2021-08-10

バッハ会長に対する政府コメント前例踏襲しただけ

 まあそれが酷いって話をするんだけど。

 丸川珠代五輪担当相は10日の閣議後の記者会見で、国際オリンピック委員会IOC)のトーマス・バッハ会長が9日に東京銀座を訪れたことについて、「不要不急かどうかは本人が判断すべきだ」と述べた。

バッハ氏の銀座散策 丸川五輪相「不要不急かは本人が判断すべきだ」 | 毎日新聞

 加藤氏は、新型コロナウイルス対策について「大会関係者入国後14日間は行動範囲限定され、公共交通機関の不使用などがプレーブック(規則集)で定められている。一方、入国後15日を経過した者は適用を受けない」と説明7月8日入国したバッハ氏は行動制限対象に該当しないとした。「不要不急の外出に当たらないのか」との質問に対しては「各人に、状況に応じて適切に判断していただく」と述べ、当事者に任せているとした。

バッハ氏の銀座散策 政府は問題視せず「入国後15日経過」 | 毎日新聞

 ブコメでも指摘のある通りこれは既に同趣旨の答弁がある。田島麻衣子議員緊急事態宣言中に「単身赴任をされている国民家族に会うため、県をまたいで移動」、「ゴールデンウィークお盆年始年末などに国民帰省」することなどを上げ「不要不急の外出・移動」に当たるのかと聞いた質問主意書に対する答えである

 お尋ねの「不要不急の外出・移動」については、「新型コロナウイルス感染症対策基本的対処方針」(令和二年三月二十八日新コロナウイルス感染症対策本部決定、令和三年二月二日変更。以下「基本的対処方針」という。)において、「医療機関への通院、食料・医薬品生活必需品の買い出し、必要職場への出勤、屋外での運動散歩など、生活健康の維持のために必要ものについては外出の自粛要請対象外とする。」との考え方を示しているところであるが、お尋ねの行為が「不要不急の外出・移動」に該当するか否かについては、国民の皆様において、それぞれの生活状況等に応じて適切に判断いただくものと考えており、一概にお答えすることは困難である

「不要不急の外出・移動」の定義と解釈に関する質問主意書

 今回の発言はこの考えをそのまま踏襲したものだと考えられる。しかし、問題もある。

 この質問主意書に対する答弁は一般論としての答えなのである。「それぞれの生活状況等に応じて」と答えているように具体的な状況によって何が不要不急に当たるか変わるのは当然だろう。ところが、政府にその細かい事情まで把握することは不可能である単身赴任家族に会うための県をまたいだ移動という条件を付けてもどういった事情で会おうとしたのかは分からず「一概にお答えすることは困難」だ。

 もちろん現体制では「お願い」レベルに過ぎずこう答えざるをえないという解釈もできる。結局最終判断は個々人に権限があるのだというわけだ。しかしそれはどういった行為が適切か否かを例示することを妨げるものではない。実際「医療機関の通院…生活健康の維持のために必要もの」は自粛要請対象外だと示している通りだ。

 ところで、バッハ会長銀座散策については政府事情状況様態全て把握できる立場にある。何なら国民の多くはバッハ会長散策不要不急の事情があったとは思っていないだろう。

 政府事情を把握しきれない出来事当事者が適切な判断をしてくれと言うのと、政府事情を把握している実際の個別案件について当事者が適切に判断することだと言うのではニュアンスの違いを生じることに留意しなければならない。つまるところ後者は具体的行為を追認しフリーハンドを与えたも同然である。それなら「個別事案にはお答えできない」とか言ってくれた方がマシだ。

 どんな事情があっても不適切であると言えるような事象、例えば路上飲みに対して本人が判断することだと言った時の悪影響を考えてみてほしい。今回はそれと同様なのである

 ここからが一番書きたいことなのだが、政府は場当たり的でその場逃れなメッセージを発することをやめるべきだ。恐らくメディアにこういった質問をすると事前通告された時、官僚過去の答弁をサルベージしてそのまま引用できそうなものを見つけてきたのだろう。だが文脈によって言葉の与える印象が変わることを等閑視している。確かに過去発言踏襲に過ぎないと言えば簡単にその場は逃れられる。しかしながら、今の状況ではリスクコミュニケーションとして国民にどういったメッセージを与えるかというのを第一に考えてもらわなければ困る。そうでなければ統一的なメッセージが発せられず政府見解の信用性は地に落ちる。まあ既に落ちてるとは思うが…、いずれにせよ負の「レガシー」ができてしまたことは事実だ。

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