安野たかひろさんのポスター等、選挙活動で使うデザインを担当されたデザイナーのメイキングnoteを読んだ。
https://note.com/y_yukkie/n/nee5a7a5409fb
選挙期間中、安野たかひろさんのポスターを初めて見た時に、なんでこんなナード感を際立たせるような色使いや写真の使い方をしているだろうとか、視力と判断力が鈍った語彙の薄い高齢者がみたら「あのち◯◯みたいな頭の候補者か」とかいう風になっちゃうじゃん。って思ったので、これらがデザインされた過程や思考が見れて、デザインで食っているものとして勝手に学ぶものがあった。
まず、このポスターをはじめとした背景色/テーマカラーに暖色系のパステルグラデーション(インスタっぽい色)が選ばれていた理由が
>過去10年分ほどを振り返って、キーカラーにほとんどグラデーションが使われていないことは意外だった。
>他ポスターと差別化するためにパステルカラーのグラデーションを採用するという仮説
という、割とよく使われがちな原色系のカウンターからのチャレンジで、安野さんの顔、形や色相の相性、ブーストしたい雰囲気とかを主眼にしているようではない印象を受けた。
顔写真についても、日本のポスターのダサさに不満を抱きつつ、過去事例を研究して顔(写真)の印象の重要性の理解や顔写真の比率の話をされているが顔写真、被写体自体をどう演出して見せていくかという重要な部分にはそこまで触れられていない。
推測だが、近い人(候補を応援するボランティア)が手掛けたがゆえに被写体を客観視しきれない部分があったんじゃないかと思う。何度も人の顔を見ていると、色んな表情が連結されて自分の受け入れやすいように慣れてしまう。初対面の時に抱いた印象や違和感を忘れてしまいがちで、しかも応援している候補者であればなおのこと補正がかかりやすいだろう。
つまりデザイナーにとって安野さんの笑顔の写真は爽やかな笑顔に映るわけであるが、その印象は安野さんを知らない人が写真を見た時と比べると相当脳内補正が掛かってしまってるか、許容値がバグる状態に陥っている。自分も同じ状況に置かれたら、多分不可避だと思う。許容値がバグって客観視することが難しい前提で、この辺りの役割を割り切って決めておくのが重要だと学んだ。
ちなみにポスターを初めて見たときに、もし安野さんをほぼ知らない自分がデザインワーク担当するなら…を妄想してた。(安野さんに限らず、クセで他の候補者でも同様にイメトレしてる。)
(一般的な現場では写真素材を撮る前にレイアウトや色方向性のラフが決まっていることは多いが)写真素材が先行してある状況で、撮った素材の中から選んでデザインよろしくみたいなことになったら、まず、あの角度の写真を積極的には使わないだろうし、あの角度しかない or 使わなきゃいけない理由があるのであれば、ポスターでは頭を全て出さないようにトリムするレイアウトにする、もしくは頭の色に馴染むような背景色にして、極力ナード感を消すところから入る。その上で彼の清潔感や知性を際立たせるようなキーカラーを印刷の出やすさから考慮に入れて選ぶ。という妄想をしてたのだけど、ポスターをよく観察していく内に、いやいや、そもそも衣装を含めて限りなくシンメトリーっぽい雰囲気の被写体をあえてアシンメトリーっぽく絶妙にズラして使って不気味さを際立たせているとか、背景カラーからあえて頭をはみ出させて、立体的にアレに見えやすいようにしている?す、すべて計算してやってる…のか?という勘ぐりまで至ったが、単純に自分の感受性が下品なだけな気がしてきた。
ポスター見た後に生安野さんの演説をチラ見する機会があったのだが、長髪の珍しさはあれど、普通に好青年でポスターとのギャップがかなり強かったので、損しているなぁ…と思ったがもちろんこのポスターデザインが良いね!という人もいるので、好き嫌いの範疇をでない話だし、いかに目立つかを詰められていたので、意図してないかもしれないがある意味で目を惹くポスターでした。
13,000箇所の一等地に掲示する老若男女全方位向けのポスターを手掛けられるのってデザイナーとしては得難い貴重な経験値だなとnoteを読んで改めて感じました。おつかれさまでした。