2021-11-15

進撃の巨人商品マーレの腕章」の炎上販売中止について思うこと

販売中止に至った理由関係者以外にはわからないことも含め多々あるとは思うけど、今回の件で個人的に思ったのは以下三点。

1、「作中で描かれること」と「グッズ化すること」との違いを十分理解しないまま商品化企画された。

2、グッズ化する商品が作中で差別象徴するものであると同時に現実差別象徴するモチーフ類似していた。

3、発表されたグッズが主にコスプレ向けのものであった。

 まず1、「作中で描かれること」と「グッズ化すること」との違いについて。

漫画の作中で悲惨さ・凄惨さ等のいわゆる「負の部分」を描くことは、全く非難を受けない訳ではないけど、

現実のできごとを馬鹿にしたり面白おかしく伝えるような描き方でなければ、

販売停止とか発禁処分みたいな厳しい対応にはならないのが普通だと思う。(グロテスクさや露骨さの度合いにも寄ったりするけど)

でも、今回はその「負の部分」を商品化した。

悲惨さや凄惨さを伝えるみたいな文脈を持たない、一部分を切り取って、商品化した。

するとどうなるか。

現実世界にそれを売っている光景と持っている人が現れる。(今回の件では受注生産だけど、転売等の可能性もあった)

欲しがって買う人の笑顔や、買って着けたり飾ったりして嬉しそうにツイートしたりすることが現実世界で現れる。

作品の中で描かれれば、それを直接知るのはその作品に触れた人だけだけど、

現実ではそんな作品なんて知らねーって人もたくさんいて、

いろんな人が現実に現れたその作品の一部を見たり聞いたりすることになる。

作品を知らない人からすれば、「あれは何だ?」「〇〇に似てるな」「馬鹿にしてるのか?」

とどんどん悪い方向に話が飛躍していってしまうことも十分ありえる。(意図してそういう方向に持っていこうとする人もいるだろう)

もしそうなったら、ビジネスとしての商品化は明らかに失敗だし、原作の評判にもキズをつけてしまうことになる。

作品の中で描かれることと、作品の一部を切り取って現実世界でグッズ化することにはこういう違いが存在すると思う。

 次に、グッズ化されたのもの差別象徴であったことについて。

いくら作品の中での差別から現実差別ではない」といっても、

それは作品の中でならの話。

1で書いた通り、グッズとして現実のものにするとなると、話が変わる。

フィクション現実区別ていう言い方をしてもいいんだけど、

とにかく、作中で「架空キャラクター」が「架空差別象徴を身に着けること」と、

現実人間」が「実際の差別象徴と誤解されかねないものを身に着けること」とは大きな違いがあるはず。

今回の件では特にグッズ化のマズさに拍車をかけた点が2点あって、

1つは上記の通り、作中で描いた差別象徴が、現実での差別象徴類似あるいはそれを想起させるようなものだったこと、

もう1つは、世界的な情勢としてBLMやらanti-Asian violenceやらチベットウイグルのあれやこれや等で差別にとても敏感だったこと。

歴史事件についての解釈は本題とズレるから丸投げするけど、

ただでさえ燃える危険があるグッズ化っていう行為に、

現実での差別との類似あるいは想起っていう燃えやすい材質を使って、

差別に非常に敏感っていう燃えやす環境が加わった。

そりゃ燃えるよね、って話。

 3つめは、グッズが主にコスプレ向けのものだったことについて。

エログロでも、世間から芸術」とみなされれば批判は受けてもそこまで燃えない。

裸婦画とかゲルニカ官能小説ビルマの竪琴とか。(エログロ音楽ってあるのか?あるんだろうなぁ……)

たぶん、良から意図があると疑われにくいいジャンルほど燃えにくいんだろうっていう感じ。

から絵画より文学のほうがやや燃えやすいし、そもそも芸術として認めない人も多いようなジャンルではもっと燃える

コスプレはどうだろう。

もう十分文化ではあると思うし、「作品」として十分成立する芸術的なクオリティのものもたくさんあるんだとは思う。

でも、ただの「作品」じゃだめなんだ。

高尚な、絵画純文学クラシック音楽匹敵するような、

悪くいえば「お高くとまったような芸術」みたいな地位じゃないと、

芸術」としてはまだまだ批判を受けるジャンルなんだと思う。(映画漫画ポップスロック音楽等もそうだとおもう)

オタク文化特に批判の的にされやすジャンルで、

その中でもコスプレ好き嫌いがはっきり分かれるものだと思うし、

作中での文脈なんて知らねーって人がいる以上、

現実での差別を利用して金儲けをする原作側も、差別象徴を身に着けて喜ぶオタク共もけしからん!」、

ってなる人が少なくないのも無理はない話、というかそれが現実だってことは受け止めないといけないと思う。

賛成派と反対派、相互理解しあえるのが理想とはいえ

フィクション現実区別するのと同様に、

理想現実も当然区別しないとそもそもお互いに議論にすらならないから。

 個人的感想のまとめとしては、

大切な人が怪我しそうなら止めるのと一緒で、

好きな作品燃えそうなら止めたほうがいいケースが多いんだろうな、ってところです。

(下手に応援して、怪我させる責任をとれる立場ではないので……)

  • 反差別の意思表示として、差別される側に寄り添う意思表示として、エルディア人の腕章を付けちゃダメなんか

    • 差別してるほうをグッズ化する→差別への荷担そのものでありアウト 差別されてるほうをグッズ化する→被差別者を商品化するという矮小化行為でありアウト

      • えー…腫物扱いするしかなくなるじゃねーか…

        • 嘲るような創作をして、被害者がキレて抗議したら「腫物扱いするしかないじゃないかwwwww」だろ 歴史の中で何度も何度も繰り返されてるんだろうなあ 原爆Tシャツ騒動を思い出...

          • 嘲るような創作をして、 この謎の前提どこから出現したの

          • 本編見れば分かるけど嘲るような内容じゃ全くないのだが…

            • じゃあ撤回する必要ないじゃん 国内法規に接触しないんだから堂々とマーレの腕章を売ればよろしい

  • 自由の翼の入ったマントを作るのとは訳が違うよな。

  • anond:20211115214324 日本を舞台にするとまずいことがあると思うから避けているのでしょ どして人種差別は避けないのか 不思議

    • 別に日本語はしゃべってないと思う 演出上だろ 言語問題はストーリーに関係ないから省いてるだけや

  • 放置して誤魔化しているとアウシュビッツみたいなことになりかねないからね ユダヤ人への揶揄や差別などは最初は冗談じみたものだった

記事への反応(ブックマークコメント)

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