるのだけど、そうはいっても男女だしな……対面で会ったら突然私の頭がバグり散らかして、不貞を働くかもしれない。警戒するにこしたことはないだろう。

70歳とか超えたら、さすがに性欲に振り回されない、大人の男女の友達になれるだろうか。

それまでお互い生きてたら声かけてみようかな。

みんな長生きしようぜ。

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