自分の専門はストレートな政治学ではなかったけど、周辺領域をやっているという理由で、一般教養レベルの政治学の講義を持たされたことがある大学教員です。
ぼくは「政治」に関する知識が全く無い。どうやって勉強すればいいんだろうか。
上記のエントリが示すのは、いまの日本的な政治をめぐって、若い人が感じてもおかしくない自然で興味深い疑問だと思うし、私がかつて担当してた講義の問題意識と重複するので、少しまとめてみたい。
当該エントリに対する多くのレスが知識について言及し、またエントリ主(元増田)のあるべき問題意識が、知識的な側面に集約されている事が、一つの根本的な問題を象徴していると感じた。それは、「政治とは難しい存在で、その背景や構造を知っているものこそが言及すべき」という、いさささか排除的な認識の影響ではないかと私は疑っている。
本来の広義の政治とは、権力をめぐる闘争にすぎない。たとえば、夕食の準備が家族の必須のタスクとして認識されている複数人の家族間で、誰がその面倒な作業を担うべきか?という問題に答えを出すのが「政治」が本来持つ大きな役割のはずである。仮に「自分は(夕食の準備を)やりたくない」「私もやりたくない」という意見が対立する環境で、「後片付けは自分がやるから、準備はお願い」とかそういう様々な取引によって、集団が円満に運営されるようであれば、その問題は、何らかの政治的な取引によって解決されたことになると考えて良い。政治的技術というと拒否する人もいるかもしれないけど、言いなりにせずちゃんと交渉したり妥協するための話し合いをすることが大事だと思ってもらいたい。
本来、家族ばかりでなく様々な職場や学校あるいはPTAといった様々な組織や環境で、複数人が顔を合わせれば必ず発生する方針の違いや負担の押し付け合いは、みな本来政治の領域の問題である。もちろん、ある程度本気で、負担を押し付け合い、権利を獲得するためには、司直の手に委ねるとか、いわゆる政治的運動を通じた公的政策形成として行われる必要があるが、そこまでする程でもない権力配分をめぐる闘争は、日常的な少しの配慮と知識でかなり得することもおおい。ぜひそういう意味での政治に関心を持って学んでおいてもらえると嬉しい。
つまり、本来政治というのは実に身近で現実的で実用性のある概念である。しかし、輸入された民主主義という歴史のこの国で、政治の成熟は遠く、永田町で行われている汚らしいものという認識をもたれている。その政治に言及するには、知識が重要である、あるいは「事情通」でなければいけない、といった排除的な雰囲気はまったく受け入れられない。
繰り返すが、政治というのは実に身近な概念であって、仮に元増田が、組織をリードするポジションにあるようであれば、分断統治とかすぐ日常的に使える便利な概念になるはずだ。また、政治的なリーダーとなるべき人の条件を学び、それっぽい素質を普段から発揮することによって、自分に有利な組織的決定を得ることなども比較的簡単である。(もちろん属人的な特質は否定できないが。)
ここまでは、少しスレ違いな気もするが、そういうレスが出てくる背景について、あえて指摘させてもらった。せっかくなので、元増田の発言の趣旨にそって、政治をなるべく単純な現象として理解してみる。
まず、「人々の能力は様々である」という前提には同意してもらえるはずだ。次に、その個人的な能力に応じて、物質的に豊かで文化的な生活をおくれる人と、そうでない人がいる。そして、どっちかといえば、(というより現実的には圧倒的に)、豊かな人が少なく、貧乏な人が多い。そういう貧富の差こそが社会の最も基本的な分かれ目である。そして、豊かな人はその豊かさに基づいて貧しい人を抑圧してきてきたというのが大雑把な人類の歴史だ。
その後、農業革命や産業革命などに代表される幾つかのイノベーションによって、人類の生産性が飛躍的に向上してから、一部の相対的に豊かな国や地域では、貧富の差が問題となり、それを解消するための基本的人権やら所得の再分配やらの様々な社会的制度を構築してきたのが近代の歴史である。
しかし、貧富の差を解消する制度や政策は、しばしば豊かな人にとって増税/負担増となり、つまり相対的に自分が幾分貧しくなることを示していたので、必ずしも皆が賛成したわけではなかった。一方、貧しい人は依然として貧しい人も多く、もっと社会的制度を充実させるべきだという主張を持って公的な政治(いわゆる永田町的な)に参加するようになる。
それが今の社会を取り巻く分断のもっとも簡単な理解だと思う。つまり、世の中は金持ちと貧乏人の対立であり、金持ちに有利な主張=右派、貧乏人に有利な主張=左派、程度に理解しておけば良い。金持ちは豊かで優秀な人こそが社会を豊かにする源泉だから、優秀な人のやる気を出させるために、平等より自由(規制の少なさ)を主張するし、貧乏人は自己の生存のためにその逆を主張する(平等を実現しようとすれば規制が増える(自由が減る)のが世の常なので。)
ただ、上記の話の説得力が残念ながら乏しいのは、日本の永田町政治が、必ずしもその構図で理解できないからだ(まあ先進国はどこも似たようなものだが)。ここでその詳細は書ききれないが、それでも、この世の政治的な争いの大半は、金持ちと貧乏人の主張の違いに基づく、自由と平等をめぐるたたかいに落ち付くという理解でだいたい間違ってないと思う。
最後に少しまとめよう。自分がある政治的価値観の判断に困ったときは、その判断によって誰が助かり、誰が損するのか?ということをよく考え、自分が支持できそうな人が助かる政策だったら支持すればいい。そんな簡単な原理で判断してもらって良いと思う。大事なことは、自分の知識が乏しいからと言って政治から距離を取らないこと。よくわからないことは自覚しつつ、その上で自分はこうだとおもう。と何かしら一言述べて、政治に参加して欲しい。
その後の現実的政治に対しても、なるべくなら穏健的な立場の政治的関心を持って、この国の大切な思想的なインフラである民主主義を一緒に守ろう。急進的だったり、自分の職業的な利益ばかりを重視した、バランスの悪い政治というものは、高い確率で我々の社会に不幸な結果をもたらす気がするから。もっともそう考えるかどうかも含めて、君には考える自由と権利があるし、それこそが民主主義のありがたみなのだから。
雑文失礼。
ぼくは「政治」に関する知識が全くない。 どの国とどの国の関係がどーだ、とか、右翼と左翼がこーだ、とか、そんな話をされても政治的な素養が無いので自分の意見を言えない。 も...
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大学教員ってなんでこう冗長なんだろ。 もしくは民間の会社員のプレゼンと比べたら落第レベルの人間ばっかりじゃねえか 普通の会社入ってホウレンソウもまともにできねえんじゃねえ...
この基本から逸脱して、形骸化した党派の争いに終始している人が一部にいて、本当に邪魔で不毛なんだよなあ。
ネトウヨみたいな党派の分け方してる人が教員とかウケる
自分は両親高卒。 家での話題特に無し、たまにだれだれがどうだとかの話題が出る程度。 勉強の仕方はまずは歴史の本を読む。現在の政治も歴史の一部だから 繰り返されてる事は基本...
僕は大帝国で勉強しました グレシア・ゲッベルスが大好きです
今なら池上彰の本がいいんじゃない? 何も知らなくても一番新しい本から順番に読んでいけば、政治も経済も宗教もわかるようになるよ んで一定の水準を超えたら新聞が読めるように...
新聞もネットも同じと言うのには同意だが あれを正しく読むと言うのは本当に難しい。 あれが正しく読める奴は百人に一人は居ないと思う。 正しく読めたら読んで暮らしていけば いい...
共産党へ入党がお勧め。
とりあえず安倍を倒すべき悪、これだけは間違いないと覚えておくと良いよ。逆のことを言うのは全部キチガイ。 自民党は、と主語を大きくすると難しくなる。色んな奴がいるからな。
家族の学歴は関係ないと思う。周りの政治思想をはっきり持つ人は身内に市議会議員がいたり、地元の名士?の家の人が多い気がする。 駅前で候補者演説やってるの聞いて同意できる人...
左右を軸に、いろんな要素が絡み合う。それだけ。
大抵のモノゴトは学問になってて、体系立てて土台を作る簡単な入門がある程度決まってる。 ただ「政治」って言う言い方をすると、トタンに曖昧になって、実は体系的な入門書って、...
自然科学の好きな人はこの正則性のなさ明白な法則のなさや解決のなさを 学問と思いたくないんだろうなあ、と思う。
人文系の学問って基本的に成果が曖昧だから 教授になれるかどうかって運と学内の政治力で決まるからな
政治学っていうほど学問に長けてる人が書いてるようには思えないけど…単なる教養や歴史的知識じゃん。まぁ知らんけどやるとしても選挙時の投票行動における統計の算出やゲーム理...
放送大学で政治学入門とか受講してみたら?その中で紹介されてた文献を読んでいって わからないことがあれば調べて、という風に。